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魔法少女は『願わくば』と呟いて 1

 

 空の色から蒼さと白さ、深さが抜け落ちて――

 街からは明かりと活気がべりっと引きはがされて――

 気がついた時にはわたしはポツンと立っていました。

 

 一緒に歩いてたはずのエマや爺やも隣にいません。

 景色がはがれ落ちた所全部に灰色の絵の具を被せて、そのまま固めたような世界。

 何もない、灰色の世界。

 わたしはただ茫然としていました。


「――やっと来たな」

 

 立ち尽くしていたわたしの後ろから、綺麗に透き通った――、それでいて、ピンと糸を張ったような声がかかりました。

 振り返るとそこには、おとぎ話に出てくるような綺麗なお姉さんが一本の長い剣を抱くようにして壁に寄りかかっていました。

 お花の髪飾りで結った長い髪を揺らしながらわたしに向かって歩いてきます。

 その様子をぽやっと立ったまま見ることしかできないわたしの前まで来ると、そっと手をかざします。

 

『     』


 お姉さんが何かを呟きました。

 すると突然、わたしの周りだけ色が爆発しました。

 世界中のキレイをぎゅっと集めたような強いいろに思わず目をつむってしまいます。

 ――ちょっとして、徐々に光が弱くなっていくのがわかりました。

 ようやく目を開けれるようになったのを感じると、わたしはゆっくりと目を開けてみました。

「――え?」

 見た光景に、思わず声を上げてしまいました。

 いつの間にかわたしは見たことのないような――

 それこそ王女様が着るような――

 わたしの憧れを全部集めてきたような、そんな理想のお洋服に包まれていました。

 しかも、この服から今まで感じたことのない魔力が流れ込んでくるのがわかります。

 こんな魔法、見たことも聞いたこともありません。

 そもそも、ここには妖精さんも、精霊さんも何もいないのです。

 それがないと何もできないのに、どうやったのでしょうか。

「ふえ、あ? ――え、え?」

 ビックリして何も言えなくなってしまったわたしの頭の中に、ピリリと景色が浮かびました。

 ですけど、わたしが「何だろう?」と思う前にその原因を知ることになりました。

 頭の中に、景色が洪水の様にあふれかえります。

 いえ、景色ではありません。


 ――この世界の記憶、そのものでした。


 ――――――。

 ――――。

 ――。


 全部、知りました。

 わたしが知っているいつもの世界は、とある神様が作り上げた理想の世界だということ。

 私たちは遥か昔にこの世界に避難してきていたのです。

 しかし、神様が急場で作った世界は完全ではありませんでした。

 無理に作った世界は徐々にほころびが出来てしまいます。

 その綻びを縫うようにして、他の世界からいろいろなものが降ってきました。

 それは見たことのない物であったり、本であったり、はたまたゴミのようなものまであったりと様々です。

 

 そしてある日、とんでもないものが降ってきました。

 

 わたしの知るどんな生き物でも似つかない、恐ろしく気味の悪い姿をした生き物です。

 それの大きさは街の教会と同じくらいの大きさでした。

 背中に羽を持っています。

 足が基本的には六本、多い時にはそれ以上ありました。

 一つの目の中にたくさんの目玉を持っていて、ほぼ真後ろまで見ることが出来ます。

 膨大な魔力と硬い皮膚を持っていて、そこにいるだけで他の生き物を圧倒します。


 そして、何より――


 ほかの生き物を、人を食べます。

 

 それを目撃した神様は、すぐに理想の世界の空間をずらして追放しました。

 そしてずらした先でひっそりとその生き物を退治していました。

 しかし、それも限界が来てしまいます。

 次から次へとやってくるその生き物を次第に退治しきれなくなったのです。

 このままではせっかく作り上げた理想の世界が、ひどい目に遭うと考えた神様はとある決断をしました。

 人の子に力を借りることにしよう――

 

 神様の能力を借りる器――、妖精。

 

 妖精と人間をつなぐ器――、精霊。

 

 そして精霊から放たれる力、精霊子の誕生でした。

 

 人々は精霊子を扱いやすい魔力に変換することで、知らず知らずの内に使っていたのです。

 そして誕生したそれぞれの器。それと相性が最も優れている人を、この灰色の世界に呼んで退治のお手伝いを頼んでいるようでした。


 そう、私はそのお手伝いに選ばれたのです。


「……だいたいのことは分かったか」

 わたしの前に立っているお姉さんが静かな口調でそう言います。

 それに対してわたしはきゅっと手を握ってみました。

 目を閉じると、こころがドキドキ跳ねているのが分かります。

 わたしにも、できることがあったのです。

 

 引っ込み思案で、いつもぽやっとしていて、なんの取り柄のないわたしにも!

 

 それはとても光栄なことに思えました。

 ならわたしが言うべきことは、決まっています。


「はい! これからよろしくお願いします! お姉さん!!」

 

 わたしの言葉にお姉さんはちょっと驚いたようでした。

 少し間をおいてお姉さんが口を開きます。

「――そうか。なら、よろしく頼むぞ」

「――はい!」

 わたしはちから一杯返事を返しました。

 この日から、この世界限定で一番始まりの力。

 本物の魔法を使うことが出来るようになったのです。

 


 わたしは嬉しさのあまり、まったく気づいていませんでした。

 頼むぞ、といったお姉さんの顔がとても悲しそうで――

 今にも泣きだしそうだったことを―― 

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