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第九話 二人のエースの過去

 どこまでも真っ青な南洋の空。すぐそばを飛ぶ二機の一式陸攻。その周りを俺を含め六機の零戦が取り巻いている。

「ん?」

 空の奥で、何かがキラリと輝いたような気がした。

「見間違いか?」

 目をゴシゴシとこするけど、それは消えない。むしろ、どんどん大きくなっている。

 きらきらとした点が、次第に線を結び始め、双発双胴の機影が現れた。

(やべぇ。P38メザシだ!くそっ、ここはあまりアメ公が来ないから油断してた!)

 敵機は何機かずつに分かれて挑みかかってくる。

 陸攻の尾部機銃と旋回機銃が火を噴くが、数機のメザシを落としただけだ。

「くそっ六機じゃまに会わねぇ!」

 護衛の零戦にも一機当たりそれぞれ二機のメザシが食いついてくる。

「散れぇっ!!」

 二十ミリをメザシにお見舞いして、落とした。急いで陸攻のほうに向かう。

(山本長官を!お助けせねば!)

 今回の陸攻は、山本五十六連合艦隊司令長官が、前線視察のために仕立てたものだ。我々には、自分が死んでも長官をお守りする任務が課せられている。

 陸攻の葉巻型の胴体が目の前に迫った。その時。


 ダダダダダダダダダダッダン!


 乾いた音を立てて、メザシのロケット弾が長官機に吸い込まれていった。

「あぁっ!長官!」

 陸攻がジャングルに向かって落ちてゆく。

「山本長官――――――!」

 そこまでで目が覚めた。

「ここは・・・・・・?」

 見慣れた三四三空の搭乗員私室。

「この夢を見たのは、ひさしぶりだな」

 あいつが来たせいだろうか・・・・・

「山ノ井、彩音・・・・・」

 女でありながら予科練に入り、今ではエースパイロット。「ラバウルの魔女」の異名も、上官である笹井醇一中尉を目の前で撃墜されたことも常々耳にしていた。

「エースでありながら、上官を守れなかった。しかも目の前で撃墜された・・・・・か」

 俺と同じだ。

「ラバウルの魔女、か・・・・・・」

      






























「はっくしょん!」

 わたし―山ノ井彩音は、大きなくしゃみをすると、自分の寝台から立ち上がった。

「坂井先輩がまた噂してるのかな・・・・」

 先輩は、わたしを鍛え上げたことを誇りにしているようで、よくほかの人たちに話している。

 トントントン

「山ノ井一飛曹、いるか?」

 菅野大尉の声だ。

「はい、います」

「よかった。ちょっと来てくれないか?」

「わかりました」

 軍服に着替えて外に出ると、菅野大尉がこっちを見ていた。

「ついてきてくれ」

 菅野大尉についていくと、大尉は自分の部屋にわたしを招き入れた。

 近くの椅子を指さし、そこにかけるように言うと、菅野大尉は、反対側においてある椅子に腰かけて、頭を下げた。

「今日は、自分の部下があんなことをしてしまい、大半申し訳ない」

 えっ、もしかして、謝るためだけにわたしを呼んだ!?

「いっ、いえ、そんなことないですよ」

 あんなの大丈夫だし。

「いや、部下がしでかしたことは、上官も責任をとらなくてはならないしな。おやじにも言われたし」

 菅野大尉は、源田大佐のことを「おやじ」と呼ぶ。

「源田大佐はよく処分しませんね。あんなことしたのに」

「まぁな。親父はいつもあんな感じだ。ここは、わけありのが多いからな。おれだってそうだよ。杉田もだ」

「わけありって・・・・・どういうことですか?」

「聞きたいか・・・・・・話しても意味ないことだがな」

 菅野大尉の目には、悲しみの色が宿っていた。それも、とても深い悲しみだ。「自分のなかだけにため込んでいるが、人に言ってもしょうがない。」そう言ってるような目。

「何年か前、神風特別攻撃隊しんぷうとくべつこうげきたいが作られたのは知ってるな?」

 わたしは、黙ってうなずく。

「その最初の部隊、フィリピンの敷島隊の隊長が、俺と同期の(せき)行雄(ゆきお)って奴だったんだ。特攻は自爆部隊だ。関は、立派に突っ込んだそうだよ」

「・・・・・・・・・」

「だがな、特攻の候補に、俺が入ってたんだ。でも、俺はその時、俺はフィリピンにはいなかった。新型の零戦を受領するため、内地に帰ってたんだ!」

 菅野大尉の目から、一筋の涙が流れ、頬を伝った。

「俺がいれば、俺が特攻隊の隊長になっていれば!関は死なずに済んだんだ!」

「・・・・・・・・・」

 わたしは、言葉を忘れたかのように、菅野大尉の話に耳を傾ける。

「それから俺は、特攻に志願した。でも、上層部からの返答は『菅野ハ制空、又ハ直掩』だった。悔しかったよ。あいつと同じとこに行けないんだからな」

 その気持ちは、痛いほどよくわかる。笹井中尉が死んだとき、わたしはこう思った。

(わたしが代わりになって、戦死すればよかったんだ)

 そんなふうに。わたしも特攻に志願したけど、「女だから」という理由だけで却下された。

「そこを、おやじに拾われた」

「源田大佐に?」

「そうだ。おやじはいい人だ。あの人の言葉に、どれだけ救われたことか。それから俺は、特攻に志願するのをやめた。『戦闘機乗りは腕で敵を落とすもの。たった一つの命中で死ぬなど論外だ』っておやじには言われたよ」

 そういって、菅野大尉は笑った。

保信「保信とぉ!」

春音「春音とぉ!」

みやび「みやびの~!」

三人『次回予告外伝番外編~!』


♪波をかき分けどんぶらどんぶら進むのよ (ソレ!) 風を感じて明日もきっといい天気

水平線からお陽様が 上って沈んで夜戦かな

艦娘音頭で艦隊とお月様ほら踊ってる 艦娘音頭で提督と海の底まで照らしてる!

♪雲を追い越し・・・・・・・・・・


春音「一つ聞いていい?」

みやび「なんですか?」

春音「最近までこのコーナーのBGMって、旧軍の軍歌だったことが多いよね。それなのに、なんで今回はこんな音頭なの?」

保信「最近、作者さんが『艦隊これくしょん 艦これ』にハマってるらしくてね。次のBGMは『加賀岬』にする予定らしい。」

みやび「確かにこの前もTwitter見ながら『赤城さんはよく食べるな』とか『加賀さんと瑞鶴はいいな~』とか言ってましたしね。」

春音「わたしたちも今度やってみる?」

保信「僕は『第二次瑞雲祭りinよみうりランド』に参加してきたけどね。」

春音「確かに大戦機ファンなら行っておきたいよね」

みやび「そろそろ次回予告に入りましょう!行きますよ!」

三人「次回!『源田実』!お楽しみに~!」



今回のBGMは、「艦娘音頭」でした。


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