また明日
朝、スマートフォンの目覚ましで起きる。まだ眠い、もう少し寝たい…そんな事を思いながら、時計を見る。時計の針が示す時刻は7時45分、家を出る時間の5分前だ…。
慌ただしく布団を出る。散らかっている部屋、片づけは苦手だ。そんな事を考えてる暇はない、足で床の服や本をかき分けながら制服を取り出し袖を通していく、制服だけは皴などはなくキッチリしている。
制服を着て、忘れ物を確認して急いで家を出る。
家から学校まではそこまで遠くない歩いて30分ぐらいだ。
めんどくさいが走ればまだ間に合う、遅刻するより面倒でない。
走って学校に向かう道中、コンビニで適当に菓子パンを買って行く。朝食と昼食用だ。
朝食用に買ったパンを頬張りながら走る。こういう時いつも思う。自分は獣人なのに運動が得意ではない。人間の平均より少し上ぐらいだ、獣人の基準で見たら身体能力は低い部類だろう。犬種のはずなのに体力も無く走るのも苦手だ…。
なんとかチャイムが鳴る前に教室についた、肩で息をしながら教室の扉を開ける。周囲の視線が僕に集まる。遅刻ギリギリで息を切らした獣人、視線を集めるには十分だろう。こちらを見る人間の顔には恐怖の顔が浮かんでいる。
周囲の視線の事は無視して自分の席に向かう。カイカはすでに席に着いて窓の外を眺めていた。窓側の席の僕はカイカの視線を遮るように自分の席に座る。ふと昨日の事を思い出しながらカイカの方を見る。カイカは目を細めてやわらかく微笑んでいた。
「どうした?」
「首と頬、寝ぐせになってんぞ」
手で確認すると確かに、毛が跳ねている感触がある。
「ありがとう」
それだけ言って、鞄からブラシを取り出す。全身毛皮の僕にとってコロコロと合わせて必需品だ。
ブラシで寝癖を直していると、夏山先生が教室にきて、チャイムがなった。
「お、全員いるな?それじゃ出席確認するぞぉ」
夏山先生が1人1人名前を呼んで出席を確認して行く。簡単な連絡事項を言って朝のホームルームは終了。他の授業も科目の担当先生がきて一年間の説明やら、軽い雑談をして終了。なんともない学校生活だったと思ったんだけどなぁ…。
「神獣種って乱暴なんだろ?」
「近づかない方がいいな、なんか見てるだけで怖ぇもん」
男子生徒の言葉を聞いて、隣にいるカイカに目を向ける。
「ガルゥゥゥゥ」
視線の先にいるのは男子生徒に低い唸り声をあげるカイカ。声を向けられている男子生徒だけじゃない。カイカの威圧感で怯えている生徒が何人かいる。
「はぁ…何やってんだカイカ…やめろ」
「……」
僕の言葉にカイカは何も言わず唸るのをやめた。ただその目は少し悲しそうに見えた。
4限目の終わりを告げるチャイムが鳴る、昼休みの時間だ。
カバンから本と今朝買った菓子パンを取り出す。さっきの事もありふとカイカの方を見る。カイカは自分の弁当箱をカバンから取り出し食べる所だった。
…弁当箱?
少し気になって中を覗く。
色とりどりのおかずがきれいに詰められていた。卵焼き、焼き魚、野菜の和え物。見た目もきっちり整っている。
「それ自分で作ったのか?」
思わずカイカに声をかける。
「あぁ…そうだが?」
「すごいな…」
素直な感想が口から出る。カイカは普段と変わらず弁当を食べ始めた。尻尾を見るといつも以上に激しく揺れていた。
そんなカイカを尻目に僕も本を片手に菓子パンを口に運ぶ。
帰りのホームルームが終わり、放課後の時間。周りの生徒が騒ぎ出す。2日目でよくそこまで仲良くなれるな…まぁ僕には関係のない事だ。
昨日と同じで屋上に向かう。今日は最初からカイカが後ろから歩いてきている。
扉を開けると昨日と同じ光景が広がっていた。壁を背にして、本を広げる。カイカの表情が視界に入った、少し悲しそうな顔…そんな表情をされると気が散る…。
「今日の休み時間…なんで唸った?」
視線は本のまま、柵に寄りかかるカイカに声をかける。
「獣人は…神獣種は乱暴だって言われてた。」
「言われてたな」
確かに、あの生徒は言っていた。僕にもそれは聞こえていた。
「なら…そう思われてるなら、そう振る舞えばいい」
「……」
「望み通りだろ?」
カイカは無理に笑う。それは自嘲しているように見えた。
空気が重い…こういうのは苦手だ。だから…
モフッ
隣で垂れてる尻尾を掴む。
「それ…楽か?本当は怖がられたくないクセに?」
「それは…」
「それに面倒だろ?他人の意見をいちいち気にしてたら」
「……」
「僕は面倒だ」
カイカを見る。耳も垂れ、悲しそうな目をしていた。
「まぁ僕には関係ない事だけど…ただ隣で唸るのはやめろ、うるさい」
カイカの尻尾をモフモフしながら言葉を続ける。
「それに、僕もお前が怖くなるかもしれないだろ?」
「あ……今は…怖いか?」
困ったように口をパクパクさせてカイカが聞いてくる。その声は震えている。
「昨日も言ったぞ?”カイカは”怖がられたいのか?」
「違う…怖がれたくない…」
泣きそうな声。
ぎゅむぎゅむ
カイカの尻尾の手触りが良くて止まらない。
「……そろそろ離せ」
「無理」
「じゃあ代わりにウェルベルの触らせろ」
「それも無理」
カイカの文句は気にせず触り続ける。カイカの顔にはもう悲しさは消えていた。
しばらくはカイカの尻尾を片手に本を読む。不満顔のカイカは無視する。
そろそろ帰るか、そう思い立ち上がる。
「帰るのか?」
「うん」
屋上を出ようとしたら、うとうとしていたカイカが声をかけてくる。
「ウェルベル…また明日」
昨日僕が言った言葉、今度はカイカの方から行ってきた。
けどーー
「ごめん…明日は休む」
「な、なんでだ?!」
驚くカイカを無視して屋上から出る。説明は面倒だ。
僕も他の生徒のこと言えないな…カイカとあって2日目なのに。
ベタベタな文面入れときます↓
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