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異世界転生者と怪魔たち  作者: 魔絵腹
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蟲怪魔覇者イノセクト

第6の宝玉を手に入れいよいよ最後の宝玉がある街へ向かっている途中、大きな森に差し掛かった。 


「地図を見てみるとこの森を抜けることができれば本来の道よりもずっと早く抜けることができるっぽいんだけど。」

「ぽいってなんだぽいって…あっいやこれ確かに実際見てみるとぽいな…」


アズマとアカルの2人的には特に時間制限はないものの先日までのラボールの街でだいぶかかってしまったせいか早く辿り着きたいと考えていた。


「今思えば奴らと出会った時に問答無用で倒してしまえばよかったかもしれないなぁ…」

「まぁいいんじゃない?いや、ものすごく時間かかってしまったから良くないと思うけどまぁアマネさんが不幸にならなかったんだし。」

「まぁそうだけどよぉ…いや考えても仕方ないか。とりあえずこの森を抜けるぞ。」


こうして2人は大きな森へ入って行った。


入っていった森の中はまだ昼ということもあってか木々が生い茂っている割には意外と明るく、また不気味なほどに静かであった。

途中、魔王に操られた熊などの動物や木の怪物のトレントにも遭遇したものの、元々神様に与えられた力に加え、怪魔という一風変わって強い魔物と長く戦っていたせいか戦っている時にどんな風に動けばいいのかが分かるようになっており、大量の魔物にも襲われることもあったが冷静に対処し、難なく倒していった。


「なんというか…俺達強くなってるな。能力的な話じゃなくて、実際の戦闘での動きとか…」

「まぁ怪魔と結構戦って実践経験を積んできたからねぇ。これが本当の意味での経験値ってやつなのかな?」

「とはいえ流石に連戦はきついな…少しだけ休むか。」


そうアズマが言ったその時、背後から

大きな目がついた花の頭をして両手が大きな鎌がついた蜂のような巨大な虫

が一気に迫り、アズマに向かって鎌を振り落とした。

しかしアズマは一瞬でその虫の背後をとりそのままいつの間にか抜いていた刀で斬り落とした。


「まぁそろそろ来る頃合いだとは思ってたけどな。」

「あ〜結局かぁ。」

「これで終わりじゃないだろ。とっとと姿を表したらどうだ?」


そう言った瞬間今度はアカルの背後から

目はトンボの複眼で蟻の顎のような歯を持ち、全身に虫が描かれた服を着た妙な怪人

が先程の虫と同じように鎌のような手を振り下ろそうとしていた。

しかしアカルがそれに気づいて振り向いた時にはすでにアズマがその怪人に斬りかかるのが映った。


「!?」


その怪人は何とか刀をかわしたものの、そのあといつの間にか盾を抜いていたアカルが盾で大きくその怪人を突き飛ばした。


「ぐえぇっ!?」

「へへっ!いつまでも大怪我している僕じゃないよ。」


そしてその怪人はすぐに立ち上がり転生者の方をじっと見た。


「転生した力をつけて慢心しているかと思うだが…いやはやどうにも…」

「ま、お前らがいちいち襲いかかってこなければそうなったかも知れないけどな。」


苦虫を噛み潰したような表情の怪人はアズマの皮肉で大きくため息をついた。


「はぁっ…これだけ我ら怪魔に狙われ続けて戦ってればそうなるか。いやはや…だがそう言っていられるのも今のうちだ。」


そういうと怪人の背後から先程の蜂のような虫や

悪魔の髑髏のような頭をした巨大なカマドウマ

が数匹現れ、何匹かはその怪人を守るかのように前に立った。


「うわぁっ結構いるなぁ。」

「とりあえず1匹ずつ、まとまってきたら一気に、でいこう。」


そして怪人は転生者2人にその手の鎌を突き出した。


「いやはや、一応名乗るが…俺の名はイノセクト。虫の怪魔人だ…ではお前たち!かかれぇ!!」


そういうと周りの怪魔の虫たちは一気に襲い掛かった。



「ヘルフェアリーども!連携し、鱗粉の嵐だ!」


イノセクトがそういうと頭が花の虫、ヘルフェアリーの数匹が2人の頭上に近づき、花弁を横に回し始めるとそのからピンクの粉が一斉に2人に舞って行った。


「うっ…これは!」

「よし、…旋風回斬!!」


アズマは刀を下に構えるとそこから回転し、大きな旋風を巻き起こした。

そして鱗粉を吹き飛ばしつつ、その旋風によって虫たちは切り刻まれた。


「よし!…ゴホッゴホッ…まぁ何とか…」

「!!テラ・シールド!!」


若干の鱗粉の影響で咳き込んでいるとアカルは上に防御結界を放った。

それと同時に3匹の骨頭のカマドウマが鎌を振り下ろしていた。 

そして振り下ろされた鎌はその防御結界によって防がれた。


「よし!そのままアレをぶちかませ!」


カマドウマの口が開くと口から強力な超音波が発生し、防御結界を展開していたアカルがまともに喰らってしまった。


「いいい!?耳がっ!耳がぁ!!!」


だがカマドウマ達は間も無くしてアズマに首を切り落とされた。

そしてアズマはそのまま後ろに倒れ頭を抱えているアカルに駆け寄った。


「無事かアカル!?」

「ごっごめん…今耳がキーンってなって頭がクラクラして…」

「ククク…仲間の心配をしている場合か?」


アズマはイノセクトの言葉に振り返るとそこには先程の数よりさらに倍以上のヘルフェアリー、骨頭のカマドウマがイノセクトのもとに集まっていた。


「なっ…いつの間に…」

「これぞ蟲怪魔のリーダーこと、私がなせる技よ…さぁそろそろお終いにしようか!」


イノセクトが鎌をアズマ達に向けるとヘルフェアリーとカマドウマはアズマ達の周りを一斉に囲み鱗粉と超音波を同時に繰り出した。


「うわぁ!耳がっ!目がぁ!!」

「ぐぅっクソッ!」

「ではこれで…終わりだ!!」


鱗粉と超音波による一斉攻撃に身動きが取れない2人に対しイノセクトは鎌を横に降って斬撃を飛ばしていた。その斬撃は2人の首を正確に捉えていた。

そしてその言葉に反応してアズマは苦しみながらも立つので精一杯なアカルを倒し、飛ばされた斬撃をなんとかかわした。

だがそれでも鱗粉と超音波の嵐は止まらず動くことが出来なかった。


「なんとか避けた…けど…!」

「これは…きつい…!」

「いくら強くても目と耳を責めてしまえば動けぬだろう?さっきはよく避けたがこれはどうだ?」


そういうとイノセクトは手の鎌をさらに振り回し斬撃を乱れ飛ばした。

さらにカマドウマの怪魔も超音波を放ちながら腕の鎌を降って斬撃を飛ばしアズマとアカルの2人に斬撃が一斉に襲いかかった。


「くっ…こっちも!」

「おりやぁ!!」


それに負けじとアカルは防御結界を展開して斬撃を防ぎアズマも斬撃を飛ばした。

そしてその斬撃は超音波を飛ばしたカマドウマ達には当たったものの虫達の司令塔のイノセクトには当たらなかった。そして蟲達は何匹か斬られた仲間を見て攻撃を止めるものもいたが


「たとえ同胞がやられても振り向くな。同胞を倒したやつを真っ直ぐ見据えろ。」


その言葉によって周りの虫たちの攻撃はさらに激しくなって行った。

すると突然アズマの全身が痺れ始め、動けなくなりそのまま倒れた。


「ぐっ…アズマ…!!」

「やっと鱗粉の効果が出たか…ここまでよく持ち堪えていたものだ…」


そして防御結界を解き、苦しみながらもアズマの方まで駆け寄った。


「まってて…今回復を…」

「させん!!」


イノセクトは怪しく目を光らせアカルを見つめるとアカルは急に声が出せなくなってしまった。

そしてアカルの手足は震えが止まらなくなりそのまま立つことも難しくなって行った。


「…!…!!」

「こいつの超音波には人の脳を狂わす効果もあるからな…今更耳を閉じてももう遅い。もうそろそろお前も動けなくなっていくはずた。」


その内にイノセクトは鎌の手から魔力を貯めていた。

「さて今度こそだ…もう動けぬであろう。いやはや、ここまで我らの攻撃によく耐えたものだがこれがお前たちの最期だ!ギガ・サイクロン!!」


イノセクトは両手の鎌を前に突き出すと鎌の間の魔力から強力な竜巻が転生者につけて襲いかかった。


アカルは最後の力を振り絞ってアズマの上に覆い被さり庇おうとした時


「ミラージュ・マジック!!」


彼らの後ろから声がするとそこからまた淡い虹色の結界が転生者2人の前に展開され竜巻を吸収するとそこからさらに巨大な竜巻がイノセクト達に跳ね返ってきた。


「ぬおぉっ!?」


そしてその竜巻はイノセクトに直撃し、周りの虫たちも吹き飛び怪魔達はいなくなっていた。


「大丈夫ですか!?」

「きみは…ミリア!」


ミリアは2人に駆け寄って手をかざすと2人の傷や鱗粉や超音波による目や耳の機能も、すぐに動けるほどに回復していた。


「悪い、本当に助かったけど…」

「どうしてこんな森に?」

「この森には少し入ったところに食べられる野草と薬草が多く生えているんです。本当に少し歩いただけのところにあるので集めるだけなら迷うことはないのですが…森の奥をよく見てみるとお二人が倒れている様子が見えたのでいてもたってもいられず…」

「いや、道中には怪魔以外の魔物もいたはずなんだが…」

「それはこの魔物避けの聖水があってこそです。魔王の力が弱まっている今、これだけでも十分ですので…」

「はぁ〜それにしても本当に助かった…けども。」

「ミリア伏せろ!」


アカルがそう言ったと同時にアズマとアカルはミリアを後ろから鎌を振り上げて襲い掛かろうとしたイノセクトの攻撃を受け止めた。


「…いやはや。まさか気づかれるとは…」

「今までの流れで流石にこれだけで終わるとは思っていないからな。」

「それにしたって女の子を後ろから襲うとかちょっと卑劣じゃない?」


そして互いに後ろに下り、ミリアはアズマとアカルに駆け寄って2人の後ろについた。


「卑劣なものか。戦場に性別なぞ関係なし、我らに仇なすなら排除するまでよ。…蟲どもがいなくともこれはできるのだ。」


そう言ってイノセクトは大きく口を開け、羽を展開させると口から先程までとは比べ物にならない大音波を上げ、開いた羽から鱗粉の嵐が吹き荒れた。


「くそっ!こいつも…」


アカルはミリアを庇おうとシールドを展開し、ミリアはそれに気づいてアカルに手をかざして回復し続けていた。


「すみませんすみません!私が早くこの場を離れなかったばっかりに!!」

「別にいいけど…あれ!?アズマは!?」


アカルふと周りを見渡すと結界の外に刀に手を当てそのまま動けずにいたアズマがそこにいた。


「…………」


アズマの動けない様子を見てイノセクトはじわじわと近づきはじめた。


「大変です!!このままではアズマさんが!!」

「…いや。多分あれは大丈夫。」


だがアズマはその様子を見て動くこともなくただアズマをじっと見つめていた。

そしてふいにイノセクトが足を止め、アズマをじっと見つめたのち、イノセクトはその場で両手の鎌を横に大きく広げ


「ざぁっ!!!」


巨大なかまいたちをアズマに放った。


「アズマさん!!」


ミリアが叫んだと同時にアズマはその場から姿を消していた。

…正確には一瞬でイノセクトに近づくと同時にイノセクトの腹に刀を突き刺していた。

そしてイノセクトもその刀を何とか鎌で受け止めようとするも間に合わず、今の状況に至った。


「…いやはや…ここまで…か。」


イノセクトは口から血を出しながらそう言うとアズマは一気に刀を突き刺したまま振り上げ、そこからイノセクトを2つに切り裂き、そのまま消滅していった。


「すごい…!」

「さっすがアズマだね!でも大丈夫?」

「うっ…目と耳が…」


アズマは瞼を強く閉じ、耳を塞ぎながら答えると、その様子を見たミリアとアカルはすぐさま回復魔法を唱えた。

そしてアズマは何とか回復するとミリアは彼らに聞いた。


「あの…あなた方は何故この森に?確かにこの森を通れば次の街への近道になりますが。」

「いやその…この前の宝玉を入手するのにかなり時間をかけ過ぎたから…」

「その時間を取り戻すために…うん。」


そういうとミリアは首を横に振り、そして慈悲深くこう言った。


「いえ、そんなに急ぐ必要はありませんよ?魔王軍の力も今はまだまだ弱く、宝玉も確実に集まってもうあと1つではないですか。たった1つの宝玉に時間をかけすぎても…いえ。もし今までの宝玉も時間をかけていたとしても我らの父は急かすようなことはいたしませんとも。…あなた方の元の世界に"急いては事を仕損じる"という言葉があるように、いくら我らが父の力を貰ったとはいえ、あまり急ぎすぎると周りが見えなくなってしまいますよ?」


アズマとアカルはその様子を見てまるで転生前に見た神様と似たような神々しさを感じた。


「…あっ!すいません!偉そうなことを言ってしまって!!」

「いっいや。うん…すみません…」

「あっアズマが敬語になってる、気持ちは分かるけど。」


そういうとアズマは少し考え込んだ。


「どうする?やっぱり少しでも安全に行くために地図通りに行くか?」

「う〜ん?でももうかなり奥まで来たと思うけどねぇ?」

「いっいえいえ!そんな私の言葉なんかで…!」

「あれ?そういえばミリアはこの森から少しの距離までのところって言ってたよね?もしかしてもう…」


ふとアズマとアカルが見上げると森の先から日の光が見え始めた。


「あっもう近かったのか。」

「はいぃ…そういうことです…」

「じゃあ一緒行こうよ。近くっていうんならそこの街の教会にいくんでしょ?」


そして2人は外を出ると遠くを見た先に街が見えた。


「あれが最後の宝玉がある街?」

「そうですね。確か宝玉はあの街の貴族様の屋敷に祠があったはずなので、大丈夫だと思いますよ。」

「ん。まぁ今回は本当ミリアのおかげで助かったよ。」

「フフッ私の力が少しでも役立てたのなら幸いです。」

「それじゃ、最後の宝玉を手に入れるためにレッツラゴー!ゴー!」


そうして3人は最後の宝玉がある街へと向かっていった。


次回、盗人

※次の投稿は再来月になるかもしれません。

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