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新学期三日目

 新学期になり、俺は行事委員になった。行事以外のときは活動しないから楽かと思ったのだ。

 笹塚が右隣、染川が後ろ、増谷が染川の隣になって、楽しいときを過ごしている。

 川辺は最近、俺によく恋愛相談をしてくる。望月のことが好きらしい。

 なんで恋愛経験ゼロの俺にそんなことを訊くのだろう。

 図書委員の女子三人とは全く話さなくなった。

 たまに神田島に『可愛い彼女を大切にね』と言われるが、俺に彼女はいない。

「百万円欲しいなあ……」

 増谷の小学生みたいな言葉に染川が苦笑する。

「誰だって欲しいよ」

「あれでしょ。一人一個、百万円貰ったら、何秒で使いきれるか競争するんでしょ」

「きゃはは、もったいねー」

 俺の言葉がツボだったようで笹塚はちょっと頬を朱色に染めて笑った。

「たみっちゃん、何部だっけ?」

 笹塚が上目遣いで質問をしてくる。

「パソコン部」

 答えると、笹塚は嬉しそうに微笑んだ。

「あたしもそこに今年入ろうかと思ってるんだー」

「え? へえ、そうなんだ……」

 染川がどぎまぎしたように相づちを打つ。

「パソコンかあ。いいねー」

 増谷がのほほんと微笑んだ。

「パソコン部って誰がいるの?」

「ええと、岩瀬と、藤木。女子はいないよ、いいの?」

「うん! 桜井かりんと入ろうかと思って」

 桜井かりん。明るく天然系の美少女(ロリ巨乳)だった。

 岩瀬はシャイな男子で、藤木は優しく賢い男子だ。俺も含めてパソコン部はオタクの巣窟と呼ばれている。美少女が二人も入ってくるフラグがいつ立ったのだろう。

「お、俺も入っちゃおうかなー」

 染川が控えめに主張してくる。

「おー、いいねー」

 笹塚はけたけたと笑い声をあげた。

「俺は入りたくても入れないなあ……」

 寂しそうな増谷。増谷は部活もバイトもしていない。勉強一本だ。

「そういえば、最近、望月さん元気にしているかなー」

 思い出したように染川が呟く。

「そういえばコウミだけ友達と離れたよねー」

 普通に相づちを打つ笹塚。

「俺は最近話していないからよくわからんが」

「冷たいなあ」

 俺の言動について、増谷は穏やかながらもちょっと怒った様子だった。

 まあ、全く気にならないわけではないが……。

 その日の放課後、俺はパソコン部を終えて帰宅しようと廊下を歩いていた。

 あ、望月がいる。話しかけようかな。でも、もう疎遠になってしまったのかな。

 ちょっと迷っていると川辺が俺に話しかけてきた。

「よっす! 田宮くん!」

 そうして俺達はちょっと会話をする。川辺とはクラスは違っても全然疎遠になりそうもないなあ。

 そんなことを考えていると、望月が俺のところまで駆け寄ってきた。

「田宮くん!!」

 望月は必死そうな声で俺に言葉を投げかけてくる。

「クラスは別々になっちゃったけど、田宮くんに話しかけるから!! 私、話しかけるスキルめっちゃあるから!!!!」

 川辺は絶句していた。

 俺も驚いて言葉が出ない。望月は誰にでも(俺にまで)そんなことを言う奴だったのか? 

 望月が真剣な眼差しで俺を見上げているので、俺もなんとか声を絞り出した。

「よろしくお願いします……」

 生憎、話しかけられるスキルはなかなかないのだが……。

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