プロローグ 幼き日の思い出
トトトトトトトトトトトトトトトトトト・・・・・・・・
小刻みなエンジン音とともに、銀色に塗られた飛行機が大空を舞う。機体には大きく「報國號」の文字。
三機編隊を組んだ飛行機は、その二枚の翼に日の光を受け、宙返りをする。
「一かーい、二かーい、三かーい・・・・・・・・」
わたしは指を折って、その回数を数えた。
飛行機は、しばらくの間大空を飛び回ると、ゆっくりと滑走路に下りてきた。
飛行機から降りてきた軍人さんにかけよる。
「すごいね!魔法みたい!」
いつも見る在郷軍人のおじさんとは違う服に身を包んだ軍人さんは、少しかがんでわたしと目の高さを合わせると、言った。
「魔法でも何でもないよ。一回分かれば、誰にでもできることだ。」
「でも、すごいよ!」
わたしが言うと、軍人さんはわたしにきいた。
「お前、飛行機乗りになりたいのか?」
わたしが大きくうなずくと、軍人さんは寂しげに笑って言った。
「そうか。応援してるよ。」
その時、お母さんの声がした。
「彩音~。どこにいるの~!」
軍人さんが、「行け」とでもいうふうに手を振った。
「ありがとう!じゃあね!」
わたしも手を振って、お母さんのほうに駆け出した。