Bye
ちゅんちゅん。
小鳥のさえずりが聞こえる。
朝だな、もう一回寝よう……。お休みzzZ。
…。
……。
「おはようございまーす。
はい、起きた起きた」
なんでサスケが、いやユキさん貴方がここにいるんだ?
「え、あ、うん、おはようございます。
なんで、ユキさんこの部屋にいるの? 鍵掛かってたよね」
と、当然の疑問を投げてみた。
「あぁ、それ?これ見て」
[パーティ、設定、オープン]
1.ユキ(ダンジョニア宿屋107号室)[PT鍵解除不可]
2.ファウスト(ダンジョニア宿屋107号室)[PT鍵解除可]
と、表示された。
「アンタPT鍵無しにしてるからだけど。
どうせ二度寝からの四度寝までの、お昼までコースにされるのが解ってたから起こしに来たの」
「むぐぐぐぐ、言い返せない」
二度寝をしようとしてたので、完全敗北である。
「そうでしょ!!そうでしょ」と、ユキにドヤ顔された。
「アンタ、私とPT組んでる間はPT内鍵掛け禁止ね。
遅刻連発しそうだし。早く準備して、ダンジョン行くよ」
朝から騒がしいにたたき起こされてしまった。
俺が起きたのを確認したユキは、宿屋を出て行った。
「2度寝は諦めて準備するか」
独り言をつぶやきながら、着替え等の準備を進めて行く。
それはそうと、すでにファウスト君からアンタ呼びになってたんだが。
ユキと俺の格付けが、終了してしまったのか……?
そんなことを考えながら、準備を終えて宿屋を出て行った。
宿屋の前で待つユキに、「早く行くよー!!」と急かされたが、
「ちょっと待って、回復薬買いたい」
ジト目を向けられる、準備位しとけよー的な目ですな。
「言いたいことは非常に解るが、この街に来たばかりだから許して」
「それなら、急いで買いに行きましょ。道具屋に案内するから」
ユキに道具屋まで案内されて、道具屋で回復薬8ゴールドを5つ、毒消し草10ゴールドを2つ購入した。
「それじゃ、ダンジョン行こー!!」
と、ユキが言った。この人ノリノリである。
ダンジョニアの街にある、ダンジョンの入り口まで来た。
入り口の前で、ギルド証を提示して、ダンジョンに入ってOKと許可をもらった。
「いざ、ダンジョンへ!!」と、俺もノリノリである。
ダンジョンに踏み入る前に、ここまではノリノリなの感じでいいが、ダンジョン内では気を引き締めていこう。
「お互いに、初めてのダンジョンだし注意していこう」と、言ってみたが軽い感じで返事が返ってきた。
「はーい」と、間延びした返事がユキから返ってきた。
やはり、温度差を感じる気がする、気のせいだといいが……。
ダンジョン内に入るとユキが、
「一階は、スライムとレッドスライム位しか出ないから。
お互いにチュートリアルクリアしてるから、パーティだし10階位までは大丈夫よ」
と、言った。
その発言に疑問を感じたが、本当に10階までサクサクと進めてしまった。
ど、どういうことなの?
ユキさん、あなた預言者? と、疑問になったので問いかけた。
「ユキさん初めて行くダンジョンなのに、出てくるモンスターの対策解ってるの?」
「それは攻略本の成果よー」と、言いながら照れる感じで、薄くなった説明書を取り出す。
ん? 説明書が薄い?
「ユキさん、説明書薄くね?」
「あぁ、これね。説明書の機能よ。
説明書って、最初ものすごく分厚いけど、読んでいくとそのページなくなるのよ。
もう一度読みたい時ときとかは、ページ復活してるけど、基本的には薄くなるの。
私は全ページを読破したから、目次と契約書位の厚さしかないの。
それで、全ページの読破特典で、欲しい所の情報だけピックアップできる機能があるんだな」
ユキは説明書を俺に見せつけて、
「すなわち!! これはダンジョンの攻略本!!」
ユキに再びドヤ顔された。
さすが、効率厨いや攻略厨か、俺とは違う攻略スタイルだな。
つい本音を口に出してしまった。
「流石だな、サスケは……」
「そうでしょ、そうでしょって、今はユキだって」
1階から10階までの攻略はあっさりと攻略することができた。
ここまで、色々なモンスターを討伐し、経験値も668ゴールド870程稼いでいた。
ユキのレベルも8から11へと上がり、順調に進んでいた。
11階はモンスターの毛色が変わり、アーマー系のモンスターが単体で出てきて苦戦する事になった。
[ウォーキングアーマー]、このモンスターが非常に厄介で、本職ではない自分の魔法では思ったようにダメージが通らず。
それでいて、銅の剣でもダメージが通らない。
通用しているのは、ユキの回避力のみという状況になってしまった。
途中、ユキを回復させるために、盾を持ってタンク役に回るがスモールバックラーでは荷が重い。
ほぼ、防戦という状況になってしまった。
このままでは拙いと判断して「これ以上ラチがあかない場合は、10階へ戻ろう」と、ユキに言って提案した。
「オッケー」と、ユキから返事がくる。
11階の[ウォーキングアーマー]との、1戦でこんなに苦労するとは思わなかった。
10階への降りる階段は、見えている。
逃げるにしても、次の為に打開できる何かを掴みたい。
この一戦に、MPをすべて突っ込むか?
いや、ユキの武器が弱いってのもあるのか?
そうだ、ブルーナイフをユキに渡せば、ワンチャンスあるか!?
「ユキ、スイッチ頼む。
スイッチ後に魔法突っ込むから回避タンク頼む!!
それと、武器を渡すから片手開けといてくれ」
「オッケー」と返事が返ってきた。
俺は盾で防戦しつつも、利き手の銅の剣をブルーナイフに持ち替えた。
「スイッチ!!」と言って、防御役を交代した際にブル―ナイフを手渡した。
スイッチ成功!!
ユキはブルーナイフを片手に、善戦していた。
少しずつだが、モンスターを押し始めている。
「アンタ、良いナイフ持ってるんじゃないの!!」
と、ダメージが通るようになり、ユキ本来の調子が出てきた。
俺は、ファイアボルトを連発しているがMP回復剤は持ってきていない。
つまり手詰まりを起こしてしまった。
MPが回復する為の時間を使い、何かできる事はないかとできる事を考えた。
相手は金属。[サンダーボルト]の方が効くんじゃないか?
よくある弱点設定だが、ファイアボルトを打つより効果的な気がした。
「ユキ!! サンダーボルトを打つから、そのアーマーの上段へ攻撃するのは控えてくれ」
「オッケー」と、ユキは回避タンクをやってくれている。
よし、俺もMPが回復した。
これでダメなら撤退しかない……。
いくぞ!!
[サンダーボルト] をモンスターに放った!!
モンスターに、電撃が落ちる。
その時、ユキが直撃を食らってしまい、思いっきり吹っ飛ばされた。
ユキのHPゲージが危険域を超える。
しかし、攻撃を食らいながらもユキはブルーナイフを投擲した。
ブルーナイフは、モンスターに命中。
そして、[ウォーキングアーマー]を倒した。
ログが流れる……。
ボスモンスター討伐、
「次のボスモンスター復活は、1日後になります。」
ウォーキングアーマーを討伐した。
1000の経験値と1200ゴールドを手に入れた。
ファウストは、レベルが15レベルに上がった。
・ファイアストーム
・アイスストーム
・サンダーストーム
・アースストーム
・MP回復向上
を覚えた。
ユキのとっさの判断で無事ボスは倒せたのだが、格下のAGI型が直撃を受けるというのはすなわち【死】だ。
最悪だけは、免れてくれ……。
「ユキ、大丈夫か!!今回復してやる」
【 5 】
「あー、やっちゃったわー。
あの状態で回復しとけばなんとかなったけど、攻撃しちゃって手遅れみたい」
ユキの頭の上に、数字が出てきてカウントダウンが始まっている。
【 4 】
嘘だろ!? あれだけ効率厨のお前が、選択ミス?
止めてくれよ……。
[ヒール]、[ヒール]、[ヒール]!!
【 3 】
「なんでヒールが効かないんだよ!! お前が死ぬと俺嫌なんだよ。
何のために、ここまで来たんだよ俺」
【 2 】
そんな言葉も虚しく。
【 1 】
「Bye」と、ユキが言ったあと、ユキの姿がそのまま爆散してかき消された。
「う、嘘だろ……おい」
こんなのって、ないだろあんまりだろ……。
最後に、ユキが使ってたブルーナイフを抱きしめ。
俺が最初からコレを渡してれば……。
ユキは、死ななかったかもしれない。
悔やんでも、悔やみきれない。
ユキを巻き込んでしまった。俺が悪いのか……?
一人で、この世界にいるのは耐えきれない。
ごめん、ユキ。俺も、そっちに行くわ。