そうだ、冒険に行こう。
ちゅんちゅん。
小鳥達が、私を起こそうとしてくれている。
朝か、まだ眠い……。
あ、あと30分……。
コケコッコー!!
に、ニワトリだと!! 意地でも、私を起こそうとしてくる。
大丈夫、布団を被れば後30分はいける。
……30分経過。
まだ30分はいける……。
ちゅんちゅん。
今更、小鳥等ぬるすぎるわっ!! 今日は休もう……。
ドン!!ドンっ!?
窓ガラスに、2羽の小鳥がバードストライク。
流石に3度寝するのは諦めた。
いやぁ、清々しい朝だな。(白目)
(窓ガラスに鳥の羽がついている……)
小鳥のさえずりとともに、朝のまどろみから抜け出すように俺は起床した。
朝イチの血の惨劇は置いといて、昨日の出来事で重要そうな事をまとめてみた。
1.無職から冒険者へなりました。ただし、仕事はない。
2.ゴールド(お金)について調べる。
3.そうだ、北へ行こう。北にセカンドベルの塔があるらしい。
4.俺の現在のレベルでも塔の攻略ができる?
5.街の人の反応がリアルすぎる。
昨日の出来事をまとめると、こんな感じだろうか。
最初は、職業の問題。
無職に関しては、冒険者という肩書があるので、無職と罵られることはないだろう。
次に、資金の問題だ。
俺がこっちの世界に転送されてから、一回も戦闘をしていないにもかかわらず、お金を所持していた。
必要な場面(宿屋の支払い)で勝手にゴールド(この世界の通貨)が出てきた為、現状をお金を所持している状態を把握することができた。
そうなると、あの分厚い説明書の出番な訳でゴールドについての記述を探した。
説明書は、ゴールドの情報の記載されているページが開いたまま出てきた。
ふむふむ、この世界ではモンスターを倒すと、ゴールドがそのまま手に入る。
システムのログを見ればいくらゴールドが手に入ったか、経験値等の戦闘状況等もログで見れるらしい。
あとゴールドに関しては、アイテムボックスの中で確認可能であると説明書に記載されていた。
[ログ]と単語を発すると、視界に半透明でログが表示された。
全画面ログが表示されて視界が見づらいため、文字列2行分位までログ縮小とイメージしたら。
上手くいった。
ログを辿っていくと、自分がこのゲーム世界に転送されるまでに稼いだ、ゴールドがそこそこあるみたいだ。
ゴールドの件といい、ログの件もそうこの説明書は、必要と思った情報を瞬時に、ページを開いてくれる高機能説明書!?
だが重いし、厚い。
残念、基本的設計に不備があるため高機能とはいえないな。
説明書に、たいしての愚痴は置いといて、ゴールドに関しては理解ができた。
次は、街の人の反応だ。
単なるRPGやMMOなら、道の真ん中で読書しながら発狂しようが、NPCに白い目で見られることはないだろうし。
ギルドのお姉さんに抱きついても、何の問題もないはずだ。
昔やってたMMOゲームに裸パッチを当てて、ギルド職員をガン見する等の業の深い行為をしても、BANされることはなかったから大丈夫だ。
そう、この世界がたんなるゲームならね……。
この世界は、そんなゲーム世界とは違い、街の人が生きている?
各個人で自由に動いて、生活をしているみたいだ。
いやいや、転送っぽい事はされたが、これはゲームの世界だよな……?
街の人は皆、各人AIみたいなものがある? いやそのまま生きてる?
それによって不正などに対しての、自浄作用もあるという所だろうか?
結論からいうと下手な事は、やれないってことだな。
後は、北のセカンドベルの塔に関しては、直接行けばわかるだろう。
装備を整えて、塔への旅へ出発だ!!
俺は部屋から出て、宿屋の入り口のカウンターでチェックアウトをお願いしようとしたら。
宿屋の主人から、「よく眠れたかい。今日も一日やることやってきな」と、活を入れられた。
俺は右手を握り、グッって感じに右手を上げて、やる気をアピールした。
「はい、行ってきます!!」
そうして宿屋から出た。
何故、この宿が人気なのかよく理解できた。
この宿屋は安さだけではなく、立地も抜群に良かったのだ。
宿屋回りに、道具屋、防具屋、武器屋と揃っている。
駆け出し冒険者に人気にもなるわと、乾いた笑いが出てしまった。
先日、転送前に1時間ひたすら、スライム狩りをしていた結果、600ゴールドを所持していた。
宿屋が、一泊6ゴールドだから100回泊まれる。
俺は働かないぞ!! とも考えていたが、今回はレベルという利を活かすべきと考えた。
ゲーム内では、レベルでのステータスの上昇値を利用して、初期装備でスライムを屠ってきたわけで。
装備を整えさえすれば、それほど危険はないのではないかと、定番のRPGならと容易に想像ができた。
まず、最初に向かったお店は防具屋だ。
お店には、初期装備のお約束、木や皮の装備がメインで揃えられていた。
お店の奥の方に、普通に鉄装備もおいてあって、序盤からこんなに強い装備を置いていてもいいのか? と疑問を持ちつつも。
身を守る為に、極力良いものを買いたいところである。
装備を見てまわり、最初に目を引いた装備があった。
鉄の鎧……450ゴールド
これを買うと確実に、初期装備のバランスが悪くなる事請け合いだ。
よし、買うわけではないが……。
試着を、させてもらおう。
店員さんに、頼み鉄の鎧を試着させてもらったが。
うっ……、動けない。
店員さんに、笑われてしまった。
「お客様ですと、そうですね。
同じ鉄製でも、こちらの鎖かたびらがオススメですよ」
鎖かたびら……280ゴールド
試しに試着したが、問題なかったので購入。
次に、盾だが革製や木製の盾で防御ができる気が微塵もしないので、盾は小さめの鉄製のスモールバックラーを140ゴールドで購入。
最後に、頭は皮の帽子を70ゴールドで購入した。
店員が元気な声で、
「ありがとうございました」と言ってくれて、防具屋を離れ、次に武器屋へ移動した。
「よっ!!冒険者のにーちゃん。武器こそ冒険者の命だぜ、良いもの買ってくれよ」と、入店した直後に声をかけられた。
あっ、防具屋で使いすぎたかも……。
所持金が、110ゴールドしか残ってない。
武器屋で一番気になったのは、
鉄の剣……320ゴールド
資金が足りないので、当然買うことはできない。
後ろ髪ひかれる感じはあるが、違う装備を探そう。
まずは、武器の種類から選ぶか。
ナイフだと、リーチが足りないため、被弾の確率が増えてしまうので、できれば現在の初期ナイフから装備を切り替えたかった。
「このナイフを、下取りでいくらで買い取りしてもらえますか?」と、聞いてみると。
「30ゴールドって所かねぇ」と、店員から答えが返ってきた。
今、選択できる装備で、候補になる装備は二つだ。
銅の剣……100ゴールド
銅の槍……110ゴールド
この二つの武器が、妥当な選択だと思われた。
さて、どちらを選ぼうか……。
道具屋に行かないのなら、槍一択だが、所持金(140ゴールド)も少ないし、道具も揃えたいので銅の剣を選んだ。
「まいどあり。にーちゃん、装備品は装備しないと効果が出ないんだぜ、気をつけな」
RPGでよくあるお約束の台詞を言われてしまった。
そんな事言っても、すでに防具は着てるし、武器も持ってるし装備してるだろと思っていたが。
装備欄を確認したら、装備扱いになっていなかった。
あ、あぶねぇ……。店員さん、ありがとう!!
装備欄に装備を付けてみたら、今までより装備が体に馴染む感じがした。
鉄の鎧を装備できなかったのは、これが理由だったのか?
反省しながら、道具屋へ向かった。
道具屋では残り40ゴールドで、回復剤を買えるだけ買った。(5個)
よし、所持金はぴったり0ゴールド……。
無一文になってしまった。
お金がないのは、寂しさを感じる。
視界の下の方にログに、[無一文]の称号を、手に入れたと表示された。
称号? なんじゃそりゃ?
そんなものは後だ後、スライムから逃げた。
レベル6冒険者、今こそ憎きスライムにリベンジだ!!
街の入り口まで移動して、門番のオッチャンを見つけた。
「オッチャン見とけよ、俺の実力見せつけてやるよ!!」
(現状が理解できると、急に強気になる人いますよね主人公はそのタイプです)
「まぁ、無理のないように頑張りな」と、オッチャンから応援してもらった。
俺は街の門を出て、北を目指すことにした。
「さぁ、スライム出てこいや!!
俺のデュランダル(銅の剣)が火を噴くぜ」と、ポンコツ過ぎる、ロールプレイをしていたら。
ズ、ずるー。体を引きずるような音をさせながら、2匹のスライムがあらわれた。
え、複数? どうしよう……。
(少しでも状況悪くなると、日和る人っていますよね主人公はそのタイプです)
仕方ない、戦闘開始だ!! と、考えている矢先に、スライムAが強襲してきた。
スライムの急な飛びつきに、ビックリして体の反応のまま、スモールバックラーでスライムを叩き落した。
叩き落されたスライムに、スタン判定が入りスライムが足を止めている。(足ないけど)
チャンスだ!!
そのまま、剣をスライムAへ突き刺す。
スライムAが消え去った。
スライムBが、こちらの様子を見ている。
一匹なら大丈夫だ、スライムに攻撃を加えた。
スライムBが消え去った。
スライムの群れを倒した。
ログに4の経験値と6ゴールド獲得と表示されていた。
600ゴールド持っていた俺は、スライムを200匹倒していたのか!?
(ここで盛大に勘違い、初回プレイボーナスで300ゴールドはプレゼントされています)
はははは、俺の事はスライムキラーとよびたまへ等と、独り言を言いながら全力で調子に乗り始めた。
普通なら絶対に失敗するパターンだが、スライム以外のモンスターは出てこなかった為、失敗しなくてすんだ。
モンスターを狩りつつ北へ進むと、セカンドベルの塔が見えた。