Lamplight of revolution -2-
警報が鳴り響く。
真っ白な室内の所々に設置された赤い警光灯が回転している。人々は眠たい体をなんとか引きずり、各棟の襲撃時避難用シェルターに身を寄せ合っていた。
無理やり押し込まれ、自由に身動き出来ずフラストレーションが溜まっていく。その中に晩崎鮮陽の姿もあった。
あらゆる事態を考慮し設計された避難用シェルター。そのはずだったが、見渡す限り人混みで埋め尽くされているこの状況には、設置された空気調節器が役目を果たせずにいる。
いくら暖かさが恋しい時期とはいえ、こうも他人の体が密接していては気持ちが悪くなる一方だ。
部屋の隅に設置された一台のテレビに皆が目を見張らせている。映像は自分達の住む天門霊送機関を上空から、恐らくヘリコプターに搭乗したカメラマンが撮影しているものだろう。
「––––––!」
晩崎は思わず口を押さえる。
彼女の目に映ったのは、天門霊送機関外周部外壁あたりから立ち昇る黒煙だった。それだけではない。美しく造形物のように整えられた立方体の純白の建物が瓦礫と化し、見るも無残な光景が広がっていた。
『Z地区の被害が甚大です!––––––ヴェフパークも次々と出動しているようですが、これは犠牲者も…––––––』
テレビから聞こえる音声が目の前の惨状を可能な限り伝えていた。
だがその時、
今迄に聞いたことのないほどの、一瞬それが爆発音なのか分からなくなるような、酷いノイズが部屋に響き渡った。視聴者の何人かは自分の耳を塞ぐほどの大音量。そうでない人もジャーキングのような反応をして見せた。
部屋がこれまでにないほど騒ついたのはその直後だった。カメラは誰もが予想し得なかった光景を映し出した。
外周部からは一番距離のある中央棟。そしてその中で最も高高度にあるガラス張りの一室。
侵略する敵の手から最も遠い位置にある筈の零地区が敵の手に落ちた瞬間だった。
◆◇◆◇◆◇◆
「ほう」
目の前のテレビを見て、男は少し驚いた様子を見せた。
暗い部屋の一室。開け放った大きな窓の向こう側には月がその姿を現し、優しい明かりを部屋に差し込ませるとともに、静かな水面に反射させている。
心地良い風が紅色のカーテンを揺らす。
「あやつら。本当にやりおったわ」
男は八時間前のことを思い出す。一人の女性と一人の女児と交わした言葉を。
––––––『明日という一日が、革命の日となることを祈っていて下さい』––––––『ママと相談したの!パパに何か誕生日プレゼントって!』––––––
「––––––ありがとう。二人とも」
男は目を瞑りながら、そう呟いた。
望み通りの結果になるかどうかは、確信が持てなかった。
この映像を目にするまでは––––––。
「この蝋燭に灯った火を、消しに行けばいいんだね。友梨鈳」
男は声を荒げ、扉の外の者の名を呼んだ。
扉が開き、現れたのはスーツ姿の男性。椅子に座る男の側まで近づく。そしてテレビの映像を見るや否や、
「––––––これは、私も気合いを入れませんと」
苦笑いをしながらそう言った。
「一九九八年三月二十日は、記念すべき日として後世に語り継がれるだろう。世界を正しい方向へ導いた、革命の火を灯した一日として」
男はおもむろに立ち上がり、深呼吸。
「さあ。燭台をひっくり返しに行こうか」




