表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/11

魔法少女は『願わくば』と呟いて 2

 あの時から、しばらくの時間が経ちました――


「じゃあ、行くわよ――。後で、また会いましょう」

「はい……。また後で、ですね」

 

 いつも通りの、嘘でした。

 

 泣いても、笑っても、8番さん達とはお別れです。

 微笑む8番さんにわたしはペコリとしました。

 するとわたしの頭に、ぎゅっと柔らかい抱きしめられる感触がします。

 ふわっと暖かい、『どうしてでしょうか』、ほっと安心できる香りすると、8番さんの柔らかな手がわたし背中を優しく撫でました。

 変に思って頭を上げようと思いましたが、8番さんは私の頭を抱きすくめるようにしてさせてくれません。いつもはこんなこと、しないのに。

 わたしはどうしたらいいんでしょうか。

 ちょっと困ります。


「――、どうしたんですか。8番さん」


 わたしの言葉に8番さんはビクっと体を震わせると「ごめんなさいね」といいました。

 いえ、謝られても困るのですが。


「私は――、いえ、私たちはダメね。あなたよりお姉さんなのに、あなたたちよりずっと強いのに、何も残してあげれなかった――」

 

 8番さんの声はとても悲しそうでした。


「そんなことないです。8番さんや他のお姉さんがいなかったから、わたしたちは弱いままでした。いくら感謝しても、したりないです」

「……そうじゃ、ないのよ。そうじゃないの……」

「えっと、じゃあどうしたんですか?」

「ごめんなさいね……。ごめんなさい……」

 

 いまだに震えたまま、8番さんはわたしを離しません。

 やっぱりいつものおしとやかで、優しい8番さんらしくない気がします。

 ですがわたしもわたしで、なんと声をかけたらいいか分からないでいました。

 結局――、8番さんが離してくれるまでわたしは何も話せませんでした。

 ふっと安心する香りが離れていきます。

 頭を上げることを許されたわたしの前には、8番さんがいつもの様子で微笑んでいました。


「ねえ、最後に少しいいかしら」

「はい」

「あなた、最後に笑ったのはいつ?」


 いきなりな問いです。

 質問の意味がわかりません。

 わたしが答えられずに黙っていると、8番さんがわたしの頭を撫でました。


「――答えにくい質問をしてしまったわね。ごめんなさい」

「…………」

「私達はたくさん辛いものを見てきたし、たくさん悲しい思いをしたわ。きっとその間のどこかで笑顔を忘れてきてしまったのよ……。あなたも、私も」

 

 8番さんは、だからね――、と続けます。


「――あなたのことを大切に思って、あなたの笑顔を取り戻せる人が、いつかあなたの前に現れるまで……」

 とん、と胸を指しました。


「どうか、失くさないでいてほしいの――」


 ――心を。

 8番さんは消えるような声で最後にそう言いました。

 そして、わたしは8番さんと別れました。


 辛いこと、と8番さんは言いました。

 悲しいこと、とも8番さんは言いました。

 ……言われてみれば、ここに来てから確かに色々とありました。


 ――3番さんは爪で切り裂かれてしまいました。

 ――5番さんは刺し違えて深い深い谷に落ちていきました。

 ――10番さんは11番さんを助けようとして、失敗してしまいました。

 ――9番さんは大群に襲われて何も残りませんでした。


 

 そして今日。

 8番さんはわたしを庇って、動かなくなりました。


 

 でも、大丈夫です。

 神さまは気を使って、この灰色の世界での記憶は、元の世界に持っていけない約束をしてくれたからです。

 だから、大丈夫です。

 元の世界に戻れば、大丈夫です。

 何も覚えていないんですから、大丈夫です。

 何も問題ありません。大丈夫。


 そんこんなで、わたし、第12番。魔法少女、やってます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ