冒険者登録
ん!?
「おっちゃん、何でここにいるんだ? それとここは何処だ?」
目が覚めたら、そこにはオッサンがいたという。
ある意味、最低な目覚め方をしてしまったが、居るものは仕方ない諦めよう。
「いやな、仕事が終わってギルドに報告に向かう最中、大きな本を持って発狂する不審者が出た」
さらにオッサンは、話を続けて、
「ギルドの案内に発情して、襲いかかった変態が、一撃でのされてギルドの休憩室で、寝てるときいてな。
不審な人物を街に入れた身としては、気になって確認にきたら、その犯人がにーちゃんで、自分の見る目のなさを後悔していたところだ。
その責任を持って、お前を捕縛するつもりで、待っていた」
オッサンは椅子から、立ち上がろうと体を起こそうとする。
え!? ちょっと待って、俺は無実だ、冤罪だ!!
「誤解だ、オッチャン聞いてくれ。俺は無実だ」
オッサンは即座に、「犯人は皆そうやって、言い逃れをしようとする」と即座に、俺の弁明の言葉はつぶされた。
「おっちゃん、頼むからアンタが信じた人間の話だ、一度でいいからしっかり聞いてくれ。
俺は、そこそこいい生活をしていてな。多少学もあり、おっちゃんが知ってる通り多少はレベルがある」
相手の同情を誘うならここしかない……。
「そこで、多少無職というものを満喫していたら。親に追い出された」
多少の脚色は、仕方あるまい……。このオッチャンには無職ネタの方が効きそうだ。
「それで、俺の持ち物の中に、その旨を書かれた紙を見つけてな、それで発狂してしまい。
それを笑われギルドに駆け込んで、日頃の運動不足がたたり息切れを起こして、気を失いかけて倒れ掛かった所に、ギルドのお姉さんに変態と勘違いされ殴られた」
「お、お前、そんな恥ずかしい事、よくもまぁ言えたもんだな。
ギルドの姉ちゃんもとっさに手がでたと言ってたし。解った、そういうことにしといてやる」
そして、今までの無駄な努力を壊す一言が、おっちゃんから告げられた。
「どっちにしろ、ギルド嬢に抱きついた程度じゃ、ギルドには酒場も併設されてんだし酔っ払いの戯言で終わって、一日位、牢屋に収容されて出所だろうよ。
それなのに、お前は自ら自己評価を下げていきやがるな」
えっ、そんな処罰軽いの?
俺の全力の弁明はなんだったんだ。
あぁ何処かに、逃げ出したい……。
苦悶の表情を浮かべる俺を見て、おっちゃんが笑いを隠そうともしない。
「プククク……。
そんな恥ずかしいことも、平気で言えるってのは、にいちゃんが素直なんだろうよ。
ギルドから暴れそうだったら、捕縛してくれと頼まれたが、問題なさそうだな。
早くギルドの受付して、宿でも探しな野宿になるぜ」
それから俺は、オッチャンに誘導されて、ギルドの休憩室から、ギルド受付へ移動した。
そして、ギルド受付の前に着いた。
「にいちゃん、早く手続きを済ませてしまいな」と言葉を残し、オッチャンはこの場を離れていった。
「あっ、はい。ありがとうございます」と、オッチャンにお礼を言った。
「次の方どうぞ!!」
ギルドの受付さんに、順番を呼ばれた。
俺の順番みたいだな。
受付の前に立つと、入り口にいたお姉さんが受付をしていた……。
おのクソオヤジィ、わざとだな。
オッチャンは、コチラの様子をみて、ゲラゲラと一人で笑っている。
「あっ、あなたは昼間の……」
そこで黙られると、結構辛いんだがな……。
そのまま、お姉さんに俯かれてしまった。
「先程は、すいません。
普段の、運動不足がでちゃって、いざ走って見たら息切れして、足元がふらついたんです。
決して、お姉さんに抱きつこうとしたわけじゃないんです」
と、正直に言ってはみたが、 「はぁ……」と気のない返事が返ってきた。
微塵も、信用されてないみたいだ。
「ほんと、ごめんなさい」
バツが悪そうにしていると、お姉さんもクスクスと笑っていた。
「こちらも、思いっきり叩いてしまって、ごめんなさい。
こんなところで話しても、話が進まないから、今日は何の用?」
と言って、話を切り替えてもらえて助かった。
「冒険者登録を、お願いします」
お姉さんは書類棚から、用紙を取り出し。
「はい、この書類にサインしてね。
あなたはファウストさんで、ギルド未登録のレベルは6ね」
お姉さんに、名前とレベルを言い当てられた……。
そして、そのまま注意を受けた。
「あと、あなた。職業とレベルの開示、してると不用心だから。
冒険の際は、隠しておいた方がいいわね。
【ステータス】の部分に変更できる機能が、あるから変更しておきなさい」
と、細々とした事を教えてもらった。
職業と、レベルをオープンにしてると、何かと拙いらしい。
レベルが高ければ、悪意のある人間に対しての威圧にもなるが。
低レベルの人間が、レベルと職業をオープンにしていたら、カモがネギを背負って歩いているようなものだと、注意された。
この世界は、山賊とかが出るのかな?
と思いステータス欄を開き、レベルと職業の開示設定をOFFにした。
「あなたは正直者みたいだけど、事実をそのまま伝えるだけじゃ冒険者として痛い目にあうと思うの。
今後は、気を付けてね」と、受付のお姉さんに心配されてしまった。
書類の項目欄に名前を記述して指紋を取ったら、冒険者登録が完了した。
これで無職から、おさらばできる。
「これで、ファウストさんの冒険者登録は完了したわ」
お姉さんは、ギルド証をテーブルに置いた。
そして、そのまま驚愕の事実を伝えてもらった。
「このギルドでは、主に生活の為のクエストは請け負っていないの。
主に冒険者登録と酒場としてが主な仕事なの」
え? 仕事がないなら、無職と変わらないじゃないか。(涙)
と、嘆いていたら。お姉さんが一番重要な事を伝えてくれた。
「このギルドから、冒険者の人に、[与えるクエストは、ただ一つ]。
モンスターを倒し己を磨き、北にある【セカンドベルの塔】を踏破しなさい。
そうすれば、ゼウス様より冒険者の加護が貰えるわ」
そして、受付のお姉さんは、続けて助言をしてくれた。
「レベル10もあれば、塔は確実に踏破できるはずよ。
あなたは、すでに6レベルだし塔を踏破する力はあると思うわ。
あと、冒険者は色んな武器防具を自由に、装備することができる職業よ。
塔へ行く前に町で装備を揃えるといいわ」
うん、後半はなんとなくわかる。ゲーム特有の誘導ってやつだよな……。
RPGあるある、次の目標が勝手に決められてしまった。
「わかりました、北のセカンドベルの塔ですね」
推奨レベルまで教えてもらえたし、この辺りは、ゲームの世界なんだろうと納得した。
「今日は暗くなる前に、ギルド前大通りの途中にある宿屋で休みなさい。
あの店は、駆け出し冒険者に人気の宿だから、割と安値で泊まれるわ」
ギルドお姉さんに、手続き終わったからはやく帰れという感じではなかったが、宿の心配をされてしまった。
「あっ、はい。それでは」
俺の前に、置かれたギルド証を受け取って受付を離れた。
門番のオッチャンも見当たらないし、言われた通り宿屋へ行ってみるか。
夕方になり辺りが、多少暗くなってきたが、歩くのに支障はない程度だ。
夜に近づき暗くなってきた事もあり、通りにいた人達は少なくなっていた。
ギルドに来る、途中に見かけた。
昼間は開いていた、お店等も閉まっていたので、宿屋へ急ぐにした。
初日から野宿は、勘弁したい所だ……。
ギルドの大通りを歩いている途中、受付さんに教えてもらった宿屋があった。
(この宿屋は、入口とギルドの丁度中間あたりにある)
宿屋に入ると宿屋の主人が、
「いらっしゃい、一人一晩6ゴールドだよ」と、入口のカウンターから話しかけてきた。
「あっ、はい。お願いします」
会話の流れで、返答はしてみたが、この世界のお金を持っていない。
どうしようと考えていたら、手元に6ゴールドが現れた。
その6ゴールドを、宿屋の主人に渡すと。
店の主人が、
「まいどあり、風呂に入るなら、ここの通路をまっすぐ一番奥の所に共同浴場があるから、タオルや部屋着は部屋にあるからそれをつかうといい」
次に、部屋の案内を受けた。
「アンタの部屋は209号室だ、二階への階段を上って右手側にある部屋さ。
それと、食事はいるかい?」
と、質問されたので、首を縦に振って、「ハイ」とだけ答えた。
そしたら、パンと飲み物が入った籠を手渡された。
「あと、これが部屋の鍵だ」
カゴに続けて、鍵を手渡された。
「あっ、どうも」
鍵を受け取ったので、借りた部屋へ行くことにした。
今日は、なんか疲れたよ風呂入ってメシ食って寝よう。
気になった事は、明日考えよう、そうしよう。
この後、風呂に入って眠りについた。
(ちなみに、共同風呂が混浴でラッキー展開はなかった)