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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

自由

作者: 深 集

 午前六時、あと数分で東の空から日が昇る。

あと30分で目覚まし時計がけたたましいアラームを鳴らす。

35分後には睡魔に負けまいとベッドから起き上がる。

50分後には眠気を忘れた顔をした私が洗面所を後にする。

55分後には八分の1の大きさのトーストが焼け、スーツに着替え終えた私がそれにマーガリンをサッっと塗ってかぶりつく。

65分後には手を洗い、姿見の前でネクタイを軽く締め直す。

70分後には前日のうちに玄関に用意していたゴミ袋と仕事用の鞄を持って家を後にする。

ゴミ袋の中身から、今日がまだ火曜日であることを実感する。

90分後に最寄りの駅にたどり着き、45分の間満員電車に揺られる。

150分後、3階に仕事場のある小さな雑居ビルにコンビニの袋をぶら下げた私がたどり着く。


 今日は昼食は必要ないというのに、いつもの癖で買ってしまった。

目が覚めてから2時間がすでに経過している。

これから実働8時間の仕事をし、また2時間かけて眠りをつく。

眠るまで1,2時間ほどの自由はあるが、そのほとんどが残業に溶けていく。

誰によってでもないが、誰かによって決められた毎日。


 私の自由はいつ奪われてしまったのだろう。

気付いた時には、自由に羽を広げるのに必要な時間は失われていた。

今は空を飛んでいる暇などはない。しかし老いてしまえばそれこそ飛ぶことはできないだろう。


 思い返せば私は、生まれた時から学びに囚われていた。

大学まで通い、自身の選択肢を広げるために数々のことを学んだ。

それが自由につながる道だと信じていた。

だが社会人になってみると、現実は違った。

私が描いていた未来は夢に過ぎなかった。

給料に不満があるわけではない。

金で買えるものは大抵手に入る。

新作のゲームも、新しい服も、流行の新商品も。

だが、それはやはり自由ではない。

学生の頃と比べ金銭的な不自由は確かになくなった。

しかし時間がない。

時間は金じゃ買えない。


 好きなことに没頭し、羽を伸ばすための時間が。

その羽で大空を羽ばたく時間が。


 私は飛べるはずなんだ。飛んでいいはずだ。それを証明するため、私はビルの最上階へとエレベータを動かした。エレベータは正常に作動し、今まさに私は自由であると実感することができた。

はじめまして。これが『小説家になろう』での処女作となるんですね。新鮮な気持ちです。学生の私に社会人の気持ちを描けたかどうかはわかりませんが、今書けるものは書いたつもりです。評価などしていただけると、励みになるのでよろしくお願いします。

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