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別れ話

 俺と望月は放課後、学校で筆談していた。

 望月が話したいことがあると言うので、図書室に連れて行ったのだった。

望月)『田宮くんは、私のことをどう思っているの?』

 ノートにはそう書かれていた。俺もシャーペンを取り出して答える。

俺)『よくわからない』

望月)『好きになってもらう努力をするスタンスではありますが、あなたはこれからも私と付き合い続ける気はあるの?』

俺)『キミ次第』

 俺は絶対に振りたくない。傷つきたくない。主体的に行動したくない。

望月)『最近、素っ気なくなった気がするんだけど』

俺)『逆に素っ気なくなったと思っているのに付き合っているの? いや、この質問に他意はないけど』

望月)『だから話し合っているんじゃない。あなたの気持ちが知りたいの』

俺)『喧嘩腰になっているぞ』

望月)『ごめん。で、どうお考えで?』

俺)『最初に答えたつもりだけど』

望月)『よくわからない、ね。っていうか、あなたは今まで一度も恋をしたことがないと言っていたけど』

俺)『うん。ずっと二次元ばかり見ていた。高校入ってやっと三次元に目を向け始めたけど。それでも目を向け始めただけなんだよ』

望月)『それは……三次元の女の子全般? それとも私?』

俺)『性別以前の問題だよ。今の俺には自分の良い所も悪い所も、他人の良い所も悪い所もわからない』

望月)『あなたが自分の気持ちを言ってくれさえすれば、私はちゃんとあなたの良い所を答えたりできるよ。でも何も言ってくれないと辛いよ』

俺)『辛いってどんな気持ち?』

望月)『生殺し』

俺)『なるほど』

望月)『あなたはちゃんと優しいし、きちんと良い所もあるよ』

俺)『お前は俺のことを優しいと思っているみたいだけど、俺は人に優しくするの、苦手なんだよ』

 そこで、望月は絶句した。そうしてまた望月は何かを書きだす。

望月)『なんで私と付き合ったの?』

 俺はしばらく考え込んで答える。

俺)『二か月前は上手く付き合える自信があった。でも、お前の態度はものすごく変わるし、俺もそっけなくっていうか変わっている気がしてなんだかわからなくなってきた』

「変わってないよ!」

「変わってる。前はこんな話しなかったし」

 俺の言葉に望月は黙り込む。

望月)『友達に戻りたい?』

俺)『戻ったほうが楽ではあると思うよ。楽しいかどうかはわからないけど』

 望月はまた絶句した。そして考え込んでまた、シャーペンを走らせる。

望月)『じゃあ友達に戻りましょう。今はお互い色々抱え過ぎているし幼すぎる。田宮くんが精神的に成長してその時にもし、私のことが好きならまた付き合おう』

 やはりこう来たか。俺は無心で大学ノートにシャーペンを走らせた。

俺)『それだと俺だけガキみたいじゃん。実際そうなんだけどさ。ごめんね。期待に応えられる男じゃなくて』

 それを読んだ望月の口元が歪む。笑っているが、苦々しい気持ちなのは明確だ。

望月)『いいよ。今までありがとう。友達としてはこれからもよろしくね』

俺)『戻ると言ってもどうしたらいいかわかんないよ……』

望月)『普通にしていればいいんだよ。男女混合で出かけるけど、二人きりにはならないし、手も繋がないの』

俺)『普通……ね。それが一番難しいね』

望月)『私が普通にしていたら田宮くんも平気でしょ。じゃあね』

 そう言って望月は去って行った。

 望月は、俺のせいで傷ついたのだろうか。

 傷ついただろうなあ。だって傷つけたし。

 俺は傷ついたのだろうか。

 違う。

 俺は振られたんじゃない。望月に無理やり振らせたのだ。

 つまるところ、結局俺がしたことは、自分を守ることだった。

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