ダンジョンの中の宿屋
セカンドベルの街から、北にある塔へ向かい。
その道中、スライム討伐祭りを実行し無事成功をおさめた。
そして、セカンドベルの塔へ到着した。
これが、俺の初ダンジョン攻略だ!!
ダンジョンというよりは、塔なんだけどね……。
初ダンジョンの期待と不安を背に、セカンドベルの塔に足を踏み入れる。
スライム(雑魚)との戦闘ばかりで、緊張感にかけていて、ようやく緊張感をもてるのかといった矢先。
全てをぶち壊す、[宿屋]の看板……。
おい、ふざけるな!! 俺の緊張感を返せ。
「あらぁー、お客さん。いらっしゃい」
宿屋の店主が、強引に俺を客にしようと宿屋へ連れ込もうとする。
「店主、ちょっと待ってくれ、何故、ここに宿屋があるんだ?」
その問いに、店主は答えてくれた。
「この塔の一階は、モンスターが出ないのよぉ。
なので、塔の一階をDIYで改造して、宿屋建てちゃったの」
「なにが、なのでだ……」
ついつい、やっちゃいましたの、ノリで言われても困るぞ……。
その状況に、困惑せざる得なかった。
困惑している様子を察して店主が、「安心して、併設で道具屋もあるわよ!!」と、余計な事を言った。
違う、そうじゃない。(苦笑)
「わかった、店主。
今日は、そちらの宿に世話になるから、一度二階へ探索に行かせてくれ。
二階は、どういけばいいんだ?」
店主は、その質問に答えた。
「それを答えるなら、代金は前払いでお願いね。
次の階に行って死なれると、困るし稼げなくなるわ」
と、面と向かって酷い事を、言われた気がする……。
「それで、店主。一泊、いくらだ?」
「お一人様、24ゴールドよ!!」
街の宿屋の4倍か……。高い、高いが仕方ないか。
24ゴールドを店主に渡した。
「まいどありー」と、現金な声が聞こえた。
「お客さんの部屋は、109号室よ。
自慢の、お風呂もあるんだから期待してね」
大丈夫か? この塔の耐震設計……。
余計な事を考えると、頭が痛くなりそうなので、話題を変えた。
「道具屋もやってると言ってたが、何のアイテムを売っているんだ?」
「街の道具屋も驚く、ラインナップをご覧なさい!!」
それで、道具屋を確認したら。
街と売ってるものは同じだった。
ただし、街の道具の値段の2倍という、恐ろしい値付けだった。
恐ろしい商魂を、この店主から感じた。
流石に、これは買えないなと思いっていた矢先、店主が情報を提供してくれた。
「この塔の3階には、毒をかけるモンスターがいるのよ。
毒消し草持ってないと、危ないわよ」と、的確過ぎる助言(情報)を与えてくれた。
ぐぬぬぬぬ……。
「わかった、毒消し草二つもらおうか」
「毒消し草は、街の価格だと10ゴールドだから、この塔のオリジナル価格で一つ20ゴールドね。
更におまけの情報料込みで、一つにつき30ゴールドでいいわ」
「おい!!」
人の足元を見て、更に吹っ掛けてきやがった。
流石に頭にきたので、
「一度街へ戻って、準備しなおしてくる。
ここで準備するよりいいだろ」
「あらー、冗談ヨ。一つ20ゴールドでいいわ」
その値段で、コチラが折れて40ゴールドを手渡した。
くっ、スライムの討伐祭りで稼いだ90ゴールドを、半分以上に減らされてしまった。
(塔に到着するまでに、スライムを30匹討伐しています)
所持金が、90ゴールド → 26ゴールドになった。
あっ、ログが動いた。
新たなる称号[カモ]を獲得しました。
(称号獲得条件:ぼったくり店にて、二つ以上の商品を購入する)
ふざけんな、称号とか知らん知らん、無視だ無視……。
ニヤニヤした表情で店主が、
「まいどありー!!」と、言ってきた。
「それで、二階はどうやっていけるんだ?」
「二階への階段は、109号室のクローゼットの奥よ」
宿に泊まらないと二階へ上がれないクソ仕様を、この店主は作り上げたわけである。
商魂とは、恐ろしいものた……。
自分の部屋の鍵を受け取り。
「ちなみに、109号室は鍵がかからないから」と、店主が言ってきた。
もうヤダ、この宿屋。
「おいっ、寝るときは部屋を変えろ」
「仕方ないわねぇ、108号室よ」
「二階から戻ってきたら、言いなさい。
それじゃ、行ってらっしゃい」
109号室へ、入る……。
109号室への入口は、鍵どころか扉さえなかった。
そのまま部屋へ入り、クローゼットという名の隠し階段を上った。
イライラも最高潮で、俺の顔もきっと真っ赤になっていたことだろう。
そう、この赤いスライムのように……!!
二階へ上がると同時に、赤いスライムから攻撃を受けてしまった。
初手戦闘? 二階に上がった直後の戦闘となり、少しパニックを起こした。
(確実に、宿屋のせいだが……)
「ぬおっ!! 痛ぇ」
今までは、1〜2のダメージしか食らっていなかったが、今回は普通に8のダメージを受けてしまった。
(HPバーの1/10である)
一度痛い目にあい、冷静になれた。
再び飛び掛かって来る赤いスライムを、直接剣で切り落としそのまま撃破。
スライム系のモンスターの飛びつき攻撃は、直線的なので、わかりさえすればカウンターが可能なのだ。
レッドスライムを撃破、10の経験値と1ゴールドを手に入れた。
ファウストの、レベルが7に上がった。
転送されて、初めてのレベルアップだ……。
不甲斐ない部分もあったが、がむしゃらにやってきて初めてのレベルアップだ。
何か感慨深いものを感じ、そして、体に力がみなぎるのを感じとれた。
ログを確認すると、HPとMPが4ポイント、他の基礎ステータスが全て2ポイント上昇していた。
更に、ステータスを確認した。
STR24
AGI24
VIT24
DEX24
INT24
LUK24
ステータスは、全ての数値が24だった。
超バランス型に育ってるじゃねーか、どういうことだ?
このタイプは、器用貧乏・大器晩成型だ。
所謂、序盤に苦労するタイプである。
今後、ちょっとヤバいかもしれないと……。
ゲームではあるが、死ぬことが許されない。
この状況に、一抹の不安を覚えた。
そのまま塔の二階を探索し、この階で、レッドスライムを5匹ほど倒した。
(油断さえしなければ、苦労する相手ではありません)
3階へ続く階段を見つけた所で、宿屋へ戻った。
現在の所持金は、先ほど倒したレッドスライム分のゴールドを追加しても 31ゴールドだ。
あと2回、この宿に泊まると、俺は破産する……。
109号室から、宿屋へ帰ってきた。
「おかえりなさい。ゴールドはがっぽりかしら」
「ぐぬぬぬ……」
レッドスライムから、ゴールドの取得が少ないのを知ってていってるな、この店主。
「はい、108号室の鍵よ」と言って鍵を渡され。
「夜ご飯はいるの?」「お願いします」
「なんと、夜ご飯はサービスよ」
街の宿屋と同じように、パンと飲み物が入った籠を手渡された。
「あと、お風呂は、109号室の反対にある。
101号室がお風呂よ。
ここの共同浴場は混浴なの、おにぃさん嬉しいでしょ」
よしっ!!と小さくグーを握った。
ようやく、この宿の有用性を理解できたよ。
期待に胸を膨らませ、自分の部屋へ入り、速攻で共同浴場へ向かった。
しかし、誰もあらわれなかった……。
…。
……。
チッキショー!!
こんなぼったくり宿屋に、泊まる奴いねぇよな。
店主が言っていた、自慢のお風呂は実は、本当にすごかったのだが、混浴の言葉に目がくらみ、一匹のワニには、目に入らなかったようである。
作戦失敗の失意のまま、共同浴場から部屋へ戻り……。
今日も、いつも通り飯食って、ふて寝するか。
あっ、そういえば称号とかを獲得してたな。
確認してから寝るかな。
説明書を開く、称号の説明のページが開かれている。
重いし、分厚いけど便利なのかもしれない。
いや、それは気の迷いだな……。
いつもの説明書DISをしてから、必要な情報を探し始めた。
称号は、ステータス画面で変更可能。
獲得した称号も、ここで確認可能。
ファウスト
レベル7
職業:冒険者
称号:「 空白 」←ココ
称号の獲得条件は不明だが、付けると特殊効果がある称号もあるのか。
ふーん。
俺って、どんな称号取ったんだろ?
[ステータス、称号]
・落ち着きがありません。(小学校の通知表か!!)
(獲得条件:説明書を読まずにゲームスタート)
「そんな、称号作んなよ!!」と、突っ込みを入れてしまった。
・スライムキラー(本当にとってたわ)
(獲得条件:スライムを100匹以上倒す)
セカンドベルの塔攻略オススメ称号とチェックつけてある。
・変質者(ちょっと待て!?)
(獲得条件:街中で奇妙な行動をとり通報を受ける)
「えっ!?通報済み!?」
・変態(俺は無実だ!!)
(獲得条件:初対面の異性に襲いかかる)
・犯罪者(いや待て、流石にこれはない異議あり!!
(獲得条件:初日で、変態称号をとるチャレンジャーな君プレゼントだ!!
「いらねえーーーーーーーー」
・無一文
(獲得条件:初期ゴールドの300を全て使い切り、所持金を0にする)
「初期に、300ゴールドあったの!?あの時、浮かれすぎていた自分が恥ずかしい。」
・カモ(・・・・・)
(獲得条件:ボッタクリのお店で2つ以上商品を買う)
「よし、ステータス:称号 スライムキラーに変更しよう」」
称号をスライムキラーへ変更した。
これ以上起きていたら、私の心はブロークンよ。
もう無理、ふて寝しよ……。