何故、俺はここにいる?
なんだ、ここは?
目の前には、一面に広がる平原、後ろをみれば、城壁みたいな石壁。
それより、ひと際目を引くのが、西洋鎧を着ている、あのオッサンだ。
ここは、何処だ?
あれは、兵士のコスプレか? ココは、のコスプレ会場か?
いや違う、思い出せ、今日何があったかを……。
そもそも、何故? 俺はここにいる?
とりあえず、最初に自己紹介でもしておこう。
俺の名前は、田中 一19歳。
親からの仕送りで、慎ましく生活している、一人暮らしの大学生だ。
日本内でも、割と多い苗字と長男だからと工夫のかけらもない名前だ。
こんな名前だから、よく聞かれるのだが、兄弟がいるのかと言うといない。
親としては、二人目を作る予定だったが、できなかったのだろう。
そういう理由もあってか、親からは甘やかされている方だと思っている。
ちなみに、趣味はゲーム全般。大概のゲーム機は、買ってもらったので色々とやっている。
そういう事もありゲームの腕には、自信ありって感じだ。
あと好きなゲームのジャンルは、RPGかな。
ああいうファンタジー世界物には、何か惹かれるものがある。
周りからの自分の評価は、俗にいえばゲーマー?
悪く言えば、ゲームオタクってのが順当な評価だろう。
それは置いといて、この前購入した新作ゲームはすでにクリアしてしまったし暇だ。
だからといって積みゲーを消化する気分でもない、俺の気分はすでに新作に向かっているのだ。
また、新しいゲームが欲しいなと考えながら深夜番組を見ていたら、チャンネルを変えたら通販番組ばかり、仕方ないから寝るかと思っていたら。
深夜の通販番組には、珍しくゲーム機とソフトをセットで販売していた。
俺は、内心売れるわけがないと、商品を子馬鹿にしながら番組をみていた。
ただ、商品自体が値段もゲーム機本体とソフトのセット販売にもかかわらず比較的安価で、手軽に買える金額だったので、新しいゲームを、探していた俺は、つい通販番組の電話番号へ連絡を入れていた。
電話がつながった。
「通販番組で、紹介のあったゲームが欲しいんですけど」と、受付さんに聞いてみた。
そのあとは受付さんに電話で、丁寧な対応を受けて、明日には代引きで届くと連絡を受けた。
しかし、通販番組で無名のゲーム機売るとか、本当に笑えるわ。
ネタ位にはなりそうだから、ツイートでもしとくか?
友人から反応ありそうだし。(糞ゲーに、チャレンジ的な?)
しかし、リアルな感覚でゲームが楽しめる? とか言ってたよな。
ゲームのプレイ画面みてたらただのRPGだし、RPG自体がファンタジーの代名詞だしリアルとは程遠いだろう。
RPGでリアルを売りにするとかありえねー。
絶対売り方間違ってるなと、ある意味笑わせてもらったので、ある種の人柱感覚と友人との話のネタにはなるだろうと、商品が届くのを楽しみにして眠りについた。
……。
…………。
「田中さーん、お届けものです」
ん? 朝か、誰か来たみたいだけど、届け物? あぁ、昨日のゲームかな?
そんなことを考えながら、玄関の扉を開けた。
扉の前には、黒いスーツをきた小太りの男が立っていた。
「先日、【ドラゴン&ファンタジー】の、ご注文頂きありがとうございます」
何のことだ? と、少し悩んだが理解が追い付いた。
あぁ、昨日のゲームタイトルか。
オイオイ、色々と人気ゲームが、混じった名前でクソゲー確定じゃねぇかと、内心ツッコミつつ、新作に興味を示している自分がいる事も気づいていた。
確か、オリジナルのゲーム機で、プレイと言っていたよな?
「……で、金額はこうなりまして18,000円となります」
と話半分に聞きつつ代金を支払った。
「後、サインをこちらにお願いします」と、黒いスーツの男がサインを求めてきた。
あぁ、受け取りのサインね。
「ハイハイ、どれにサインするのかな?」
いつも通販なら、小さい受け取り用紙にサインするだけなのに、一枚の用紙が差し出された。
その内容が、【契約書】!? だったがその時は、購入証明みたいなものだろうと、何も考えずにサインした。
黒いスーツの男が、
「それでは、ゲーム機の筐体を設置いたしますので、どちらに運びましょうか?」と、聞いてきた。
「それなら、この奥の部屋にお願いします」
作業着の男二名が、部屋に入り、人が入れるサイズのBOXを設置していった。
これって、防音室じゃないか……。
どういうこと? と状況を飲み込めず、混乱していたら。
黒いスーツの男が、
「それでは、設置が終了しましたので、【リ・アース】の世界を是非お楽しみください。
それと、説明書は必ずご確認下さい。
説明書は、ゲーム内でも確認可能ですので、ご確認お願いします。
それでは、失礼します……」
と言って、作業員の男と一緒に去って行った。
よし、ゲームを始める前に、昨日のツイートの反応は!?
【 0 】
「な、ん、だ、と!! 反応0とか」
いつもは、大なり小なり反応あるのになぁ。
18,000円を突っ込んだ渾身のネタを皆スルーかよ。
仕方ない始める前に、友人の【サスケ】にだけは、メールしとくか。
アイツなら、食いついてくれるだろう……。
3年前からのゲーム内の友人で、サスケというプレイヤーネームで、某MMORPGからの知り合いだ。
ゲーム内で知り合って、話をしていたら割と気が合って3年ほど交流がある貴重な友人であり、ゲーム系の交流サイトを作ってるとかで、ゲームの話題をすると結構ノッテくれるいい奴だ。
サイトのネタに、使われていることが多々あるが……。(苦笑)
サスケには、メール位は送っとくか、何のネタにもならないのは寂しいしな。
〔よう!サスケェ、せっかく糞ゲーチャレンジのツイートしたのに、スルーしてくれて、俺は悲しいよ(血涙)。
通販で、【ドラゴン&ファンタジー】なる糞ゲーが手に入ったんで、ちとやってみるわ。
もし面白かったらサスケにも教えるんで、楽しみにしとけよ~。
一応ここが、[0120-555-xxxx]が通販の電話番号な。
んじゃ、やってくるわ〕
と、メールを送っておいた。
それじゃ防音室みたいな、ゲーム筐体に、はいりますかね。
換気機能と空調機能がついて、ゲーム機ありで18,000円とか安過ぎね?
そんな事を考えながら、ゲームを始めることにした。
ぶっちゃけRPGだから、やることは一緒だし、ゲーム内でも見れると言ってたから。
説明書を見るのは後からでいいよな。
ちなみに説明書が、あまりにも分厚過ぎて、これはブリ〇ニカ百科事典かな?
見紛う分厚さで、ゲームを始める前から、読む気が微塵も起きなかった。
俺は、説明書は後から読むタイプで、それがこんな事に巻き込まれる原因になるとは、その時は、知る由もなかった。
ヘッドセットを装着して、筐体に電源ボタンを押したら。
すぐに、ゲームが起動されたことが、解った。
[ドラゴン&ファンタジー]と、タイトルがディスプレイに表示されている。
タイトル画面に大き目の文字で、プレススタートって、そこらのゲームと一緒じゃないか。
スタートボタンを押したら、次は名前を入力して下さい。
おいおい、リアルとかマジないわ。ゲーム始まっても普通のRPGじゃないかと思いつつも。
名前を、[ファウスト]と入力した。
一という名前から一番、先頭の意味合いと悪魔がかかわりそうな意味がある、お気に入りのプレイヤーネームを入力し、ゲームが始まった。