表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

0 終わりの始まり

 気が付いたらワタシはそこにいた。


 気が付いたらセカイが見えていた。


 気が付いたらオトが聞こえていた。


 気が付いたらヒトリだった。



 ソレが何かは知っている。


 なぜ知っているかは知らない。


 ソレが悪いものであるとは知っている。


 なぜなのかは知らない。


 ワタシがここにいるのは知っている。


 なぜかはシラナイ。



 モウ、ナニモミタクナイ……。


 モウ、ナニモキキタクナイ……。


 モウ、ナニモカンガエタクナイ……。


「モウ、ネムリタイ」


 そう呟いて、私は永遠の眠りについた……はずだった。



 ◇



 目が覚めたらワタシはそこにいた。


 目が覚めたらセカイが見えていた。


 目が覚めたらオトが聞こえていた。


 目が覚めたらヒトリじゃなかった。


 そこには少女がいた、ワタシが今まで見たどんなものよりも眩しく、どんなものよりも明るく、どんなものよりも綺麗だった。


「あっ! やっと起きた! まったくもう、ねぼすけさんですねっ」


 その少女は笑った。とてもうれしそうに、とても楽しそうに。



 ◇



 それから、私はその少女とたくさんのお話をした。


 何時間とも、何日とも、何か月とも、何年とも感じられる時間だった。


 その時間こそが私にとっての幸せであり、私にとっての全てだった。



 …………そして、世界は終わった。



 崩れ落ちていく世界を見ながら、私のせいなのだとアレは言った。


 なぜなのか、シラナイ。


 そう塞ぎ込む私を少女は護っていた。


 これまでもそうしてきたように、今も。


 あんなに小柄だった少女の身体が、今はとても大きく見える。


 それでも、アレには勝てない。


 そもそもアレに勝ち負け等ない。


 私は……最期の瞬間を覚悟した。


 でも、この少女には生きていて欲しい。


 少女ならば、それができることを私は知っている。


 少女が話してくれたからだ。


 少女ならば、それをしないことを私は知っている。


 少女と話したからだ。


 少女ならば、どうするか私は知っている。


 …………知りたくなかった。



 私が先にいなくなれば、少女は生きるのだろうか。


 そう思い、私は前に出ようとするが、少女は私を止めて、私の肩を掴んで言った。


「ごめんね、どうか無事で……」


 言葉が終わる前に、少女に死が迫ってきていた。


 あらかじめ定められていたように。既に決定しているように。


 死が彼女に触れそうになる……その時、死は消えた。


 かわりに、一人の人間が立っていた。


 ここにいるはずのない人間。ありえない現実が目の前で起こっていた。


「間に合って……よかった……」


 人間は私たちに向かって語り掛けてきた。


「俺は、君たちを助けるためにここまで来た。方法はひとつしかない」


 そう言って、人間は少女に手の中のモノを見せた。明滅を繰り返す球状の光がそこにはあった。


「……それをどうするつもりですか?」


「最初の俺に渡してもらう。君がやろうとしていることも、これがあればうまくいく」


「それを持っているということは、あなたは私の……。わかりましたあなたを信じましょう」


 それっきり、少女との話は終わっったというようで、人間は私に向き合う。


 そして、人間は私の手にそれを握らせてきた。


「お願いだ、君たちは俺が……すべての俺たちが必ず守る。だから最初まで跳んで……初めの俺に渡してくれ」


 嫌だった。結局何も変わっていない。少女は助からない。


 この人間もどうせすぐに死ぬだろう。これじゃあ、少しでも希望をくれた分もっとひどい。


 希望……? 私は何を考えているんだ……。


 私がやるべきことは理解できる。でも、少女と離れたくなかった。


 ヒトリにしたくなかった。ヒトリになりたくなかった。


 そんな中、手の中の光がさらに眩く輝き、私の中に溶けていく。


 握ったそれは暖かく、優しい温もりがあった。


 まるであの少女が手の中にいるようだった。


「私からもお願い。私を信じて。」

 

 少女が私の手を取って言った。


 私の身体から光が溢れる。


 跳ぶ瞬間、私は叫ぶ。


「ぜったいに帰ってくる。絶対、絶対だから!!」


 視界が真っ白な光に覆われ、なにも見えなくなった。



 その瞬間、私は跳んだ。


処女作です。のんびりと更新を待っていただければ幸いです。


次話は本日12時に投稿予定です

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ