「今日は寒いね」「そうね」「冬の風は、音まで寒くて嫌だね」「寒いのは嫌い?」「好きでは……ないかな」「そう、私は寒いのも嫌いじゃないわ」「冬が好きなの?」「冬も夏も、春や秋も。そしてもちろん君のことも
「おれさ、お前のことが好き……だったみたいなんだわ」
「……ハァ!? いきなりなに? てか、好きだったってことは、今はもうすきじゃないってこと? バカにしてんの!?」
「いや、そういうわけじゃ、なくってさ。
自分でもよくわかんないんだよ。 気づいたらお前のことを目で追っててさ。 自分でもキモいと思うんだけど、何か別ごとをしている時も、頭の片隅にはお前がずっといたんだよ。 それで……さ」
「それで?」
「それでふと、『このままずっとこの関係が続けばいいな』って思ったんだけど……だけど」
「だけど? なに?」
「だけど、もしかして『この関係もいつか終わっちゃうんじゃないか』って、『水に浮かぶ氷のように、今のこの気持ちもいつか、溶けて消えちゃうんじゃないか』って! そんな風に不安に思ったんだ」
「へぇ、そうなんだ」
「そう……なんだ。 そうなんだよ……。 俺自身にも、よくわかんない。 自分でも正直、正気じゃないって思う時もある。 だけど。 だけどさ、このままじゃ、いつか後悔……いや、違う。
いつかじゃない。 今、なにも行動していない自分に後悔しているんだ!
お前のことを考えると、胸が痛くなるんだ。 まるで酸素濃度が薄まったみたいに、いくら息を吸っても、吸っても吸っても、息が苦しくなるんだ!
……今まで生きてきて、こんなことは一度もなかった。 多分きっと、こんなことを感じるのはこれが最後だとも、同時に思うんだ。
だからさ……、だから、その……」
「なに? ちゃんと聞くから。 だからちゃんと話して」
「ごめん、好き……だ。 迷惑……だよね、こんな男じゃやっぱり……でも」
「迷惑……じゃないよ。 私だって!」
「嘘だ! だって君は、俺と違って容姿も端麗で、性格も、成績だって俺なんかとは!」
「違うでしょ!? 私、ずっと君がこっちを意識していることに、気づいてた!
初めは見られてると思って、緊張した。 不気味にも感じた! でも、でもさ?
私が困っているときに、君は影から助けてくれた。 私が助けたいと思っている子にまで、手を差し伸べていた。 君の強さは、私のための虚勢だったのかもしれないけど、それでも私には、眩しく見えたよ」
「え、それじゃあ……」
「だけど、君の願いを叶える代わりに、私の言うことを一つだけ聞いて欲しいの」
「お願い? わかった、君の言うことならなんだってする。 願いなんて関係ない。 死ねと言われれば死ぬし、君のことを諦めろと言うのなら……」
「そう。 だったら私から言うことはたった一つです」
「好きです。 私と、付き合ってください」