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ゲームの中のエレノアはリアム王子を愛していたと思う。
そうでなかったとしても、少なくともリアム王子の婚約者であることを誇りに思っていたのは間違いないし、激しく執着していたはずだ。
幼いころより『光』の魔法持ちとしてもてはやされていたこともあって、王子の婚約者という立場も、リアム王子の愛情も、周囲からの憧れや尊敬の眼差しも、すべてが自分のものだと少しも疑っていなかった。
『光』の魔法持ちである自分は誰より特別だと思っていたのだから。
それがヒロインの登場によりすべて覆った。
ヒロインは自分と同じ希少な『光』の魔法持ち。
しかもゲームのヒロインらしく、そのチカラはチート級。
見た目は可憐で可愛らしく、庶民の生まれであることが影響してか純粋で素直で明るい。
少しドジなところがあり、礼儀作法が苦手ではあるが、努力家で頑張る姿がいじらしい。
攻略対象たちは周囲の毅然としていてともすれば高慢にも見える貴族令嬢たちと全く違うヒロインの存在にメロメロになってしまうのだ。
ヒロインの『光』の魔法持ちとしての発覚は15歳と驚くほど遅い。
通常が10歳までに覚醒するのだから、そういう意味でもレアなケースと言える。
ただ、ヒロインは赤ん坊の時に教会に捨てられていて生まれた瞬間に光っていたかどうかがわからなかったこと、周囲に魔法に詳しい者がいなかったことから発見が遅くなっただけということも考えられる。
辺境地の中でも国境の近くに位置する教会で育ったヒロインは、周囲に魔法持ちがいなかったことから、魔法を全く知らずに育つ。
しかしそんなある日、隣国と国境付近で小さな揉め事が発生した。
そしてヒロインの住む教会は国境に近いことが災いし、住んでいた教会が焼け落ちてしまうのだ。
焼け落ちた教会のそばで野ざらしの中過ごすことになった教会に住む人々。
雨風もしのげない、明かりもない中で夜が更けていくことで次第に不安がる教会の孤児たちやシスターを、ヒロインは魔法の光を灯すことで励ます。
その姿を教会復興のため視察に来た辺境伯爵の目に留まったことで、その才が発覚する。
そしてそのまま魔法持ちの子どもがいなかった辺境伯爵の養女となることでヒロインは伯爵令嬢となる。
通常は16歳になる年に魔法学校に入学することになるのだが、15歳で養女となったことから例外的に入学を1年先延ばしにしたため、ヒロインは2年生から1年間だけ魔法学校に通うことになる。
入学を遅らせた理由は、孤児として育ったために令嬢としての礼儀作法など振る舞いがわからず、貴族として入学するレベルには達していないと伯爵が判断したためだ。
遅らせた1年間の間に、ヒロインは礼儀作法などを猛勉強をさせられて、2年生から入学してくる。
学校側としても『光』の魔法持ちに対して無下にできないということで、そういった例外的な入学を許可した経緯がある。
ヒロインの存在を知らないまま過ごす最初の1年間の学校生活は、エレノアの天下だったことだろう。
どんなに小さなチカラであっても『光』の魔法持ちで、王子の婚約者だ。
それが1年後、より強い力の『光』の魔法持ちが現れ、さらには王子の心すらも簡単に奪っていく。
礼儀作法もままならない少し前までただの庶民であったはずの女が、突然現れてあっという間に自分の存在を脅かす。
自分が特別であるということが錯覚だったのだという悲しい現実を無遠慮に突き付けてくる。
エレノアの衝撃と衝動は、ゲームをしている時のヒロインの目線からではまったくわからなかった。
ヒロインと比べて小さなチカラしかないくせに、同じ貴族令嬢なのに、驚くほど傲慢で意地悪なライバルだなと思っていた。
なにより攻略対象たちがバッドエンドで死んでしまうきっかけをつくるのがエレノアなのだ。
何度もバッドエンドになってトラウマを植え付けられた身としては、単純に腹のたつキャラクターだ。
どのルートでも邪魔してきて、虐めてきて、本当にウザかった。
断罪されるラストは胸がすく思いがした。
でも今は自分がエレノアだ。
断罪されるわけにはいかない。
絶対に。
エレノアの立場とヒロインの立場、それぞれの目線で物事を見られる今、うまく立ち回ることができれば破滅フラグを回避することができると思う。
まだ10年あるのだ。
必ず成功させてみせる。
成功させなければ、わたしには破滅しか待っていないのだから。




