パペット悪魔タイム!
「ちなみに実はもうあと一体怪魔を無料で送ったんですけど。」
「何?」
そう、ふいに声をかけたのはコーン・ヤーントだった。
「貴様、何勝手なことを」
「いえいえ。どうせ悩むんだろうなーと思いそらならついでにこっちが勝手に送った方がいいかなーと思ったまでです。」
「いや、だからなぜ勝手に怪魔を送るのだ!?」
「大丈夫です。上からなんか言われたらもうこっちの給料から送った分引いてもらうんで」
「そういう問題じゃなぁい!!」
とレディ・サタンは周りに響き渡る声で怒鳴った。
「何故、こう、もう、私が決める前に送るんだと聞いてあるのだ!!」
「いやまぁそれは…こう、悩む時間が増える間にその…そいつら倒せたらまぁ仕事しなっ…そちらの手を煩わせなくてすみますし」
「お前いまなんか言いかけたか?なんか言いかけたな今!!」
そう魔王と担当係が話し合っているとそこに執事であるクモジィが割り込んできた。
「魔王さま。確かにこの者の言うことにも一理あります。魔王さまが支持を下すことなく事が終えたらそれでいいではございませんか。」
「そうそうそういうことです。」
「なんだ貴様ら。私が悪いのか?」
魔王が手を頭に抱えると諦めたように担当係にこう尋ねた。
「それで…お前が送ったのはどんなやつだ?」
「まあ…多分大丈夫かと思われます。こちらもてきとうに決めましたので。」
「おい今、てきとうって言わなかったか?てきとうって!!」
「いえいえ。てきとうは適当の方ですよ。はい」
魔王はそれを聞くと不安そうに再び水晶玉で異世界転生者2人を覗き始めた。
「にしても怪魔ってなんだろう怪魔って。」
道中の岩山を歩くうちにそう話を始めたのはアカルである。先程の怪魔たちとの戦闘で怪魔という存在に疑問が生じ始めた。
「あいつらが言うには俺たちを始末しにきた刺客…と言っていたな。」
「その割にはサインとか求めてたけどね〜」
「ただあいつらは何やら戦闘慣れしていたな。道中の魔物たちとは大違いた。」
「今からああ言う奴らが今後も襲ってくるとなるとちょっと不安だなぁ…」
「まぁ神さまからもらった力を過信せず、油断なく冒険しろ。と言うことなのだろう。」
アカルがため息をつきながら2人で歩いているとふとどこからが人の裏声のような声が聞こえてきた。
「ハーッハッハ!!今日送られてきたのはあの2人だけじゃないよ!!」
「うわっ!何この声!?」
「あいつらの仲間か」
「その通り!だけど僕はさっきの2人よりもはるか〜に強い!さっきのようにはいかないよ〜ん」
そう小馬鹿にしながらその怪魔は2人の目の前に現れた。
「僕の名前はパペッツラ!!怪魔に属する悪魔族だよ〜ん」
そこに現れたのは
顔に「背景」と書かれた紙が貼られ、左手に悪魔のパペットをつけた黒子
がパペットを着けた左手を左右に振りながら2人を待ち受けていた。
「「………」」
「どぉ〜した?僕が恐ろしくて言葉もでないのか〜?」
アズマはアカルの頭を寄せてヒソヒソと話した。
「おいどうするあれ?」
「どうするって言われてもぉ…」
2人はその変人に振り向いて見つめるも
「どうしたどうしたぁ〜?2人で逃げ出すための話し合いかぁ〜?」
すぐに顔を戻した。
「そもそも話が通じるのかも怪しいぞ。アレ」
「あ〜…でも…さぁ!?」
アカルは頭をかきながら話を聞いていると突然後ろからその変人は叫んだ
「ちょっと!!何話してんだ!?敵が目の前にいるんだぞ!?」
「なんだ?こっちは今忙しいんだが?」
「ムキー!!僕を無視してくれちゃって!こうなったらこっちも攻撃を仕掛けてやる!!いくぞ!」
そしてその黒子はいきなりアズマたちに向かって走りだし
「くらえ!!デビルパ〜ンチ!!」
悪魔のパペットの右手でアズマの腕にパンチを繰り出した。
「「………」」
「デビル百裂拳!!」
そして悪魔のパペットでアズマの腕をポカポカ叩き始めた。
「えい!えい!えいえい!!」
「…あのなぁいい加減に」
そうアズマは言いかけた時、黒子は腕を振りかぶり、
「デビル頭突きアタック!!」
アズマの顔を思いっきりぶん殴った。
「ぐえ!?」
「アズマ!?」
「フッフッフ〜僕にこの必殺技を出すことになろうとは流石は転生しただけのことはあるね。」
そう自慢げに言うとアズマはスッと起き上がり
「…やっぱり、お前は敵って事で間違い無いんだな?」
「だ・か・ら!!そう言ってるじゃん!僕はお前らを倒しにきた怪魔族の悪魔!手加減してたら一気にお前ら殺しちゃうよ?」
「…そうか。そっちが殺る気なら」
「アズマ!落ち着いて!」
「おっとうとうやる気を出したなー」
その黒子がセリフを言い終わる前に
「え!?」
アズマは剣を引き抜いて黒子の後ろにいた。
そして黒子はそのまま前に倒れ込んだ
「うわぁ!!ついに」
「安心しろ。ただの峰打ちだ。」
たしかに黒子の体には切り傷一つなかった。
「ハァ〜〜〜良かった。いよいよアズマが人殺しを」
「流石にするわけないだろ。売ってる喧嘩は買う主義だが命を奪うまではしないっての。まぁこいつは気絶してるうちに縄で縛っといて…」
「そんなとこ斬っても意味ないよ!!めっちゃびっくりしたけど」
突然の後ろの声に反応するとやはり何事もなく黒子が立っていた。
「あれっ?普通に立ってる?」
「おかしいな…確かに峰打ちはしたはずなんだが」
「峰打ちも何も僕の横斬ったって何もないんだってば!?バカにしてる!?」
そう怒っていると黒子は右手をあげそしてパペットの方も右手を上げた
「こうなったら僕の全力を出してやる!!」
「…!アズマ!気をつけて!!」
「こいつは!」
そして右手には巨大な岩ができ、それをアズマたちに投げた。
「ギガ・ストーン!!」
アズマとアカルは向かってくる巨大な岩を素早く二手に分かれて避けた。
「ふぅ〜危なかった…」
「こいつが例の怪魔かどうかは知らんがとりあえず危険な敵だというのは分かったな。」
「フッフッフ〜さぁ次の攻撃は避けられるかな?」
そういうと黒子は人形を突き出すと人形の口から猛烈な吹雪を吐き出してきた。
「僕の後ろに隠れて!」
そういうとアズマはアカルの後ろに行き、アカルは盾を突き出し
「ブレス・ザ・シールド!」
盾から巨大な魔法のシールドを展開した。
そしてシールドは口から放たれる吹雪をすべて受け流した。
「ハァッハァッ…もっもうちょっと疲れた」
そして吹雪が続かなくなるとアズマはアカルの後ろを飛び出し黒子の上まで飛んで行った。
「ってな〜んちゃって!ギガ・ストーン!」
しかしその疲れは演技であり、飛び出したアズマに向かって大きな岩石を繰り出した。が、岩石はアズマの体をすり抜けていった。
「えっ!?」
「ここだ。」
パペッツラは下を向くとそこにはアズマが目の先まで来ておりそのまま黒子の体を2つに斬り裂いた。
「うひゃあ!!」
そしてその黒子は前に倒れた。
「ふぅ…終わったか」
「はぁ〜良かった…」
アカルは一息つくとアズマの元へ向かった。
「パペット人形から吹雪が出るなんてな。」
「まぁ、そこは僕のおかげだね!」
アカルはアズマに向かって自慢げに胸を張っていたー
「ギガ・ストーン!」
すると突然後ろから例の岩石が飛んできた。
「危ねぇ!!」
「うわぁ!?」
アズマはアカルを押し倒し、なんとか寸前のところでかわした。
「フッフッフッ…どうやら君たちの力だけはすごいねぇ…やっぱりそこは転生者だ。」
そこには先程斬り裂いたはずの
「だけども!当たらなければ意味がないぞ!」
黒子が何事もなく復活していた。
「嘘ぉ!?」
「確かにあの時斬ったはずだが…」
確かにあの時は黒子をはっきりと斬っていた。それは事実である。だが目の前で切り傷すらなくその黒子がいたのも事実だった。
「な〜に寝ぼけたこと言ってんの?まったく見当違いのところを斬ってるじゃないか。…まぁいいや。」
そういうと黒子はアズマに向けて走り出し
「必殺!!ザ・デビル頭突き!!」
そのまま腕を振りかぶってアズマに向けてぶん殴った。
しかしアズマはそれを避け、再び黒子の体を横に斬った。
「はっずれ〜」
それでも黒子はピンピンしており、
「デビル・ボディチョップ!」
黒子はアズマに向かいチョップを繰り出しそのままアズマの頭に当たった。
「…!!?」
「僕は力は弱いけどこれならちょっときいたでしょ?」
この黒子自体の力は見た目によらず高く、最初に受けたパンチも含めてそこそこの衝撃をくらっており思わず蹲った。
そして切り裂いたはずの場所はいつのまにか元どおりになっていた。
「オリャァア!」
黒子がアズマの無様な姿に笑っていると後ろからアカルの剣が黒子の体を斬り裂いた
「おっと!君も忘れてないよっと!」
しかし切り傷が出ているのにもかかわらず出血せず平然とそのまま後ろに向かって横チョップを繰り出した。
「おっと!」
そのチョップを盾で受けると
「いって!?」
と本当に痛そうな声を上げて黒子の体が少し震え、パペットは左側を痛みを抑えるかのような動きをした。
「ん?」
そのことに何か疑問を持つと
「こんの…バァ!!」
そしてアカルに先ほどの吹雪を巻き起こした。
アカルは呪文を唱えるのを間に合わず一度素の盾で受けることになってしまった。
「うひゃあ!体が凍ってきた。」
どうやら吹雪を呪文なしに受けると体が凍っていくらしい。すぐに呪文を唱えようとするも
「ガチガチ…だっダメだ…口が…震えて」
「フッフッフー!そのまま凍っちゃえ!!」
目を閉じたアカルはこのまま凍死してしまうと思った時、吹雪は急に止んだ。
目を開けるとそこにはアズマが悪魔の方を斬っていた。
「ぐえぇっ!?」
「アッアズマ!!」
そして斬られた悪魔はそのまま消滅し、それと同時に黒子も消えていった。
「よかった!蹲っていたからそのまま気絶したのかと」
「…いくら威力が高くても流石にあれでは気絶しないさ。」
「ねぇねぇねぇ!!あいつってやっぱり….」
「まぁあのパペットが本体だったんだろうな。」
そう。あの怪悪魔はパペットの方が本体であり、黒子の方は悪魔が生み出した幻影である。この悪魔の声も幻影に自分の声を代理で喋らせていただけであった。
「正直俺もバカバカしいことだとは思ったがお前があいつのチョップを受けたときの反応から一応と思ってな。」
「おおぅ僕のおかげかい?それは良かった…ねぇ、この戦いのMVPとしてわがままいっていいかい?ちょっと休もう!?もう何か疲れた………」
「もうそろそろ村は近いが…まっそうだな。」
そう言って2人は野宿の準備を始めた。
「やられたはやられたが…まぁ多少の足止めには成功したな。」
「あの怪魔がごまかしていたおかげでもありますね。」
「まぁあいつ本人はそういうつもりは…ちょっとあったっけ?」
そして様子を見終えた魔王城の魔王は多少の足止めが出来たことに満足している自分に腹が立ったものの、この実力なら倒せるかもしれない…という若干の希望を抱いた。
「フム…ならば、こいつを派遣するとしよう。」
「おや?パペッツラとの戦いの間にも見てたんですか?寝てたんで気づかなかったのですが、まぁいちいち注文が来るたんびに呼び出されるよりかはまだましですが…」
「おい貴様、気になることを2つもいったな?」
「まぁ〜空耳ですよ空耳。
そうして魔王レディ・サタンは怪魔たちによる勇者討伐を本格的にし始めた。
次回、噛みつき