三ヶ月間 〜体育〜
体育の授業。
今日は体力測定の日だ。
僕は体を動かすことより勉強とかのほうが好きだ。
全力でやって、どの種目も平均7点ほど。
カイカの方を見る。
ちょうど50m走り計測をしていた。
記録は6秒。
人間の世界記録でも、たしか5.5秒とかだったはず。
それにあいつ多分ーー
「ウェルベルは何秒だった?」
走り終わったカイカがこちらに来た。
「そんなことより、お前本気出してないだろ」
「それはお前もだろ」
いや、僕は本気で走ってる。
本気で走ってあの速度なんだよ…
「あれで本気だ」
「え?」
悪かったな、獣人なのに運動できなくて…
「なんだよ」
カイカの事を睨む。
「なんでもない。それより次、持久走だってよ」
カイカは嬉しそうに歩いていく。
次は持久走…考えただけでも嫌になる。
カイカの後をとぼとぼと追ってスタート位置に行く。
「よーし始めるぞ〜」
夏山先生がスタートの合図を出す。
みんな一斉に走り出す。
カイカはすぐに先頭に行くと思ったが、僕の隣を走っている。
「……なんで隣にいる」
「なんとなく?」
「本気でやれ」
「本気だぞ?」
僕の隣で走ってる時点で本気じゃないくせに。
「はぁ…はぁ…そろそろ本気でやれよ…」
「もう息上がったのか」
うるさいな…
一周目がやっと終わった。
後二周もある…キツイ…
「わざわざ僕に合わせなくてもいい」
「それは俺の自由だ」
カイカはそう言うと、少し速度を上げ僕の前を走る。
カイカが前にいるおかげで走りやすい…。
馬鹿にされてるようで腹が立つけど、ありがたい
二週目がもうすぐ終わる。
僕は前を走るカイカの尻尾を軽くつかんだ。
ビクッ。
カイカが驚いたように振り返る
「カイカ」
「なんだ?」
「カイカ最後の周だけ本気で走ってみてくれ、見てみたい」
純粋な興味。
本気のカイカを見てみたい。
「……」
カイカは何も言わない。
少しして口を開く。
「放課後、尻尾」
「…またか」
こいつは隙あらば僕の尻尾を触ろうとしてくる。
意味がわからない。
「わかった…少しだけだぞ」
カイカは嬉しそうに尻尾を振っている。
三周目
最後の周に入る。
「行くぞ」
次の瞬間
カイカが加速する。
あっという間にカイカの背中が遠ざかる。
「は?」
速い。
いや、速いなんてもんじゃない。
さっきまで隣を走っていたはずなのに、
もう数十メートルは先にいる。
追い抜かれた生徒が声を上げる
「うわっ!?」
「速っ?!」
カイカは全員を抜かしてそのままゴールした。
僕がゴールする頃にはもう息も整っていた。
「どうだ?」
嬉しそうに大きな尻尾を振って聞いてくる。
「はぁ…はぁ…すごいな」
息が上がって、うまく声が出ない。
どうやったらあんなに早くなるんだよ…。
「約束通り、本気を出したぞ」
「尻尾だろ?わかってる」
カイカの尻尾がさらに大きく揺れる。
「楽しみだ」
「楽しみにするな…」
「俺のモフモフ」
「僕の尻尾な」
相変わらず何がいいのかわからない。




