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MP1~魔法使いは呪われている~  作者: 万里
聖女と砂漠に舞う蝶編
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盗賊?

高くそびえ立つ岩場の上には背の低い少年がちょーん、と立っていた。格好をつけて腕を組みながら首に巻いたマフラーをたなびかせている。

「俺様に獲物を横取りされるとも知らずにご苦労なことだ!さぁ、その麻袋の中身を寄越すがいい」彼は芝居がかった口調でいちいちポーズをつけながら、岩場の上から俺を見下ろした。うん、いつも通りだ。

彼との距離を目視、ピエールに前進の指示を出す。俺を乗せたピエールが彼のいる岩場の下まで突進した。え?何故、逃げずに近寄るのかって?それは今にわかるさ。

「わざわざ自分から寄ってくるとは!飛んで火に入る夏の虫とはこのことだな」

岩場の下まで着くと、ピエールは急停止する。俺は振り落とされないように角に掴まった。体勢を立て直した後、彼の顔に狙いを定めて人差し指を立て、呪文を詠唱する。

ぴゅーっと水鉄砲が指先から出て、彼の目を直撃した。

「な!?目潰しとは卑怯な」

彼が目をごしごし擦っている間に俺はUターン。ピエールと共に砂漠を疾走、帰路を目指す。後ろで何やら怒鳴る声が聞こえたが、聞こえないふりをした。


彼との攻防は修行開始初日から続いている。今や、立派な顔見知り、帰る前の恒例行事だ。一見、馬鹿な奴に見えるが、まともにやり合えば勝ち目がないのは初日に身をもって体験済みだ。

盗賊のスキル持ちで非常に動きが素早いのだ。初日は身ぐるみ全て剥がされて、砂漠の夜に凍死しかけた。砂漠の真ん中で半裸で凍死って洒落にならないと思う。当時ピエールは背中に乗せてくれなかったので、根負けして運んでくれなかったら正直やばかったと思う。剥がされた衣服は一足先にイワンの元に手紙付きで届けられたが…。手紙には「ごめん」とだけあった。以降は反省したようで、獲物の横取りだけを狙ってくる。

彼はイワンの元弟子で、イワンの依頼で暇なときに俺の修行に付き合ってくれているらしい。ほぼ毎日遭遇するほどの暇人…とは敢えて突っ込まないでおこうか。

彼のスキルは隠密、密偵として本来なら重宝がられるのだが、いかんせん、性格が災いとなった。致命的なことに目立ちたがりだったのだ。そんな彼だが、イワンの紹介で現在はメッセンジャーとして日々配達に勤しんでいる。彼の走りはピエールに匹敵する。お互いにお互いをライバル視している。スキルの悪用に目を向けなかったのは本当に幸いだと思う。彼は盗賊の素養が十二分にあり過ぎる。

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