書架整理
申し訳ありません!
昨日、間違えて外伝の内容をこっちにアップしていました。
外伝だと田宮くんはめっちゃ渋い人になっています。
本編だと頑張っている臆病ですけどね。あんまり面白い事言おうとしなくてもいいのに。
反対に望月さんは、全然清楚じゃないですね。
結構残念でタフで、悪い意味でお喋りですよ。
興味があればぜひ読んでみてください。
海に行った翌日。
俺は図書委員会に出席するために、朝から電車に乗っていた。
「あ、田宮くんだー」
ちょうど飯田橋で望月が乗車してくる。
「おう」
俺は片手をひょい、と挙げた。
「田宮くんは三日とも委員会に出席するの?」
望月に尋ねられて俺は頷いた。
「一日目が午前中だけで、二日目が午後だけで、三日目が午前中だけの活動予定だ」
「私は一日目が午前中で、二日目、三日目が、午前も午後も活動するよ!」
頑張るなー、と望月の夏制服姿を眺めてそう思った。
***
「やあ。来たね」
図書室に行くと、司書のおじさんが笑顔で出迎えてくれた。
今日のメンバーは増谷、城山委員長、俺、望月のみだった。
「毎度のことながら、集まり悪いのよねー」
城山委員長はてへへのへ、と可愛らしく頭を掻いた。
夏の書架整理はいつもの書架整理と違い、蔵書点検をする。
具体的には、小さな読み取り機に、本のバーコードを近づけて読み取る。
その情報が図書室のパソコンまで行き、現在図書室内にその本が紛失されずに存在していることを確かめる仕組みだ。
ただ、この高校の図書室に本は三万冊ある。都立高校の中ではトップクラスの蔵書数と貸出数を誇る図書室だから、当たり前かもしれないが。
俺達はただひたすら働いていた。
「そろそろお茶にしようー」
司書が用意してくれたお菓子やらジュースやらが机の上に置かれていた。
望月はバクバクお菓子を食べていて、ちょっと引いた。
たくさん食べるにしても、さりげなく、というのを知らないのか。
俺はというと、お菓子を食べている三人を尻目に、ただひたすら仕事を続ける。
「田宮くーん。休んだ方がいいよー?」
望月に声をかけられても、俺は手を止めなかった。
「キリのいいところまでやりたいんだ」
望月はしゅんとした顔で、司書と他二人のところまで戻っていく。
「駄目でした」
望月のよく通る声。
「さっきの休憩時間も休んでいないよね」
増谷の不安そうな声。
「きっと仕事が終わらないまま休むのが嫌なんだと思う。あの子、几帳面そうだし」
城山委員長の冷静なアニメ声。
「じゃあ、田宮くんみたいな人とは結婚しないほうがいいよね。ストレスたまりそうだし」
司書のおかしそうな声。
「いやっ。でも意外と結婚したら几帳面な人の方が家事に協力してくれるかも!」
望月の庇うような声。
……全部聞こえているんですけど。
***
帰り道。
「田宮くん、最初から飛ばし過ぎだよー。しかも、本の中でも重たい辞書や百科事典の係だったから、疲れたでしょう?」
望月は心配そうに言った。
「だって女子は力がないからできないだろ。増谷は写真集のところをやっていたし、誰かがやらなきゃいけないんだからさ」
俺の言葉に、望月は不満そうに眉の端を下げた。
「でも、田宮くん一人だけ負担を大きくする必要はないじゃない」
***
翌日の午後。俺は今日も人一倍働いていた。
本来なら三日はかかるとされている蔵書点検が、二日目で終わりそうな勢いで仕事が進みまくっていた。
だが。
「もうすぐ時間だよー」
今日の仕事の終了を伝える司書の声。
夏休み中は、特別な事情が無い限り、五時以降は学校に居てはいけないのだ。
くっ。あともう少しなのに。
俺が焦りまくりながらバーコードを読み取っていると、隣に望月がやってきた。
ぴっ、ぴっ、ぴっ。
俺の係の棚の本を素早く読み取っていく。
「手伝ってくれるのか?」
「手伝いたいから手伝っているの。誰かがやらなきゃいけないからじゃ、ない」
温厚な望月には珍しくはっきりした言葉に、俺は苦笑した。
確かに、他人の代わりに負担する、という心構えで働いていたら、不幸かもな。
望月の生き様の方が、よっぽどポジティブだ。
でも、言わない。
俺は今まで、そういう生き方をしてきたから、変えるのには相当勇気がいるのだった。
ああ。
中学時代、クラスメイトに望月みたいな奴がいれば、俺は不登校にならなかったのかな。
遡るは一年前――――。




