表裏の出会い 3
「王太子のご息女ともあろう御方が、このような場所に何用でございましょう!?」
女官組頭は短時間で落ち着きを取り戻すと、セレナによく似た少女を他の女官にあずけながら少々咎めるような響きの声でセレナに尋ねた。
彼女はなんとか誤魔化す言葉はないかと思案しているうちに、無表情のままの少女が退室しようと一礼するのが視界に入った。
女官達と扉にむかう少女の事が気になってしまったセレナは彼女を引き止める事にした。
「お待ちなさい!
直答を許します、名を名乗りなさい!」
女官組頭の質問を無視し急ぎ少女の前にまわり込むとセレナは彼女に命じたのだった。
しかしこの質問には女官組頭が返答を返した。
「この者の名はルウ・セイルにございます」
そう、セレナに似た少女は1年前までロキムという町で継ぎ接ぎの服を着ていた「ルウ」と呼ばれていたあの少女だった。
言葉を発する事は出来ないが“王命”により王太子の愛娘セレナの“影武者”として教育を受けている……と告げられた。
自分の影武者!?
祖父王の命令!?
セレナは信じられず影武者と紹介された少女を青の瞳で見つめた。
しかし彼女の表情は全く変わらず……?
否
ほんの一瞬だが彼女の紫の瞳に憂いに似た光が過ったような気がしたのは思い過しだろうか!?
少々引っ掛かりも覚えつつ、セレナはルウの左腕をつかみ館内から庭園の方へ出られる窓へと誘った。
しかし彼女はセレナの手に自分のもう片方の手を重ねると首を横に振ったのだった。
自分は影武者。
隠された存在でいなければならないのだと言わんばかりに……。