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掌編小説集7 (301話~350話)

まだ頑張りなさい

作者: 蹴沢缶九郎

朝、交通誘導の仕事を終えた田中は、自宅のある木造アパートに帰宅すると、さっそく毛布にくるまった。季節は冬、凍えるような寒さは田中を容赦なく襲うが、それでも彼が暖房機器の一切を使わないのは、電気代節約の為である。


自身の仕事仲間であり、先輩でもある四つ歳上の高橋が仕事中に倒れ、搬送先の病院で亡くなったと聞いたのは昨夜の事だった。

雪の降りしきる深夜、高橋の辛そうに誘導灯を振る姿が、田中の脳裏に蘇る。元々心臓に持病を抱えていた高橋が倒れたのは、なるべくしてなったと言える。しかしそれを差し引いたとしても…。

いつか自分も高橋のようになってしまうのではと田中は思った。だが、生きる為には働かなければならないのだ。



今年で(よわい)九十になる田中は、電源を入れた携帯ラジオから流れる曲を子守唄代わりに、仕事の疲れから、いつしか深い眠りへとついた。


「…続いてのニュースです。政府は年金支給開始年齢を、現在の九十五歳から百歳に引き上げると発表。尚、年金受給資格試験の導入も…」


誰も聞いていないラジオは、静かに、ただ淡々とニュースを伝えていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] このお話を読むのも数回目です。 友達にも「読んでみて」ってススメたら やっぱり「ええ〜っ!!」って笑ってました(笑) 思ってた通りのリアクション。 少々ブラックだけど、何度読んでも面白…
[一言] みにつまされる話題でした。このままでいくと、将来、もっと年金支給年齢があげられてしまうでしょうね。現実で、70歳で支給とかありそう。
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