2/2
第一章 旅立ち
僕は今、ローカル線の中にいる。
手荷物は小さい鞄ひとつ。
その中には、最低限の物と一通の手紙、そしてセピア色と化した写真が入っている。
写真の中では、女子高生がやさしく微笑んでいる。
手紙の差出人はその女子高生からの物だ。
手紙はこう書かれている。
「約束の日だね。待ってるね」と、それだけがそえられていた。
場所も日時も書かれていなかった。でも僕にはすぐにわかった。
「今日がその日だ」と・・・
そして早朝にその場所へ向かうべく家を出た。
彼女とは高校卒業以来あっていないが、目的地に近づくたび、セピア色と化した思い出が色づきはじめた。
そう、僕は今向かっているのだ。
「いつか夢見たあの場所へ・・・」