序4
一方で詩人から貰った大きな布を身に纏った少女は、先程の通りから2つ程奥に入った道にある小さな酒屋に来ていた。
酒屋の主人は少女の姿に気が付くと入って来るように合図をする。
そして店の奥にむかって声をあげた!
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「おい、ルウの酒瓶を持ってきてくれ!」
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「ルウ」と呼ばれた少女は懐から財布代わりの巾着を取出すと銅貨を10枚取出し主人に渡した。
そして何時もの様に奥から彼女の幼なじみが出て来るのを待つ。
この酒屋で働いている幼なじみの少年は、財布をしまい待っていた彼女に
「雨で転ぶな」
と注意しながら酒瓶を手渡した。
これは安価のわりには意外に旨いと評判の酒で、彼女の養父ラスが好きな酒でもあった。
だが酒類の中では安いとはいえ、1瓶分ともなると彼女の稼ぎの1日分程にもなった。
酒屋の主人はルウの養父…‥ラスやルウの幼なじみの少年…‥ガランの父親の知り合いでもあった。
また、ルウやガラン達にとって年上の幼なじみの父親でもあった為、ルウは5日に1度は安心して早朝に酒瓶を預け…‥仕事へ行き…‥夕方の帰宅途中に取りに来れるようになっていた。
酒屋の主人は彼女がラスに拾われた時から見守ってきたのだ…‥。
当然とも言えた。
一方のガランは彼女の2歳上の幼なじみであり近所から酒屋に働きに来ていたが、彼がこの酒屋を選んだ理由も主人は知っていた。
彼の父親は酒の依存症で、どんな安い酒でも良いから…‥と分けて貰う為でもあった。
ガランはこの日も酒瓶を落とさないよう丁寧に運ぶルウを店先で見送った。
その一方で酒屋の主人は、数日前に彼女の身辺を調べにきた騎士の事をどう告げるかと悩んでいた。
だが結局、酒屋の主人は少女に告げる事は無かった。
この数日後、彼女の姿はこの町…ロキムからその騎士とともに消えたのだから。