CHAPTER 10 — Feast of Fighters
ナポリの街角に、冬の陽光が金色の筋を描く。
古びた石畳に反射して、街全体が微かに輝いている。
ラコローネは無目的に歩く。
破れた服、鈍く光るオーラ、静かに反抗する足取り――まるで世界に背を向けた孤独な狼のようだ。
――ビュッ!
風が紙切れを巻き上げ、顔に叩きつける。
ラコローネは紙を剥がす。眉をひそめて。
> 「グランド武術大会——賞金:2万ドル+食事付き!」
――は?
「大会……か。退屈そうだな…」
しかし――腹が鳴った。
ぐうううっ!
その音は屋根の鳩を飛ばすほどだ。
ラコローネは細かい文字を凝視する。
「予選通過者には全員食事付き……?」
表情がパッと変わる。
神の啓示か、奇跡か――。
> 「二万ドル……そして食事?」
手のひらを叩きつけ、オーラが微かに燃え上がる。
> 「高尚な理念なんてクソだ! 空腹に名誉はない!」
目に炎、魂に飢えを宿して、会場へと歩き出す。
登録ホールは戦士たちの熱気で溢れる。
レスラー、ボクサー、武術家、街のチンピラまで――まるで戦場だ。
受付係が訊く。「名前は?」
ラコローネは微笑む。
「書け、『魂もビュッフェも喰らう者』」
一瞬の静寂。次の瞬間――**ドッ!**と爆笑が巻き起こる。
「ビュッフェ……? 戦闘スタイルか?」
ラコローネは口元にかすかな笑み。
「すぐにわかるさ……」
アリーナは熱気と歓声に包まれ、僧侶から傭兵まで、舞台は整っていた。
ナレーションが囁く。
「だが一人だけ、栄光のためではなく――食事のために歩む者がいた」
ラコローネはあくびをする。
「弱すぎるな…」
最初の対戦相手が突進してくるも、彼は無表情で呟く。
ほとんど動かない。
指先をひと振り――
バシュッ!
相手はぬいぐるみのように吹き飛ぶ。
観客席からどよめき。
次の戦士も、さらに次も――戦いは短く、動きは優雅で恐ろしいほど正確。
「止められない……」
審判が顔を青ざめて囁く。
「さあ! 決勝前に食べろ!」
トレーナーが皿を手渡す。
ラコローネは飢えた聖人のようにパスタを見つめ、数秒で平らげ、涙を流す。
「食事……久々の本物の食事……」
コーラを一気に飲み干す。
「ちょ、ちょっと!」トレーナーが叫ぶ。
「窒息するぞ!」
「ならば、満たされて死ぬだけだ」
ラコローネは真剣に答える。
皿は次々と消える。
「もっと持ってこい!」
また一皿、また一皿――**パッ!**と消える。
皿は空腹の神殿のように積み上がる。
シェフが飛び出して叫ぶ。
「厨房まるごと空にする気か!」
頬を膨らませ、ラコローネは軽く頭を下げる。
「すまん……でも力がいるんだ」
静寂、そして笑い。
シェフは腕を組み、ため息。
「力か……ならデザートも必要だな」
光り輝くイタリアンゼリーを差し出す。
ラコローネの目が輝く。
「これは……天国そのものだ」
何週間ぶりか、神ではなく人間として微笑む瞬間。
周囲の戦士たちは歓声を上げ、笑い、酒を飲む。
背中を叩き、「パスタモンスター」と呼ぶ。
トレーナーは笑う。
「今夜はお前の席もある。休め――決勝は明日だ」
ラコローネは最後にゼリーを一口。
周囲の温もりを見つめる。
> 「神でさえ、ささやかな優しさを必要とする」
月光が寮を銀色に染める。
ラコローネは窓辺に立ち、遠くを見る。
「明日……賞金は俺のものだ」
そしてそっと呟く。
「でもそれより……」
淡い光が隣に――キラの魂。記憶の中で微笑む。
回想――彼女の笑い声が虚空に響く。
> 「ここで会うと約束したな」
囁く。
「この世界で」
拳を握り、紅いオーラが脈打つように揺れる。
> 「愛のためなら、地獄もまたくぐる」
月光が微かに震え、同意するかのように。
別の場所、アリーナの地下。影が揺れる。
フードを被った戦士が暗く笑う。
「奴……ラコローネ……朝日は拝めまい」
後ろに微かに紅い光――王の悪意の残響。
> 「喜びの中にも、闇は待つ」
夜が重く落ちる。
――グーグー――
巨大ないびきが寮に響く。
「神よ、砲弾よりうるさい!」誰かがうめく。
トレーナーは枕で頭を覆う。
「起きてるより寝てる方が怖い!」
ラコローネは寝返りを打ち、よだれを垂らしながら夢語り。
「もっとパスタ……魂ソースで……」
夜明け。戦士たちは汗と共に鍛える。
打撃の音が戦鼓のように響く。
ラコローネは首をポキっと鳴らし、パンを食べながら座る。
> 「他の者が血を流す中で」
ナレーションが囁く。
「彼はただ消化していた」
夕方、ポスターが壁を埋め尽くす。
> 「ラコローネ――予選の怪物!」
アリーナに歓声が轟き、光が舞う。
審判の声が震える。
「明日……真の戦いが始まる!」
ラコローネは追放以来、久々に生きている実感を覚える。
後に一人座り、遠くの歓声が消える。
「キラ……」手を見つめ、囁く。
「来るなら……世界そのものをひざまずかせてみせる」
目が淡く紅く光る――怒りではなく、目的の光。
> 「食事のために来た」
ナレーションは囁く。
「だが運命は彼に目的を与えた」
手を胸に押し当て、キラの透ける姿が光る。
「お前のために……全てを耐え抜く」
外の光は運命の鼓動のように脈打つ。
暗い路地。空気が歪む。
声がどこからともなく囁く――スカーレット・キングの声。
「そう……力を養え、器よ。飢えに縛られよ」
ラコローネは寮で安らかに眠る。
カメラは遠くの輝くアリーナにパン――光の宴が嵐を待つ。
> 「明日」
ナレーションが告げる。
「拳の宴が始まる……
そして影は魂を食らう」




