つめた〜いのはお好き?
アズマとアカルが道中、とある男が声をかけた。
「そこの旅人さん?もしかしてサマルーの街へ行こうとしてるのかい?」
「うん?そうだけど…」
「だったらこれを買って行かないかい?ほれ防寒着!」
男は行商人らしいが、出してきたのはなんとサマルーの街の気候に最も不適切な温かそうな防寒着を取り出した。
「そこで防寒着売っても売れないのでは?」
「いえいえ。地元の方にはまぁまぁ売れますし、それに今の時期なら十分な売り上げになりますので。」
「えっ?」
「お客さん。気付きませんか?この辺り妙に涼しい風が吹いているのを。」
サマルーの街の環境は基本的にかなり気温が高く、四季でいう冬でも近くの海で泳ぐ人がいるほどの環境ではあるが、街からはまだ少し離れているとはいえ涼しい風が不自然なほどに多く吹いていた。
「あの…あなたは何か知っているのか?」
「あまり現実味のない話になるのですがねぇ…多分これを買って実際に行ってみたほうが早いと思いますよ。」
不安になった2人は一応防寒着2着を購入した。
「商人が言っていたのはこういうことか…」
サマルーの街近くまで来ていた2人だったが、そこは事前に聞いていた環境は全く反対だった。
「防寒着を買っておいて本当に良かったな。」
周りは雪で覆われて冷たい風が絶え間なく吹いていた。
「なっ…なんなのこの寒さ!?」
「明らかに聞いていた環境と違っているな。…魔王軍の仕業に違いない…」
そしてアズマ達はサマルーの街へ辿り着いた。
…本来サマルーの街は海に直接面しており、アズマ達の世界でいう、南の島的な環境であったのだが。
「寒い!ひたすらに潮風がすごく寒い!!」
「雪が積もってる砂浜なんて初めて見た…」
街の周り、そして砂浜までも雪化粧になっていた。
「やっやぁ…君たちも、海に遊びに来たのかい?」
そこに体が震え、顔を青くし防寒着を着た男が声をかけてきた。
「あの、あなたは?」
「私は昔からここに住んでる街人だが…君たちの多分思っているとおり、この状況は魔王軍の仕業だ…」
「やっぱり…」
「魔王軍幹部たちは神の裁きによって死んだと思っていたが…つい最近妙な魔物が現れて、この街によく来るんだ…」
「えっ!?襲撃されてるの!?」
「いや…そんなことはない…ただ、この街の領主様の家に定期的にやって来て…いや。特に何もなく、出てくるんだが…」
「何事もなく…?」
「あんたら…噂に聞く勇者様達なんだろ?だったら町長様の元を訪ねて来てくれねぇか…?」
「ということで来てみたのですが…」
「そうか…君たちが噂に聞く、転生者と呼ばれる勇者たちか…」
そんなこんなで町長の家への応接間にやって来た転生者たち。
そしてそんな町長、シソメンは転生者の顔を見るたび安堵の息を吐いた。
「いや実はな…」
「シソメン様!例の魔物が!」
「えっ!?」
「来るか!!」
アズマとアカルが武器を抜き、立ち上がろうとするもすぐさまシソメンが止めに入った。
「まっ待て!君たちはここに隠れてくれ!」
そしてシソメンはアズマとアカルを近くの大きなタンスに押し込んだ。
「えっちょっと!?」
「とにかくここで静かにしていてくれ!」
そしてシソメンは再び元の場所へ座ると大きく深呼吸をはいた。
そしてしばらくするとドアを叩く音がした。
「入りなさい。」
そしてそこに現れたのは
上半身は氷山し、下半身は雪のちゃんちゃんこを来て脇に包装箱を抱えた魔人と武装した雪だるま2匹
が姿を現し、軽く会釈をした。
「毎回すいませんねぇ、ではこれ。いつものものを…」
そしてその魔人は包装箱を渡すとその中身を見せて渡した。
(あれってお金?)
(いやあれは…ハーゲン○ッツ?)
中身はアズマたちの世界で有名で高級なアイスっぽいものがギッチリと積まれていた。
「だからこんな物受け取るわけには…」
「いえいえそんな謙遜なさらず、受け取ってくだせぇ。」
そしてその魔人は箱のアイスを、強引に机に置くとアズマたちが座っていた席に座った。
「?妙に暖かいんだが…誰か座ってたんですかい?」
「あっ…あぁ。君たちが来る前に先客が来ていてな。」
「ふ〜む…まぁいいか。」
そしてその魔人は座りながら身を乗り出した。
「で、考えてくれましたか?宝玉を壊す代わりにこの街に魔王軍は一切攻めこまない約束のことを…」
「いやだがら!そんな話は引き受けられないと言っているでしょう!」
「何故分かってくれねぇ!?あなたがはいと言って宝玉を壊すだけで!この街の平和は約束されるんだ!」
「私は領主として魔族に魂を売るわけにはいかないんだ!魔王の手先の約束なぞ、信じられぬし人間として君たちの要求を受け入れるワケにはいかない!」
「いやだから魔族とかそういうのは抜きで考えてほしい!それにそちらから攻め込まない限り人間たちには手を出さない約束も今現在まで守っているんだ!ちゃんとそういうのは守るし、それにこの街によい環境まで提供しているんだ!」
「よい環境!?この状況がが!?」
シソメンは窓に指を刺した。
窓にはもう何日も雪が降り積もる光景が映っていた。
「よい環境じゃねぇですか」
「それはお前たちにとってだろう!?」
「いやいや。このつめた〜い環境ではこの街で問題になっていた熱射病もぱったり止まったでしょう?」
「熱射病は確かに止まったは止まった。ただ寒さに慣れん者たちが毎度毎度凍えて苦しそうにしてるんだ!」
「いやいやそういうのは慣れですよ。慣れ。あつ〜いよりかだいぶマシでしょう。」
「マシじゃないわぁ!!」
シソメンが肩を震わせてハァハァと息切れする様子を見てその魔人は深くため息をついた。
「まぁともかくさっきも言った通りはいと言って宝玉を壊してくれるだけでいいんだ。俺たちは無駄に熱い奴らと違って平和的に、話し合いで解決したいからな。まぁ…あんまりこういうこと言いたかねぇんだかよ。俺たちを雇った魔王様も切羽詰ってるからなぁ。俺らはともかく魔王様はどうしてくるかわからねぇ。…まっ今日のところは引くとするか。いい返事が貰えることを期待しよう。」
そうして魔人と雪だるま2体は席を立ち去っていった
「あの…今のは」
アズマとアカルはタンスから出てきた
「何週間か前、突然この地を雪まみれにした魔人だ…魔王軍幹部のほとんど神の手によって滅んだと聞いていたのだが…」
アズマは頭を抱え、アカルの顔は引きつった。
(やっぱりこれって…)
(今考えられるとしたらほぼ間違いなく怪魔だろうな。)
そしてアズマはシソメンに尋ねた。
「さっきの魔人の名前って分かりますか?…俺たちの予想だと多分怪魔とかも言ってたと思うんですが…」
「あっあぁ…あいつは怪魔帝国のつめた〜い一派のヒョウガゴーン、とか名乗ってたな。」
「つめた〜い一派?」
「私もそれが何なのか全くわからぬのだが…ともかく本来暑いくらいの街をここまでしたのだからロクな奴ではないのは確かだな。」
そうしてアズマとアカルはお互い顔を合わすと
「そいつらは今この辺りのどこにいるか分かりますか?」
「…行ってくれるのか?」
「とーぜんですよ!!」
そしてシソメンは机の引き出しから地図を取り出した。
「私は一度だけ奴らのところへ訪ねたことがあるのだが、厄介なことに宝玉がある洞窟を根城としている…倒してきたらそのまま宝玉をかまわない。ただ、あの魔人の仲間と思われる妙な魔物たちもいると思うから気を付けてくれ。」
「「はい!」」
そうしてアズマとアカルはその洞窟へと向かっていった。
アズマとアカルが街を出てすぐに
防寒着を着用し、全身が震えて青い顔をしたブルドックの獣人
が行手を塞いだ。
「やっ…やぁ…ブルブル。きっきっ君たちは…ブルブル。噂の…ブルブル。転生者って奴らだね…ブルブル。」
「うわっ!いきなり!?」
「ヒョウガゴーン様が…ブルブル。いっいっ一応警戒しとけって…ブルブル。言ってたけど…ブルブル本当だったんだ…ブルブル」
「…怪魔か。」
「そっそう…ブルブル。ぼっぼっぼっ僕の名は…ブルブル。ガタブルー・モウドック…ブルブル。寒がりの怪魔獣人さ…ブルブル。」
「ねぇ…大丈夫?」
アカルはその怪魔があまりにも震えていたので思わず声をかけた。
「だっだっだっだっだっ…ハクショオォン!!」
「うわっ汚な!!」
「だだだ、大丈夫なワケないよ!!…ブルブル。僕、本当はあったか〜い一派に入りたかったのに…ブルブル。」
その怪魔は悲痛な叫びを上げて現状を嘆いた。
「こここ…こうなったら…ちゃっちゃと倒して引き揚げて…バアァァ!!!」
そして唐突に口から凄まじい火炎を吐き出した
「うおっと!」
「ふん」
そしてその炎は地面に落ち、メラメラと燃え上がった。
「もうこれぐらいの不意打ちなら慣れ」
「ブルブル…ふっ…ふひぃ〜あったけぇ…」
そしていつのまにか怪魔が炎の近くに来て体をあたためていた。
「はぁ〜僕、炎を吐けて本当に良かった〜」
「……………」
アカルはどうすればいいか分からずに困惑しているとアズマは無言で怪魔に近づき、
「それにしてもなんで僕つめた〜い一派に入ってるんだぐえぇ!!」
背中から思いっきり切り捨てそのまま消滅していった。
「……良かったのかな?」
「………先に進むぞ。」
アズマはアカルの問いに答えずさっさと奥へ向かっていった。
「ヒャッハァ!!ここは通さねぇぜ!転生者どもぉ!!」
アズマとアカルが坂道を進んでいる道中に坂道の頂上から
頭が氷塊の防寒着を着たの鬼
のような魔物が姿を現した。
「お前は誰だ?」
「俺は氷塊怪魔のブリーガだ!何のつもりかはなんとなく察しはするが…」
ブリーガは地面から巨大な氷塊を取り出し
「転生者ならここでくたばって貰おうか!」
そのまま氷塊をアズマ達に向かって転がし、巨大な氷塊はそのまま坂道を転んでいる間にどんどん速度が上がってアズマ達に向かっていった。
「テラ・シールド!!」
アカルは防御魔術を展開し、盾でその氷塊を防ぎ、氷塊を止めた。
「大丈夫かアカル?」
「これぐらいなら余裕…って!うわぁ!!」
するとアカル達が目を離した隙にさらに氷塊が2、3個転がってきた。
アカルはそれをテラ・シールドで全て防ぎ切るも、氷塊は絶えずアズマ達に襲いかかり続けた。
「そっちがその気ならこっちは投げ続けるだけだぁ!諦めてつめた〜く潰れな!!」
怪魔ブリーガは全く手を緩めることなく氷塊を投げ続け、転生者達の体力は消耗していった。
「やばい…けど頑張らなきゃ…」
「こうなったら!!」
するとアズマはアカルの防御魔術の範囲から飛ぶと転がってくる氷塊に飛び乗りそのまま転がり続ける氷塊に次々と飛び乗り坂を登っていった。
「それそれそれそらそれそれそらそれ!!!」
しかし怪魔は氷塊を投げることで手一杯になり、向かってくるアズマの存在に全く気がつかなかった。
「それそ…うん?ってゲェ!!!」
そしてブリーガが気づいた時にはすでに手遅れ。
ブリーガのところまで迫っていったアズマはそのまま斬り捨てた。
「ヒョ…ヒョウガゴーン様ぁ〜…」
道中、氷が貼った大きな湖を通ろうとした時に湖から何かがアズマ達に向かって襲いかかった。
「トリプルアクセルキーック!!!」
「うおっと!」
咄嗟の攻撃を慣れた動きで避けると
長身でラバースーツとヘルメットを身につけ、手の甲と足の裏から鋭い刃が生えた謎の怪人
が姿を現した。
「ヒェッヒェッヒェッ!あたくしの名はスベリヌスでござんす!御命、頂戴いたしましょ!」
その怪魔は下に氷が貼ってないのにも関わらず雪の地面を滑るように移動してアズマに手の甲の刃を突き出した。
「ふんっ!」
だがアズマはそれを難なく刀で防ぎ、そのまま横に斬ろうとするもスベリヌスも華麗な動きで攻撃を避け、距離を置いた。
「ヒヒヒ。ならばあたくしの得意舞台にしようでござんしょ!」
スベリヌスはそう言ってその場で思いっきり地面を踏むとたちどころに地面が凍りついた。
それはかなり広く、アズマ達が立っている場所の倍以上の地面に氷が貼られた。
「うわぁ!何これ!?」
「くっ…!滑り止めの靴を履いてるはずなのに!」
「オホホホホ!さぁ殺戮ショーの始まりでござんす!」
そしてスベリヌスはさっきの数倍は早い速度でアズマ達に近づき、傷自体は浅いものの、そのままアズマとアカルを滑りながら切り裂いた。
「うぐっ!」
「防御が追いつかなくなって…!?」
「さぁさぁさぁ!どうするでごさんすか!?どうするでござんすか!?」
そしてスベリヌスはそのまま何度も何度もアズマ達を滑りながら浅く切り裂いていった。
「こうなったら…『ボールシールド!』」
アカルはアズマ達の周りに円状の防御結界を展開し、なんとかスベリヌスの猛攻を防いだ。
「ぬぅん、こしゃくなぁ…だけどもそれじゃあお前達も手出しできないざんす!!」
「ふっふっふっ…そうでもないよ!」
「…へっ?」
「というわけで…アズマ!」
そうアカルがアズマに呼びかけるとアズマは刀に炎を宿し、地面に突き刺した。
「げげぇー!!??」
すると地面に貼ってある氷は瞬く間に溶けていき、スベリヌスが乗っている氷まで溶け始めのスピードはどんどん下がっていった。
するとその様子にスベリヌスは激昂した。
「よりにもよってあたくしらにあったか〜いなんて…してんじゃねぇーざんすぅ!!!」
そしてスベリヌスは2人に向かい、飛び上がるとそのままボールシールドに飛び蹴りを繰り出した。
「くらぇ!!冷徹な怒りキーック!!!」
するとアカルは蹴りが当たる瞬間ボールシールドを展開を止めて左に避けるとアズマはスベリヌスに向かって大きく炎を纏った刀を振った。
そしてスベリヌスに大きな炎が襲いかかり、そのまま燃えていった。
「あっあたくしにあったか〜いなんて…屈辱的ざんすぅー!!!」
そしてそのままスベリヌスは燃えている途中にも関わらず炎と共に消えていった。
その後もヒョウガゴーン配下の怪魔達を次々と倒していったアズマとアカルはついに宝玉、およびヒョウガゴーンがいる洞窟へたどり着いた。
「ここがヒョウガゴーンとかいう怪魔がいる洞窟か。」
「うぅっ…なんだか一層寒くなってきた…」
洞窟の入り口からは身が凍る風が強く吹いていた。
「一応、道中で回復は済ませては置いたけどアカルは大丈夫か?」
「う、うん。こっちも大丈夫。洞窟の入り口だけなのに震えが止まらないのが不安だけどね。」
アカルは洞窟の入り口へ近づくたびにその寒さで震えが止まることはなかった
その時、アズマは近くに敵の気配を強く感じた。
「アカル戦闘準備を!近くに敵が!」
「!!アズマァ!!」
アズマは刀を抜く前にアカルがアズマに駆け寄りそのまま抱きながら横へ飛んだ。
そしてアズマがいたところに巨大な氷塊が降ってきて重々しい音とともに冷たい風と地面の雪が激しく吹いた。
「ん。潰したと思ったが避けたんか。ま、これぐらいで仕留められるとは思ってはねぇけど。」
「お前はシソメンさんの屋敷に来た!」
「そう、怪魔帝国軍つめた〜い一派副長のヒョウガゴーン様よ。俺が送った刺客達も全員倒したようだな。」
「送った刺客って、僕たちがこっちに来るの分かってたの?」
「そりゃお前、あん時タンスの方見たら何かいたの見つけて多分だと思ったからな。」
「あっバレてたんだ…」
ヒョウガゴーンは席が生暖かった時から既に何かを察しており、タンスを横目でチラチラと見ていたら少し隙間から何かが見えていたのを確認していた。
「万が一を考えて部下を配置して俺はここの近くで待機してたら案の定ってわけだ。」
「にしてもまさか不意打ちしてくるとはな。」
「敵の大将が不意打ちするなんて考えなかっただろ?ま、どっちみちお前らはここで潰さねぇといけねぇしな。」
ヒョウガゴーンが指を鳴らすと洞窟から三体の武装した雪だるまが飛び出した。
「言っとくがオメェらが来たからって街の人間には手は出さねぇから安心しな。…次の話し合いの時にはテメェらの首を土産に持って、な。」
「…アカル。」
「うん!もう震えてなんかいられないよ!」
「スノーマン共!かかれぇい!!」
そしてアズマとアカルが武器を抜くのを確認するとヒョウガゴーンは一気に号令をかけ、雪だるまの怪魔スノーマン達は突撃していった。
「キェイ!!」
「シャベル!?」
アカルはスノーマンのシャベルのような武器を盾で受けるとそのまま斬り裂いた。
「氷結斬りィ!」
「紅蓮火炎斬!!」
スノーマンは氷を纏ったシャベルで斬り裂こうとするものの、アズマの火炎を纏った剣を受けきれる筈もなくシャベルごと斬り裂いた。
「これで後一体!」
「アイスプレス!!」
その時アズマの上からヒョウガゴーンが押しつぶして来た。
アズマはそれをすんでで避けたがもう一体のスノーマンも巻き込まれて、大きく吹き飛んでいった。
「アイスレーザー!!!」
そしてヒョウガゴーンの口から吹雪を纏ったレーザーをアズマに向けて発射した。
「大丈夫だよ!テラ・シールド!!」
避けた先に近くにいたアカルはアズマを庇った。
「やっぱり手は少し震えるけど…絶対に守る!」
「アイスブレイク!!!」
ヒョウガゴーンはいきなりその巨大な身体で思い切り体当たりを仕掛けて来た。
「ぐうぅ!!」
しかしそれでもアカルの防御が崩れることはなかった。
「かぁっ…くぅ…おのれぇ、かってぇ。」
「アズマ今だ!」
ヒョウガゴーンが頭を防御結界にぶつけたショックでめまいを起こしていた。
そしてアズマはその隙を突き、アカルの結界から抜けるとヒョウガゴーンへ向け、炎の剣を纏った斬撃を繰り出していた
「炎上飛鳥斬!!」
「アイスパンチ!!」
ヒョウガゴーンはそれを冷気を纏った氷塊の腕で迎え撃った。
炎の剣と氷の拳
属性も攻撃方法も全く違うぶつかり合いは相殺し、互いに距離をとった。
「あったか〜いがつめた〜いに勝るなどとは思わねぇこったぁ!!!」
「…………」
「テメェら出撃だそいつを囲めぇ!!」
ヒョウガゴーンは地面に向けて両手を振り下ろすと地面からスノーマンが20体も現れた。
「「「「「イヤッハァ!!!」」」」」
そして20体全てがアズマの周りを囲むと5体がアズマに向かって一斉に突撃していった。
「炎上陣!」
アズマは炎を纏った剣を地面に刺し、炎の防御陣を展開した。
そして5体全てはその炎に包まれて消えていった。
だが地面の雪からまた新たに10体のスノーマンが姿を表した。
「なっ!?」
「スノーマン達は雪と俺や大将がいる限り無限に増殖できるんだよ。よしテメェら、そのままそいつを留まらせろよ。俺はその隙に」
「ちょっと待ったぁ!」
ヒョウガゴーンは声の方向を振り向くとアカルが防御結界を貼ったままヒョウガゴーンに向け突進していた。
「テラ・シールドバッシュ!!」
「フンッ!!!」
ヒョウガゴーンはそれを両手で受け止めた。
「ぐぐぐっ…」
「アイスレーザー!!」
そして凄まじい氷のレーザーを結界の近距離で放った。
「ぐぎいいい…ああああああ!!!」
アカルが受ける衝撃と冷たさはもはや今までの旅よりもずっと強い衝撃であるものの、震える手に力を込めて必死にそれを受け止めていた。
そのうちアカルは攻撃を直接受けていないのにも関わらず体の所々が凍り付いてきた。
「つめた〜いこそ最強!つめた〜いに屈しろぉ!」
「!!!…どけ!炎上大魔陣!!」
アズマは向かってきた8体のスノーマンを倒しアカルのところへと向かった。
「アカル!!」
「ア…ズマ…!…うおおぉぉぉりやぁぁあぁ!!!」
「ぐべぇ!?」
その様子を見たアカルは身体半分が凍っているにもかかわらず、ヒョウガゴーンに向かって一気に突進し、そのままアズマの方へ押し出していった。
そしてその様子を見たアズマは再び剣に炎を宿した。
「てってめぇ!!くっそ…」
「うおぉぉ!!」
「はあぁぁ!!」
そしてアズマはヒョウガゴーンに向かって炎の刀を突き出した。
「火炎斬突!!」
そして刀に宿った炎は容赦なくヒョウガゴーンの身体を溶かしていった。
「ぐあぁぁ…畜生!、俺が!俺があったか〜いに屈するわけには…いかねぇってのに…よぉ…!!」
そして次第にヒョウガゴーンの身体が全て溶けきり、溶け残った液体は怪魔が消えていくように消滅し、スノーマン達もそのまま消えていった。
「ハァッハァッハァッ…終わった〜!」
「アカル!」
アズマはすぐにアカルの元へ駆けつけた。
「あっうん大丈夫…結構動いたから体は温かくなったから…」
「…一つ気になったんだけど何でお前はそんなに無茶するんだ?…俺が不甲斐ないってのもあるが」
「そりゃあ、相手は僕も君も殺す気で来てるからね、無茶をするのも仕方がないって。それにさ…」
そこでアカルはアズマの顔をこちらに向けさせると
「そんなの君が大好きだからに決まってんじゃん。」
「…………!!!」
アカルのノータイムの返事により、アズマは一気に顔を赤らめた。
「おっお前…いきなりそれは…!!」
「それに僕、パラディンみたいなものだし護るのは当然のこと…ハックション!!」
「…あーあーあーお前寒いの苦手なんだから無理すんなって。ほら、さっさと洞窟に行くぞ。多分、あいつがボスだと思うからもう他に怪魔がいても消滅してるとは思うが…」
「うー…ごめん。」
アズマは強引に話題を変えたあと、そして2人はそのまま洞窟の中へ入っていった。
そして洞窟の突き当たりに宝箱があり、そしてその前には奇妙な機械があった。
「なんだあれ?」
「えーと…『雪雲発生機』!?」
サマルーの街の異常気象の原因は怪魔が用意していたまさかのすこし不思議的な機械であった。
「…一応魔力は感じるな。感じてはいるんだが…」
「うーん何だろこのがっかり感、原因はてっきり魔法陣とか何かだと思ったんだけど…」
「まぁこういう世界観で機械的な物が出てくるのは珍しくはないんだがこんなところで出てくると台無し感がすごいな。」
「……とりあえず壊そ。多分これはこの世界観的には早すぎると思う。」
そしてアズマは速攻でその機械を破壊し、近くの宝箱から水色の宝玉を手にした。
その後雪雲が晴れたサマルーの街へ辿り着き、シソメンを始めとした街のみんなに出迎えられ、朝が明けるまで宴会をしながらその時の話を色々聞かされたが、例の機械については一切隠したという。
次回、あったか〜い