旅の始まり
「とうとう来てしまったか…」
とある世界の魔王、レディ・サタンは頭を抱えていた。
自分が制服するため魔王城を構えているこの世界に異世界転生者というその名の通り異世界から来たものたちが現れるという魔族にとって最大のピンチが訪れたのである。
元々異世界転生者というものは昔から世界征服を目指す魔族にとって確実に妨害、もしくは滅ぼす存在ではあるがそんなに大した力は初めからもったいなかった。
が、最近では初めから神などによって最初からめちゃくちゃな強さを持つものが各世界で多く出没しているという噂が魔族の間で起こっており、実際異世界転生者は次々と世界征服を目指す魔王の軍勢を倒していった。
そして今、この世界にもついにその異世界転生者がやってきたのである。
「我の軍勢は多くの悪魔たちとドラゴンが数十匹か…噂によれば異世界転生者というものはドラゴンを指一本で倒してしまうらしい。…もしこのまま我らが奴らによって虫けらのように倒されても見ろ。我が父上であるマダークさまに申し訳がたたん!!」
そう魔王は嘆いているとそこに父の代から支えている側近である年老いた姿の蜘蛛の魔人、クモジィが声をかけた。
「サタンさま、もし差し支えがなければこの者たちを派遣すればよろしいのではないでしょうか?」
「クモジィか…一体何を見て…!?」
その側近が持っていたのはとある一つの本、「怪魔帝国・デリバリー・カタログ」であった。
「まっまさかこの我にあのバカどもを雇えというのか!?」
「しかしこの少ない軍勢ではたちまち倒されてしまうのでは?と私は思います。」
怪魔帝国
それは魔界の隅の隅に存在するかなり小さな帝国である。
だがその小さい領地とは裏腹にその魔物達の強さは他の魔物と比べてかなり強く、そして魔物なのになぜか科学力もかなりのものでありそして他の魔族たちが困るほどに驚異の馬鹿・意味不明・変態の勢揃いの混沌ぶりだと魔族達の間で知れ渡っている。
そして彼らはその強さ、科学力を利用して怪魔・デリバリー・カンパニーというその帝国の怪魔たちを派遣する商売を営んでいる。
ただその帝国のあまりの混沌ぶりが災いして彼らに頼ることどころか関わることは魔族にとっての恥だともいわれているため実際の利用者は少ないようだ。
「私は下手に倒される恐れがあるよりかは怪魔たちに転生者を倒させる方が被害は少ないかと」
「ぐぬぬ…しかたなし、か。」
そもそも現魔王であるレディ・サタンは異世界転生者が来る先週に先代魔王のマダークが寿命で亡くなった為、緊急に魔王の座についたばっかりであり、そして先代の魔王が死んだため魔物達の魔力は前魔王に比べて減少し、弱体化しているため余計に異世界転生者に倒される確率は跳ね上がっている。
「このまま我らが滅ぼされてしまっては全て未熟である我の責任だ。それ故に奴らに頼らねばならぬ…か。」
「わかっていただければ何よりです。では早速準備いたしましょう。」
「後は触媒を用意するだけか。」
魔王レディ・サタンは怪魔を呼び出す為の魔法陣を目の前の地面に描いた後、クモジィに持ってあるその触媒を置くように命じた。
「しかし本当に例の本についていたその触媒を置くだけで奴らを呼び出せるのか?」
「この本に書かれていることが事実ならばそうなります。」
その触媒は小さい鉄の箱であり、箱の一面に水晶の膜が張ってあるものであり、水晶の膜がある一部分を上にして置くことで後は詠唱することもなく呼び出せる。ということがその本に書かれていた。
クモジィは魔法陣の真ん中にその触媒を置くとクモジィが魔法陣から出た途端、魔法陣から紫色のオーラが勢いよく放出された。
「ぬおっ!?」
「ふむ。どうやら本当らしいな。」
しかししばらくするとオーラが治り、
「…うん?」
「おや?」
特に何も起こらなかった。
「おい…これは失敗ということなのか?」
「ふぅむ…?何かが足りなかったのでしょうか?」
「いや、貴様がやつらを呼べといったのだぞ!?そんな他人事みたいにいうな!!」
「そのようなことを仰られても私にはどうしたら良いか…」
そう言いながらクモジィは再び本を見ようとすると鉄箱の結晶の膜から映像のようなものが飛び出した。
「ギッヒッヒ。ようこそ怪魔・デリバリー・カンパニーへ」
「大変お待たせ致しました。私、カンパニーのカスタマーサービス担当のマギョウというものでございます。」
その映像にいたのは牛の頭を持ちスーツを着た帝国の悪魔、マギョウがいた。
魔王は少し戸惑っては大変いたもののその怪魔にこう尋ねた。
「貴様が怪魔を紹介するのか?」
「はい。我らはあなた方により充実した世界征服を提供せんとする企業であり…うん?」
しかしマギョウは唐突に魔王達がいるところと違う方向に顔を向けた。
「あの、今お客様のご対応しているのですが…総帥が私を呼んでいる?…それは対応した後でも…いいから早く来い?…いやそれはちょっとまずいのですが…」
「おいどうした?何かあるのか?」
「あっ大変失礼いたしました。申し訳ありませんが少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
「フム…早くいってこい!!」
そう魔王はいうと水晶の膜から映像が切れた。
「あちらで何かあったのでしょうか?」
「何でも良いから我は早くして欲しいのだがなぁ…まったく!!」
しばらくすると再び映像が飛び出した
「大変申し訳ありませんでした。あのすいません。恐縮ではございますが、あなた方の担当を別の物に任せてもよろしいでしょうか?」
そういうと魔王はしびれを切らし
「もうそのような事どうでも良い!!いいから早くしろ!!」
と怒鳴った。
「すいません。ありがとうございます。では別の担当の者に変わります。」
そういうと別の映像に変わりそこに写っていたのは頭に奇妙な兜をつけた謎の男が椅子に座り眠っていた。
「zzz…zzz…」
魔王はその姿に頭を抱え、眠っている男に怒声を声を掛けた。
「おい!!起きんか!!」
「zz…アッハイ」
そうしてその男は目覚めた。
「え〜はい。あなた方の担当をすることになりましたコーン・ヤーントという怪魔です。よろしくお願いいたします。」
「我としては今すぐこの映像を切りたいがな」
「いや〜すいません。結構ヒマなものでねぇ…ですが担当をさせていただく以上頑張らせていただいまああぁぁす。」
「欠伸しながらいうな欠伸しながら!」
その怪魔は目を擦ると続けてこういった。
「え〜と、あなた方はどの怪魔を派遣させればよいでしゃうか?」
「まてまて本題に移るのが早い!そもそもどうすれば良いのか!?」
「え〜とそこにカタログがあると思うのですけどその怪魔を指名すればOKですはい。」
「ふむ、これのことですか?」
そうクモジィはいうと映像に向かってその本を見せた。
「はいはいそれです。え〜と何にいたしますか?」
「どうでも良いがその"え〜と"多様はやめろ。…だが我はその本の内容を見ていないな…」
「あ〜じゃあこちらで怪魔を2体お任せで選びましょうか?一応2体までなら初回キャンペーンで無料で派遣できますけど。」
「私も中身を見たのですがどんなものかさっぱりなのでお願いしてもよろしいですか?」
「おいちょっとまてよく考えてみたらなぜ我にそれ見せない?」
「あ〜じゃあそれで派遣いたしますね」
「おい話を進めるな!」
魔王のツッコミを待たずにその怪魔は返事をすると魔法陣から再びオーラが放出した。
そしてそのオーラから2体の怪魔の影が浮き出した。
「え〜今派遣したのはヴァベルムとプラズマンです。」
一方そのころレディ・サタンが住む魔王城がある世界にある街、ナントー街の宿屋に例の転生者2人がいた。
転生者の名前はそれぞれ黒い制服を着た村雨東、女物の制服を着た日ノ町明という高校3年生である。彼らは学校で下校中に他の転生者の例の如くいきなりトラックに引かれてしまい、それを見た神さまは彼らに力を与え、魔王に自分の世界が征服されそうになっているので守ってほしいと告げ、その2人を転生させたのである。
そして昨日彼らは賞金がかけられている大盗賊をひっ捕らえ、ついでにノスウェスト王国のヒルダ姫の弟、マークらの人質を助け出したために王国に賞賛されたばかりである。
「まさかただ盗賊捕まえるだけでこんなに騒ぎになるとは思わなかったな。」
そうベットに座っている黒い制服をきたアズマは多少気だるそうに答えた。
「ただの盗賊ってワケじゃないじゃない!!」
「ぐはっ!?」
そしていつのまにかアズマに向かってアカルはベットに押し倒し抱きついてきた。
「だって僕達が倒したのは賞金3億円もかけられた大盗賊なんだよ!!そりゃあこんな騒ぎになるって!!」
「俺はただ外の散歩したかっただけだけどな。」
「それにそれに!ノスウェスト王国お姫さまの弟くんも助けたんだよ!まぁ誰であろうと助けたけどね!!」
「それも盗賊ども倒した後の近くの洞窟で見つけただけだしな。」
「そうだとしても姫さまも弟くんも王様もとっても喜んでたよ!!」
そうアカルはいうとアズマはアカルを払って宿屋を出る準備をした。
「それに俺たちは神に言われた通り魔王を倒さなけりゃいけないんだぜ。」
「まあーそうだけどさ、今は素直に喜んどこうよ。賞金のおかげで旅に支障はほとんどないんだよ。」
「まっこれだけあればしばらくは大丈夫だろ。」
そうして彼らは宿屋をでた後、旅に出る前に教会へ行った。
「あっみなさんもうこれからとうとう魔王退治の旅へ出かけるのですか?」
そこにいるのはシスターのミリアがいた。
彼女のいる教会は転生者2人が最初に目覚めた場所でありそしてミリアは彼らを保護した人物である。
彼女は転生者が来る前日の夜に転生者2人が魔王を倒すためにくることを夢でお告げを聞いていたので旅に出る前に世界地図を渡す約束であった。
いきなり彼らは旅に出かけそうだったので彼女はこの街で1日休むことを提案したのだがまさかその日に盗賊を捕まえることになるとは思わないかった。
「まさかこの街の困り種である盗賊を捕まえるとは思いませんでした。」
「正直なんでこうなったか俺たちにもわからないがな。」
「外に出かけたら襲ってきた盗賊達がたまたま大盗賊だったのは予想外だったね〜」
「それも神さまのお導きでしょう。では約束の地図をお受け取りください。あなた方の旅に幸あらんことを」
「すまないな」
「うん!ありがとうシスター様!」
そして地図を受け取り彼女にお礼をしてアカルが抱きついたあと彼らは街を出た。
「…で?まずはどこへ行く?」
「えーと、魔王の城に入るためにはまず7つの宝玉で結界を解かなきゃいけないんだよね。」
魔王の城自体はデッドマウンテンという山にあるのだが結界が貼ってある以上、進めないためにこの世界中に住んでいた賢者たちが来るかもしれない厄災のために作ってきたとされる邪悪をはらう宝玉を揃える必要があった。
「たしかミリアによればここから西の方向に進んだファーム村にあるらしいな。」
「じゃあそこに向かってレッツラゴー!ゴー!」
こうして異世界転生者2人は魔王を倒す旅に出かけ始めた。
…これから馬鹿と変態の巣窟、怪魔に振り回される羽目になるとも知らずに。
次回、怪魔惨状