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勘違い

 ブルーナイフを手に持ち首元に押し付けようとした時、ログが動き出した。

 [ユキ]さんから[コール]です。

 えっ!? ユキはさっき、死んだんじゃ……。


 テンション高い声が聞こえる……。


「あいたー、死んじゃったわ。

 あーもう、デスペナきっつい!! レベル1減って、鬼畜仕様だわ」


「えっ!?」


 全身の力が抜ける……。


「いや、何で? お前生きてんの?」


「え? ゲームで死んでも、そりゃセーブポイントで生き返るでしょ?」


「俺は、お前が死んだと思って……」


「いや、死んだけど?」と、ユキにあっけらかんに言われてしまった。


「そういう意味じゃなくて……」


 しばらくして、ユキはすべて気づいたみたいで、反応が明らかに変わった。


「んー? そういうことね。

 ファウスト君かなちかったんでちゅね!! ユキちゃん死んで」


 図星を突かれた。


「いやぁ、カウントダウン中に何この人、必死にロールプレイしてんのよと、ちょっとキュンときちゃったしお姉さん。

 ヒロインなのかー私……クスクス」


 俺の中で、何かが壊れた。


「うーーがーーーー!!

 サスケ!!お前は後で説教な!! 覚悟しとけよ」


「あー、はいはい。

 無事に戻ってきなさいね、アンタの事だから、マップ機能しらないだろうから。

 [インフォ][マップ]でマップが、表示されるからそれ見ながら帰ってきなさい」


(インフォメーションはインフォへの省略が可能です)


「おーよ」


 ユキは無事だった、今のところは、それだけでいい。

 あとは、俺が無事に帰るだけだ……。


 この後、めっちゃトレインした。

 討伐数【 0 】。


 運営さん、こいつBANして下さいって、晒される奴ですねわかります。


 11階からの全力ダッシュによる帰還。


「おかえり」


 ユキが、ダンジョンの入り口で待っていてくれた。


「ただいま」と、言葉を返した。


「ねぇ? 思ってたより、早くない?」


「あぁ、それは。……歩きながら話そうか」


 ダンジョンの入り口で叫び声が聞こえる。


「おい!!入口にスライムが集結してるぞ!!」と、やいのやいのと怒号が飛んでいる。


「みんな気を付けろー!!

 スライムが集まって合体したぞ……。

 うぎゃー!!」 と、叫びが聞こえ始めた。


 俺は悪くない、俺は悪くない。


「異様に戻って来るの早かったけど。

 アンタまさか、トレインしてきたんじゃ?」


 ユキが見事に核心をついてきた。


「うっ!!」


「ダメだよートレインは、周りに迷惑なんだから。

 それで一度アンタ晒されたでしょうが」


「今回はMPKはしてないから……」


「そういう問題じゃないの!!」


「はい、すいません」


「ほんと、アンタって何かしらやらかしてくれるわよね。

 いざとなると、手段を選らばないし」


 俺が説教するはずが、何故か俺が怒られている。


「まぁ、お互い疲れたから、今日はやすみましょ。

 また明日!!」


「あぁまた明日。明日は俺が説教するからな」


「チッ、覚えてたか!!あははは。Bye」


 明日は俺が説教してやる。

 覚悟しとけよユキ!!


 そのあと、昨日と同じ宿屋を利用し、昨日と同じ部屋の107号室に通され。

 いつものように睡眠を取った。

 金額は、前日同様24ゴールドだった。(特に意味はない)


 ちゅんちゅん!!

 いつもの小鳥のさえずりが聞こえる。

 あと30分……。


 俺の眠りは、先日同様ユキに妨げられた。


「今日は、アンタのおごりで買い物行くわよ!!

 デスペナ食らってゴールド半減、レベルも1下がったんだから」


「いや、2000ゴールドはお互いに収入あったんだし。

 1000ゴールドは稼いだんだろ?」


「ぬぐぐ、マメな奴め計算してるのかしら。

 私があれだけ活躍したんだから、ご飯くらいおごりなさいよ」


 と、ユキに言われた。


「まぁ、それくらいなら……。

 あ、ご飯の前にさ、これを受け取ってくれないか」


 アイテムボックスから、ブルーナイフを取り出した。


「昨日、最初からこれをユキに渡しておけば、君が死ななくて済んだんじゃないかと後悔してね。

 だから貰ってくれないか?」


 そして、ナイフをユキに渡す。


「あー、うん。貰ってもいいけど。

 質屋ってあったっけ……?」


「流石に止めて、そのネタは俺に効く……」


「やられたことあるんだ」「ノーコメントで」


「まぁ、いいけど」とユキが言った。


 話を切り替える為に俺が、


「まず食事を済ませようか、何か食べたいものある?」


「朝食だし、軽めでいいんじゃない?」


「それじゃ、そこのお店で」


 食堂で軽く食事をし、二人分で30ゴールドを支払った。


 …。

 ……。


「食事も済んだし、次は何を見に行こうか」と、俺が聞いた。


「それなら、決まってるわよね……」


「武器よ(だな)」 と、二人の意見が一致した。


「よし、武器屋へ行こう」


 武器屋へ向かった。


「いらっしゃい。お二人さん、今日はどんな武器をお探しで?」


 11Fのボスに、銅の剣では歯が立たなかった旨を店主に伝えた。


「そりゃ、そうだよ!!

 むしろ、あの階層まで銅の剣は流石に拙いですぜ」と、ハッキリと武器屋の店主に注意されてしまった。


「武器は、冒険者の命ですぜ」


 うっ。


「言い返す言葉もありません」


「まぁまぁ、お客さんに説教してるわけじゃありません。

 武器は冒険者の命すなわち相棒なんですわ。

 多少、値は張りますがね、ガハハハハ。

 お客さんの相棒は、そんな価値なのかいって周りから足元を見られますぜ」


「そうですよね……」


 銅の剣をお店に下取りに出す。


「下取りして、50ゴールドってとこですかね」「わかりました」


 周りを見回して、いい武器がないかと探してみる。

 気になる武器があった……。


 あの鋼鉄ハガネの剣カッコいいな。

 丈夫そうだし、キレもよさそうだ。


 ただ、金額が1500ゴールドする。


 買うと、所持金がほぼ吹っ飛ぶ。

 コイツなら、信頼できるかもな、相棒頼んだぜ!!


 鋼鉄の剣を手に取り、「この剣を買います」と店主に伝えた。


「銅の剣を下取りして1450ゴールドですが、お客さんの話聞かせてもらったし。

 今回は1400ゴールドでいいよ」


「あ、ありがとうございます」


 俺は、1400ゴールドを店主に手渡した。


「まいどありーー」


 ユキも、武器を新調したみたいだ。

 俺がやった武器下取りに出してないだろうな……。


「ユキも武器買ったみたいだけど、二刀でもするの?」


「するよー、アンタにナイフもらったしね。

 忍者の職業は、二刀スキルと投擲スキルあるからナイフは便利なのよ」


 そっか、二刀やるんだ……。


「なら、俺の使ってるこのスモールバックラー使うかい? 一応鉄製だし、そこそこ強度はあるよ。

 それに、さっき武器買ってたから、ゴールド半減で資金的に辛いだろ?」


「ん、なら貰おうかな」


 スモールバックラーをユキに渡した。


「それじゃ、次は防具屋だな」と俺が言った。


 スモール系のシールドだと、受け流しはできても耐えることができない。

 そのせいで、タンクとしての仕事ができなかった。

 次買うとするなら、大きめ盾だ。


 赤魔導士になった時点で、二刀流は出来なくなったイメージがある。

 だから、装備に愛着はあったが、何の躊躇もなく武器と防具をユキに譲れた。


 そんなことを考えてるうちに防具屋についた。


「いらっしゃいませーー」と店主が元気よく挨拶してきた。


 残り823ゴールド以内で、よさそうな盾はどれだろう。


 防具屋の店主に自分の考えている旨と、所持金を提示して選んでもらうことにした。

 店主が、条件に合う装備を探して悩んでいる。


 新品の鉄の盾でも700ゴールド……。


 このあたりになるのかなと思いきや。


「お客さん丁度いいのがあるよ!!

 下取り品で、仕上げ直した商品だけど。

 鋼鉄ハガネの盾800ゴールドでいいよ!!

 ここ最近、下取りしたんだよね、三次職のジョンって人から」


「ジョンって、ジャスティスの人?」


「あぁ、そうそう、そのジョンさん」


 ジョンは、あえて職業をオープンにしてるんだろうな。

 正義だし、ある種の自己顕示欲の強い人なんだな。

 三次職とか、バレバレじゃないか……。


 そういえば、一番で、チュートリアルクリアしてたんだっけ?

 下取り品ってのは、多少抵抗もあるが希望に丁度合うのはこの品だ。


「買います!!」


 俺は、800ゴールドを店主に手渡した。


「まいどありーー」


 残り23ゴールド、あれっ朝はゴールドが、

 いっぱい入ってたのにしぼんでしまった。

 何かを忘れている気がする。

 あっ、昼飯を奢るんだった……。


 すでに残り所持金23ゴールド、宿屋にすら泊まれない。


 その時は、街の外に出て、ゴブリンに犠牲になってもらうしかないとか考えていた。


 ユキから鋭いツッコミが、


「アンタお金大丈夫? 使いすぎてない?」


「大丈夫、大丈夫」(白目)


「大丈夫じゃなさそうね、目が泳いでるわよ。

 朝は奢ってもらったし、装備も貰ったから昼は私が奢るわ」


「マジで?」「マジです」


「真夜中のゴブリンハンターの異名がつかなくて済んだ!!」


「なんなのよ、その異名……。

 それじゃ、お昼いきましょ」


 お昼は、ユキ様に奢っていただきました。


 感謝感謝。


 お店を出た後、


「アンタ新しく装備揃えたんだし、倍働きなさいよ!!」


「ひぃ!?」と、俺は声なきを出してしまった。


 今日は、俺が説教する予定だったような……。


「私、一つ気になってたんだけど。

 アンタ、このゲームの事まったく知らないわよね」


 ぎくっ!!


「私が、死んだ時のあの慌てようとか」


 ぎく、ぎくっ!!


「はーい、ファウスト君、説明書出してみよっか」と、ユキが笑顔で俺の方を見てきた。


「はい、[説明書]」


 ドドーン!!と、効果音が出せそうな位に分厚い説明書が出てきた。

 ジト目で、ユキがこちらを見ている。


「どうせ、そんなことだろうと思ったわよ。

 なにこれ1ページも減ってないんじゃないの?」


「失敬な、10ページ位はよんだわい!!」


「はい、正座」


 即、ユキに正座させられました。


「私とアンタで、やけに温度差あるなぁって思ってたけど。

 これ、デスゲームじゃないわよ。

 デスゲームに巻き込まれたと思って、神様ゼウス殴ったのもあなたかな?」


 くけけけけけ……と、楽しそうにユキが笑っている。

 こうなってしまうと、俺はユキにはかないません。


「すいませんでしたぁーー」


「今日は、夜まで宿屋のホールで勉強会ね」と、ユキが嬉しそうに言った。


「うぐぐぐぐ……」


 6時間かけて、重要な部分をユキにポイントを教えてもらいながら、説明書を読むことになった。


 もうヤダ、この説明書……。


 げっそりなりながら、説明書を読み続けた。

 説明書を読んでいたら、何故か、ステータスが上がったりした。

 これには、俺も驚きを隠せなかった。


 ユキが、無駄に気合いの入った製作者の愛がこもりすぎた気持ち悪い説明書と、言ってた理由も解った。


 説明書を読まない奴には、職業ボーナスや、スキルボーナス、更に称号ボーナスはあげませーん。

 最初から、こんな苦行を読んでもらえること前提で作られているのである。

 ユキが言っていた例えも納得ができた。


 ちなみにユキの称号の、[探究者]は説明書全て読破した際にもらえる称号ボーナスだそうだ。

 INTにボーナスがあるらしい……。

 ユキ、曰くINT1って馬鹿そうじゃないとの事。


 そんな感じでドタバタした一日だったが、装備も揃ったし、色々解った事だし、充実した一日だった。


 だが、俺には今日一番の仕事が残っている。


「ユキさん、1ゴールド貸して下さい」


「アンタねぇ……」


 無事、1ゴールドを借りて、何かを失いながら宿屋に泊まることができた。

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