表裏の出会い 2
女官達をふりきって庭園を駆け抜けた彼女は、気が付くと木々に隠されるかの様に姫宮の片隅にひっそりとたたずむ小さな館の前に来ていた。
生まれた時からいる王宮内に自分の知らない場所がまだあったなんて!!
彼女はある種の感動すら覚え、館の大きな窓の一つに近づいた。
館は小さいといっても広い敷地内に建つのだ。
下級貴族が都に建てる屋敷程の広さ程はあった。
セレナの近づいた館の大きな窓は人が自由に出入り出来る位に解放にされており、涼しい風が室内に流れ込んでいた。
セレナが足を踏み入れた室内は淡い青色のカーテンが白いタッセルで纏められていた。
現在この室内に人の気配はない。
しかし普段は誰かが使用しているのか机の上に1冊の書籍が置かれていた。
【手話】
書籍の題名を見ても意味が分からなかったセレナは、音もなく入室してきた少女にも気が付かなかった。
一方、入室してきた少女はセレナに気が付くと背後に近づき肩に手を置いた。
次の瞬間セレナの悲鳴が館中に響き渡り、逆に人を引き付ける結果になってしまった!!
またセレナの予想以上に大きな悲鳴と、もう一つの要因から驚かせてしまった少女の方が無表情のまま像の様に固まってしまった。
お互い見つめあう形でピクリとも動けなかった2人のもとへ、悲鳴を聞き付け何人かの女官達が入室してきた。
「何事ですか!?」
一目でこの館の女官組頭と分かる衣裳を着た女性は2人の様子を見ると……質問を途中でやめ、そっと溜め息をついた。
今だ少女の顔を食い入るように見つめるセレナと、女官組頭の方を無表情に……しかし困惑した瞳で振り向く少女。
この2人の顔は『双子か?』と問いたくなる程によく似ていた。
唯一違う点を探すなら……瞳の色のみ。
柔らかい春の空を思い浮べる青瞳のセレナとは対照的に、少女の瞳は深い闇を映すような紫瞳であった。
女官組頭はそんな2人の様子を見つめながら、セレナの正体を知っていた為この事態をどうするか考えていた。