第十九話 両者相まみえる
わたし―山ノ井彩音は戦艦大和を見送ったのち、神雷特攻部隊を護衛してから神之浦に帰投した。
搭乗員控えで休んでいた時のこと・・・・・・・・・・
「山ノ井一飛曹、岩本兵曹長、長嶋二飛曹はいるか!?」
駆けこんできた上官。
「はい!ここに!」
返事をして立ち上がる。
「至急出撃準備を行え!」
「はい!」
急いで装備を整えると、指揮所に向かった。
基地司令が口を開く。
「先程、戦艦『大和』より、『ワレ敵機ノ空襲ヲ受ク 救援ヲ頼マレタシ』との電報が入った。貴様らには、救援として出撃してもらいたい。それでは、かかれ!」
『はい!』
全員で一斉に敬礼すると、愛機に向かって走り出した。
「回せ―――――ッ!」
キュンキュンキュンキュン・・・・・・・・
「コンターック!」
バタバタバタバタ・・・・・・・!
「チョーク外せ!」
搭乗員たちの声が基地に響き渡る。
「出撃!」
『おう!』
岩本飛曹長が指示を出し、それにわたしたちが答えた。
ヴァラララララララララ・・・・・・・・・!
フルスロットルで滑走開始!下げ舵で機体を水平にしたのち、操縦桿を引く。
ふわっ
わたしの乗った鋼鉄ノ鳥は、今舞い上がった。
俺―アラン・イラトリアスはジャップの戦艦の最期を見届けると、海面に機首を向けた。
「ジャップの奴らを一人残らず殲滅してやる!」
漂流しているジャップに照準を合わせると、機銃発射ボタンを押す。
タタタタタタタタタッ!
ジャップが血を流して息絶えた。
「ヒャッホォォイイ!」
操縦桿を引いていったん離脱。
思えば、あの時俺たちは狂っていたんだ。
「もういっちょやるか・・・・・・・・・」
再び機首を海面に向けると、俺は再び発射ボタンに手をかけた
大和の最期を見届けた俺―高橋克之は、敵機の猛攻にさらされていた。
ヴァラララララララララ・・・・・・・・・!
「来やがった!」
タタタタタタタタタッ!
エンジン音が聞こえ、その直後、俺の周りの海面に飛沫が立つ。敵機の機銃弾だ。
「クソがっ!武器も持たずに漂流しているものを撃つなんて人の心はないのか!?」
ヴァラララララララララ・・・・・・・・・!
「またか!」
水の中に潜って見つからないようにしようと試みる。
でも、いくら訓練を受けてるからと言って永遠に潜っていられるわけはない。
「ぷはっ!」
息継ぎのために顔を出した瞬間、敵機が引き返してくるのが見えた。その翼から鋭い光が放たれる。
(彩音が・・・・・・彩音が率いる零戦隊さえ来てくれれば・・・・・)
俺はここにいるはずのない幼馴染のことを思い出した。
「助けてくれぇぇぇぇ!彩音ぇぇぇぇぇ!」
ヴァラララララララララ・・・・・・・・・!
大和救援にために急ぐわたしたち零戦隊。
わたし―山ノ井彩音は風防の外に目を凝らし、大和らしき艦影を見つけようとした。
《山ノ井一飛曹、見つかったか?》
岩本さんからの無電。
「いえ、影すらありません」
「間に合わなかったか・・・・」
岩本さんがすまなそうにつぶやいたその時、わたしは遠くの海面に敵機が群がっているのを見つけた。
その下には、フネが沈没した時みたいな渦・・・・・・・
(もしかして・・・・・・・・・・)
わたしの背中に悪寒が走った。
(「大和」は・・・・・・・・沈没した・・・)
克之、そして大和の艦魂さんの姿が脳裏によぎる。最後に「ありがとう」と手旗で言った時の笑顔も・・・・・・・・
「この野郎ォォォォォォォォォォォォォォ!」
わたしの口から怒号がほとばしり出る。
《一降下離脱で行くぞ!》
岩本さんが無線で指示を出した。各機がおおきくバンクを振る。
ギュイィィーン!
高度を敵より高くとると、操縦桿を押し倒した。
グァァァァァァァァァァ!
各機のエンジンがうなりを上げる。一機のF6Fに照準を合わせた。
「この、クソどもがァァァァァァ!」
ドドドドッ!
呪詛の言葉を吐きながら引き金を引く。敵機は、火だるまになりながら落ちていった。
《アラン!上を見ろ!敵機だ!》
無線機から聞こえてきたウィルソンの声。俺―アラン・イラトリアスはとっさに操縦桿を引いて上昇した。
ぎゅん!
上空から急降下してきたゼロと一瞬ですれ違う。フットバーを蹴っ飛ばして急旋回すると、そのゼロと向き合った。
そのゼロはほかのゼロと同じように濃緑色に塗られてはいるものの、一つだけ違うところがあった。
それは・・・・・・機体に描かれた桜花・・・・・・
「Witch in Rabaul!!Be ceaful! She is not Turkey!(ラバウルの魔女だ!気をつけろ。ヤツはマリアナの奴みたいな七面鳥じゃないぞ!)」
俺は無線で僚機に言う。
ついに・・・・・この時がやってきたか・・・・・・
「待っていたぞ、お前と戦える日を」
俺は操縦桿を倒すと、忌々しい魔女に向かって吶喊した。




