0 終わりの始まり
気が付いたらワタシはそこにいた。
気が付いたらセカイが見えていた。
気が付いたらオトが聞こえていた。
気が付いたらヒトリだった。
ソレが何かは知っている。
なぜ知っているかは知らない。
ソレが悪いものであるとは知っている。
なぜなのかは知らない。
ワタシがここにいるのは知っている。
なぜかはシラナイ。
モウ、ナニモミタクナイ……。
モウ、ナニモキキタクナイ……。
モウ、ナニモカンガエタクナイ……。
「モウ、ネムリタイ」
そう呟いて、私は永遠の眠りについた……はずだった。
◇
目が覚めたらワタシはそこにいた。
目が覚めたらセカイが見えていた。
目が覚めたらオトが聞こえていた。
目が覚めたらヒトリじゃなかった。
そこには少女がいた、ワタシが今まで見たどんなものよりも眩しく、どんなものよりも明るく、どんなものよりも綺麗だった。
「あっ! やっと起きた! まったくもう、ねぼすけさんですねっ」
その少女は笑った。とてもうれしそうに、とても楽しそうに。
◇
それから、私はその少女とたくさんのお話をした。
何時間とも、何日とも、何か月とも、何年とも感じられる時間だった。
その時間こそが私にとっての幸せであり、私にとっての全てだった。
…………そして、世界は終わった。
崩れ落ちていく世界を見ながら、私のせいなのだとアレは言った。
なぜなのか、シラナイ。
そう塞ぎ込む私を少女は護っていた。
これまでもそうしてきたように、今も。
あんなに小柄だった少女の身体が、今はとても大きく見える。
それでも、アレには勝てない。
そもそもアレに勝ち負け等ない。
私は……最期の瞬間を覚悟した。
でも、この少女には生きていて欲しい。
少女ならば、それができることを私は知っている。
少女が話してくれたからだ。
少女ならば、それをしないことを私は知っている。
少女と話したからだ。
少女ならば、どうするか私は知っている。
…………知りたくなかった。
私が先にいなくなれば、少女は生きるのだろうか。
そう思い、私は前に出ようとするが、少女は私を止めて、私の肩を掴んで言った。
「ごめんね、どうか無事で……」
言葉が終わる前に、少女に死が迫ってきていた。
あらかじめ定められていたように。既に決定しているように。
死が彼女に触れそうになる……その時、死は消えた。
かわりに、一人の人間が立っていた。
ここにいるはずのない人間。ありえない現実が目の前で起こっていた。
「間に合って……よかった……」
人間は私たちに向かって語り掛けてきた。
「俺は、君たちを助けるためにここまで来た。方法はひとつしかない」
そう言って、人間は少女に手の中のモノを見せた。明滅を繰り返す球状の光がそこにはあった。
「……それをどうするつもりですか?」
「最初の俺に渡してもらう。君がやろうとしていることも、これがあればうまくいく」
「それを持っているということは、あなたは私の……。わかりましたあなたを信じましょう」
それっきり、少女との話は終わっったというようで、人間は私に向き合う。
そして、人間は私の手にそれを握らせてきた。
「お願いだ、君たちは俺が……すべての俺たちが必ず守る。だから最初まで跳んで……初めの俺に渡してくれ」
嫌だった。結局何も変わっていない。少女は助からない。
この人間もどうせすぐに死ぬだろう。これじゃあ、少しでも希望をくれた分もっとひどい。
希望……? 私は何を考えているんだ……。
私がやるべきことは理解できる。でも、少女と離れたくなかった。
ヒトリにしたくなかった。ヒトリになりたくなかった。
そんな中、手の中の光がさらに眩く輝き、私の中に溶けていく。
握ったそれは暖かく、優しい温もりがあった。
まるであの少女が手の中にいるようだった。
「私からもお願い。私を信じて。」
少女が私の手を取って言った。
私の身体から光が溢れる。
跳ぶ瞬間、私は叫ぶ。
「ぜったいに帰ってくる。絶対、絶対だから!!」
視界が真っ白な光に覆われ、なにも見えなくなった。
その瞬間、私は跳んだ。
処女作です。のんびりと更新を待っていただければ幸いです。
次話は本日12時に投稿予定です