Φ《ファイ》ナル プロローグ
三ツノ月末。僕は絶え間無い努力の果てにオルツ魔法学院の入学権を手にしていた。
魔法の才に恵まれなかった僕はその他の項目で勝負するしかなかったのだ。
だから、血反吐を吐くまで知識を磨いた。
追い込みの時期では勉強のしすぎで内蔵の機能が低下して危うく死ぬ所だった。
勿論その間、友達との遊びは全て断ったし祭りにだって行かなかった。
十歳からこの生活を続けて約五年。
青春と呼ばれる時期の半分以上を、ここに入学する為に捧げてきた。
苦難に継ぐ苦難。
それを耐え抜いて、乗り越えて、今僕はここにいる。
胸に手を当てる。
膨らむ夢と期待に自然と鼓動は早くなっていた。
ぐふふふ。
笑いがこみ上げる。
当たり前だ。さっき僕は青春の大半を捧げたなどと言ったが、少し違う。
ここから始まるのだ。
なんたってオルツ魔法学院と言ったらこのエスボスニアの大地中から生粋の魔法の才のある子どもを集めて構成された魔法士養成学校だ。
そしてここで一つ、特質しなければならないことがある。
魔法の才をその身に宿す者は、容姿が抜群に整っているのだ。
そして。
強大なものとなると比率は女性が大半を占める。
まー何だ、神に愛されし者は才も容姿もうんたらかんたらと、クソどうでもいい講釈があったりするんだが今は関係ない。
分かるかね?
僕が四ツノ月からこの学院に通うこの意味が。
そうなのだよ。
圧倒的なハーレム状態。
ここに入学するだけで勝手にその空間に放り込まれる。
そのことに十歳という若年で気付いた僕は、同年代の鼻垂れ小僧や、ちんちくりんが毛の生えたジャガイモ程度にしか見えなくなった。そういうことさ。おかげで友達なんざ本当に一人もいやしない。
まあ、それもこの月でおさらばだ。
きっとこれからは波乱に満ちた生活が待っているだろう。
お嬢様に粗野な庶民とバカにされてたら、僕に窮地を救われて意識してくるようになっちゃったり!
「私、男の子と話すの初めてなの……」とかでその後もイロイロな初めての相手になっちゃったり!
ほかの子と仲良くしてたら「……バカ。あんたは私だけ見てればいいのよ」とかふて腐れちゃったり!
み な ぎ っ て き た 。
――堪らんなっっ! おい! くそ。考えただけで涎が止まらねえ。
待ってろ、美女美少女美幼女美妖女!
俺という器でお前らを囲んでやるからよおおお!
七年後。
「嘘だああああああああああああああああああああああああああああ!!」
拙者は絶叫していた。