呪われているらしい?
「幸いなことにこの国にはスキル認定を行い、職を紹介するギルドという場所がある」だから、大丈夫だと男は事務的に言う。俺の身なりを見て、また顔をしかめやがった。身元不明、異国の不法滞在者、ホームレス、それが今のステータスだ。笑うしかない。
男は食事をご馳走してくれた後、俺をギルドというところに案内してくれるという。空腹に耐えていた俺は涙を流した。
「職安みたいなもん?その資格認定はお金なくても受けられるのか?」
「審査は無料だ。ジャッジメントのスキル持ちが適正を見て仕事を紹介する場所なので希望が通らない場合があるが…」
「審査の結果、何の才能がなかった場合、どうすればいいんだろうか?」俺は遠い目をした。
そうこうしている間にギルドについた。簡単な手続きの後、順番が来るのを待つ。案ずるより産むが易し。路上生活を強硬して国外追放の上砂漠の真ん中で孤独死するよりはずっとましなはずだ。ポジティブシンキング、大事。
俺の順番が回ってきた。初老のギルド職員が俺を分析眼鏡で見る。沈黙が重い。
「これは…」細い目を限界までかっと見開いて、盛大にため息をつかれた。
俺の職業は「魔法使い」らしい。問題は魔法を使うのに必要な魔力がほとんどないということだった。このギルドは転職屋も兼ねているので、通常なら他の適正のある職業にジョブチェンジできるとのことだった。
「チェンジで」勿論、速効でお願いした。
「無理です」光速でお断りされた。
「何で?」
「職業が魔法使いで固定されてるからです。しかも、貴方は既に呪われてます」
「は?」
「呪いを解かないと、変更できません。ですが、解くすべがわかりません。」
魔法使い以外の職業につくには呪いを解く必要があるが、この呪いが複雑なために解く方法がわからないという。魔法使いの仕事は魔力が資本だが、経験を積んでも魔力の総量自体は変わらないとのことだった。俺の魔力で習得できるのは例えば火ならマッチ棒に火を灯す程度…要するにショボい。
紹介できる就職先がない、とギルドの職員は困惑した顔で俺に謝罪した。なんてこった。
「最悪だ!」
外に出ると美形な男が待っていた。冷たい顔をしているが、存外心根は優しいらしい。黙って首を振り、結果を伝えると、彼は肩を落とした。
なんだか辛い。夕陽がやけに目に染みるぜ。