転送屋移転計画その2
塔に入ると、宿屋の看板があった。
そう、宿屋の店主の努力の結果、塔の一階は宿屋が出来上がっているのである。
「やぁ、店主久しぶりだな」
「久しぶりじゃないわよ、たまにココ通って行ってたじゃない。
ものすごいスピードで」
「あぁ、確かに……」
確かに、ダンジョニアからセカンドベルまで、新記録を狙う位に全速力で駆け抜けていたなぁ。
「その件は置いといて、今日は、客としてきた。
2名だ、部屋は別々でお願いできるか」
「あらぁ、今日はお客さん連れてきてくれたのね。
解ってると思うけど一人24Gよ。代金は前払いね」
エミリーが、えっ高いって、表情をしている。
俺は48ゴールドを 店主に渡した。
店主に各自、部屋を案内され朝になったら宿屋の入り口に集まる約束をした。
お互いに話をしたあと、各自個別の部屋に向かった。
この、宿屋には自慢の風呂があるのだ。
当然のごとく、[クリア]の魔法を使わなかった。
部屋に向かい荷物を置き、男の浪漫に忠実に従い混浴風呂へ向かうのだった。
そして、風呂の中には一匹のワニ(隠語です)がいた。
獲物がこないかと、じっと待ち構えている。
脱衣室の扉が開いた、女性の姿だエミリーだ。
[クリア]の魔法を使わなかったので、汚れ等も気になったのだろう。
これは、混浴だから 仕方ないんだ。
言わば事故みたいなものなんだ……。
曇りガラス越しに、女性らしい肌色の丸みのあるラインが浮かびあがる。
出る所が出ているのがガラス越しにも見て取れる。
一匹のワニ(隠語です)は、ガラスの向こう凝視している。
このガラス扉が開けられるのを心待ちにして……。
曇りガラス越しに肌色の人影が近づいてくる。
く、来る。前回の雪辱を……。
ガラッ。ガラスの扉が開かれる……。
キターーーー!!
と思ったが、瞬間で真顔になった。
全年齢バリアである……。
謎の光がエミリーの体の重要な所を隠している。
ふ、ふざけんなぁ……。(涙)
全年齢推奨かよぉぉぉ。
R-15いや、R-18にしとけよぉぉぉ(血涙)
こうして、一匹のワニの目論見は失敗に終わったのであった。
「キャー」と、叫びを上げてエミリーが風呂場から出て行った。
そのあと、俺は全力でエミリーに謝罪をする羽目になったのは言うまでもない。
そんな感じで、その日は終わった。
翌日、宿屋の入り口に集まった二人。
俺の第一声は、「なんか 、すまなかった」と、エミリーに言った。
「あれは、事故ですからね。
ファウストさん、あなたはなにも見ていない。いいですね」
エミリーには、混浴だったための偶然の事故だった、昨日の謝罪では事故という事にしておいた。
「あらぁ、お風呂で色々とお楽しみだったみたいね」と、宿屋の店主が首を突っ込んできた。
俺はすかさず、店主の話を打ち切り……。
「店主、世話になったな」
もう、何もいうなと……という意味を込めて、店主にお金を100ゴールド握らせた。
二度と、この宿屋使わないと心に決めたのであった。
セカンドベルの塔自体の攻略は、[ファイアランス]の単発のみで突破できるため簡単ではあったが。
エミリーの体力と相談しながらの道中の突破であったため。
塔の攻略に最短でいって、3時間程必要とした……。
(ファウストのみなら、MAPの開放も終了しているのでモンスターをガン無視して、全力突破でいけば長く見積もっても20分もあれば攻略する)
丁度、塔の攻略が終わるのが昼過ぎであった。
塔を抜けた後の洞窟で、昼食をとる事にした。
俺は、簡単な食事で済ませようと思ったが……。
エミリーに、「料理に使える 材料ないですか?」と、聞かれ。
「あるよ、いろいろ」と、答えておいた。
アイテムボックスに、大量の食糧を準備しているのだ。
キャンプの際に調理するので、食材は大量にある。
食材を適当に出して見せると、
「この材料なら、 シチューでも作ろうかしら。
パンもあるみたいですし」と、料理を作ってくれた。
しかも、非常に美味でした……。
俺達のPTでのキャンプだと、ユキが料理当番の時は美味しいのだが。俺を含めジョンとリー君の場合は、簡単、安心、安定な感じの料理しか出てこない。
結局は男三名は料理の腕はイマイチということだ……。
腹ごしらえも済み残りは、ダンジョンニアの街へ向かうだけだ。
そこから、4時間以上かかったが真っ暗になる前には、無事に街へ到着することができた。
あぁ、そういえば。
ダンジョニアに入るための審査あったなぁ。
出るのは無料なのに、入るのは有料なんだよなぁ……。
俺とエミリーは順番にならんで、自分らの順番が来るのを待った。
「次の方、どうぞ」
エミリーも一緒に引っ張って、
「連れです。一緒に対応お願いします」
「通行料一人、30ゴールドだよ」
二人分の通行料、60Gを審査の人に渡した。
「俺は、冒険者だ」
名前、職業、レベルを表示した。
「赤魔導士? あんときのにーちゃんか。
レベル37って強くなったな。
で、そこの連れの女性は彼女かい?」
「あ、いえ。この町で転送屋を開いてもらおうと思いまして。
セカンドベルの街から、スカウトしてきました」と、即答した。
え? エミリーさん!? なんで、そんながっかりした表情してんの?
「この町で、転送屋を開業する。
エミリーです、よろしくお願いします」と、エミリーもステータス欄を開いていた。
エミリー LV10 職業:魔術師
転送屋って扱いは魔術師なのか。
「そうかそうか、これからは、エミリーさんはダンジョニアの住人なんだな。
よろしく頼むよ」と、審査の人は言った。
こうして無事に、ダンジョニアにエミリーを送り届けることができた。
お互いに移動して、汚れたりしたので[クリア]の魔法を使って、身綺麗にして転送屋の予定地に移動することにした。
[コール]を使用し、転送屋の予定地にパーティの皆を呼び出した。
敷地内だったので、皆の集合は早かった。
「この人が、転送屋さん? 転送屋さんって老人じゃなかった?」と、ユキが質問してきた。
「あぁ、その転送屋さんのお弟子さんだよ」
「そうなんだ……可愛い人ね」と、半ば呆れた用に言ってきた。
「この子は転送屋のエミリーさんだ、みんなもよろしく」というと、続いてエミリーが
「皆さん、始めまして、転送屋のエミリーです。
この度は、色々と開業の準備をしていただいたみたいで感謝しています。
これからもよろしくお願いします」と、挨拶した。
「ユキよ。よろしくね」
「ジョン、デース。正義の味方やってマース!」
「僕は、リーです。よろしくお願いします」
と、各自挨拶をしてきた。
「それで挨拶も終わったので聞くけど。
この建物が君の転送屋の建物になるんだけど、広さとかは大丈夫かな?」
エミリーは、色々と部屋の広さ等を確認している。
「十分な広さもありますし、大丈夫です。
でも、居住スペースがありませんよね」
パーティ一同が、「「「「あっ……」」」」と、忘れてた的な声を上げた。
どうするよオイ、あまり荷物持ってこなくていいといった手前、宿屋に住んでくれとは言い難いよな。
……。
…………。
ん〜。あっ、そうだ。
この子は料理ができる。
俺ら、男性3名はほとんど出来ない……。
パーティの為の家の食事を、エミリーに依頼する家政婦さんみたいな仕事をしてもらえたらと考えた。
あいにく、一階の広間と居住スペースは空いてるし、一階を使ってもらおう。
(お風呂は2階の女性用を使ってもらうとして……)
「それなら、提案なんだけど」と言って、近くにある俺達のパーティハウスを指さした。
「俺達、あそこに住んでるんだよね。
それで部屋とかも用意するから俺達に、料理とか作ってくれないかな?
代金も払うので頼めないかな?」と、エミリーに提案してみた。
「なんか住む所を催促したみたいで、ごめんなさい。
その話、お受けしますね。ファウストさん」
こうして、ダンジョニアの街に転送屋が出店した。
それと、俺達のパーティハウスに家事担当のエミリーが加わった。
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ワニっていうのは……。
混浴等の温泉に異性の裸目当てで、来るお客の事。
風呂に入りながら、異性の裸体をじっと見続ける姿が水面から、顔を出し獲物を狙うワニに酷似しているため、ワニって言葉が付いたとか?
パーティハウスの一階の空きスペースは、キッチン+食堂+エミリーの部屋となりました。
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