なろう系打ち合わせ会議7
瀬能さんとなろう系小説担当者の会議。今回のテーマは「コンテンツの奪い合い」
瀬能「・・・なんですかね。」
担当「どうしたんですか?先生。」
瀬能「アニメかと思って予約録画したら、ドラマでした。・・・なんですか、あれ。」
担当「よくありますよね。最近。」
瀬能「ダマされました。ダマされました。私の貴重なハードディスクの容量を返して下さい!」
担当「そっくり消せばいいだけの話じゃないですか。」
瀬能「そうなんですけど。ほら、昔と違って、テレビの録画する時も、野球中継で録画の時間がズレてまるまる撮り損ねたなんて事はなくなりましたが、別の予約録画問題が発生中ですよ。」
担当「そういう延長戦する試合に限って、実は、後世に語り継がれる試合だったりするので、あながち、撮り損って事もないですけどね。」
瀬能「いや、撮り損です。私、野球に興味が一切ないので。」
担当「・・・野球も好き、アニメも好き、ってオタクさんもいっぱいいますから。ほら、野球に関しては各ご家庭のお父さんが、監督気取りで見てますから、下手なオタクより知識がある人、いっぱいですから。今は芸能の仕事、やめちゃったスポーツ・マッスル・アソシエート・・・SMA」
瀬能「Pの」
担当「そのリーダーさんなんて知識も人脈も業界内で随一と言われていますから。あんな事がなければ。」
瀬能「あんな事がなければ、ねぇ。野球の話じゃありません。録画の話です。アニメならアニメ、実写なら実写と書いておいて欲しいんです。実写なら録画しなかったんですから。」
担当「・・・先生、ドラマの事を実写って言い方もどうかと。」
瀬能「実写は実写じゃないですか。あれなんですか、コンテンツに関して、絞り取れる所まで絞り取ろうって魂胆なんですか?あれは?」
担当「最良のコンテンツと言いますか、売れるコンテンツは、媒体が変わろうが、売れますからね。これは事実です。」
瀬能「思い出した。そう言えば、進撃の巨人も、アニメかと思えば、実写になってましたね。最初の煽り文句が、実写不可と言われた作品を初の実写化!・・・うるさいですよ、そりゃ初でしょうよ、初めて実写で撮ったんだから。後に続かないだけで。続編、作ってみせろよ!って話です。」
担当「進撃に関しては、進撃の巨人うんぬんではなくて、見ている客層が違うから、客の奪い合いにならないんですよ。これまた上手くゾーニングが出来ていると言いますか、漫画は漫画。アニメはアニメ。実写は実写、って具合に、お互いに干渉しあわないんですよね。不思議と。」
瀬能「原作読んでいる人は、実写なんか見ない、と。」
担当「平たく言うとそんな感じです。実写は、出ている役者のファンもありますから、あの役者が出ているから実写を見ようって思考するんですよ。別に作品が進撃である必要性は特にないんです。アニメも同様、今は声優ファンがついてますから、進撃というよりは、この声優が出ているからアニメを見てみようって思考になるみたいです。コンテンツを管理している、大元、製作会社より上、講談社は、相乗効果があって欲しいと思っていますが、なかなかそれは難しいようで、綺麗にゾーニングされちゃっているという感想です。・・・全部、見てくれれば、もっと儲かるのにね。が本音です。」
瀬能「そうでしょうねぇ。売れて欲しいと思います、よ?・・・ただ、ほら、ねぇ。原作をアニメにするって言うだけだって敷居が高いのに、別事業で、実写ドラマ化、実写映画化。実写のハードルの高さは異常ですよ?まず原作好きな人間は見ないでしょうから。・・・キングダムも何故か実写に力いれているのも気がかりです。」
担当「メディア化されたコンテンツは、原作とは別のものとして、楽しむしかないですよ。ドラゴンボールみたいに、原作の方を補強してくれるアニメであれば、お互い、売れるんですけどね。」
瀬能「80年代ジャンプアニメはハズレが少ないと言いますが、あれは、原作の雰囲気だけをアニメに持って行って、ほぼほぼオリジナルアニメだから、見ていて面白いんです。アニメだから。それで原作を読むと、え?なにこれ?アニメとぜんぜん違うじゃん?って事の方が多かったです。アニメ屋はアニメ屋。漫画屋は漫画屋なんですよ、結局のところ。それにあれですよ、夜7時とか、お茶の間のゴールデンタイムに堂々とアニメ流していたわけですから、そりゃ、見ますし、売れますよ。家族で見るんですから。」
担当「プロ野球シーズンはお父さんとチャンネルの争奪戦でしたけどね。」
瀬能「私、友達に、小説、紹介されて、読んでいるんです。ほぼほぼ実話なんですけど、私、その友達にソロモンの偽証、全巻、プレゼントしたんですよ。そしたら、反対に、天久鷹央を紹介されたんです。買って読めって。」
担当「先生が本をプレゼントしたら、反対に、紹介された?と。・・・金銭的なバランスが合わない気がしますけど、そこはスルーしますね。」
瀬能「ええ。全巻で五千円ぐらいしたかな。文庫本だから安いと思って高を括っていたらレジに持って行ってビビった思い出があります。それで、天久鷹央ですよ。知念先生の。仮面病棟で有名な。アニメになったと思っていたら、橋本環奈で実写ですよ?え?って思うでしょ?」
担当「別に、思わないですけど」
瀬能「これ微妙なんですけど天久鷹央シリーズって厳密にはラノベじゃないんです。ラノベのレーベルじゃないレーベルから出ているんです。中身はラノベですよ。間違いなくラノベです。ラノベなんですが、知念先生がラノベを書くと、小難しいんですよ。ラノベを書きたいっていう想いは伝わってくるのですが、ギャグも冗談も中途半端。設定は設定負け。なぜか挿絵をいとうのいぢ先生が書いていて、いとういのぢの良さを殺しているというか。主人公が合法ロリなんです。」
担当「合法ロリ?」
瀬能「みんな大好き合法ロリですよ。見た目、かわいい中学生なのに、中身は大人。そのギャップ。萌え~」
担当「コナン?コナンですか?」
瀬能「私が言いたいのは、そういうラノベ的な設定を主人公にしてあるのにも関わらず、合法ロリが活かされていない!合法ロリと言ったら、定番、かわいいかわいい頭なでなで、うへへってやったら、子ども扱いすんなー!が、お約束なんですよ。紀元前から決まっているお約束ですよ!神話の時代からの!」
担当「・・・はぁ。」
瀬能「まったくぅ設定が活かされていない。つるぺたチェストを嘆くとか、もっとあるでしょ?お約束なんですよ!」
担当「熱いですね、いつになく、先生。私は若干、引いてますが。」
瀬能「それに、回が進むにつれて狂人になっていっています。ただ単純に頭のおかしい人なんです。・・・あの、相棒の右京さんいるじゃないですか、あれをもっと酷くした感じです。社会性が無いんです。読んでいて、痛々しいんですよ。痛いんです。下手したら会話が成立しないんです。小説の主人公として相応しくないと思います。・・・狂人と、ゆかいな仲間たちになっているんですよ。私、途中で、お腹いっぱいになってしまって、挫折中だったんですが、そしたらアニメ化でしょ、NHKの朝ドラが終わるタイミングで、橋本環奈が実写ドラマ化。ま、コミックにもなっていますが、あれは、等身が大きいので、合法ロリとはいえません。」
担当「実写ドラマに関しては、万年、ドラマの原作不足が続いていますから、知念先生の場合、映画化の実績もありますし、若手女優、アイドル寄りの女優を使った、コメディドラマとしては使い勝手が良かったんじゃないでしょうか。橋本環奈はシリアスより、コメディの方が相性がいいですからね。」
瀬能「確かに、医療系ドラマをやるにあたって、原作の小説なり漫画が、テレビ局に消費されていきますからね。医療系だけじゃないですけど。ほぼ全てのドラマのプロデューサーが原作不足に喘いでいますからね。」
担当「コンテンツの奪い合いです。一つの作品を、アニメにするにしても、実写ドラマにするにしても、利権が違いますから。それだけ大きなお金が動きます。」
瀬能「原作を抱えている出版社と、広告代理店だけでしょ?儲かるのは?・・・人気がないと分かれば、すぐ円盤出させて回収できる所まで回収して、手をひく。綺麗に手をひく。手のひら返しも凄いですけど、あのハイエナ並みの嗅覚は凄いとしか言えないですね。」
担当「金の臭いに敏感でしょうし。広告代理店という人種は。」
瀬能「まだアニメも見ていないトリリオンゲームとか、気が付けば映画やっちゃってるし、ファブルにしたってそう。中国の後宮を舞台にしたアニメ、やってるじゃないですか?コミックスが別系統で出ているでおなじみ、非課税版と課税版と揶揄されている。」
担当「薬屋さんのアレ?」
瀬能「私、アニメ絵が好きなので非課税版の方が好きなんですけど。あれもそのうち、実写ドラマ化されそうな気がしています。実写で、異世界転生ファンタジーをやるのは色々無理がありますけど、薬屋さんなら、まだイケると思うんですよね。西遊記が撮れるんですから、後宮ものだって撮れると思うんです。まあただ、お妃をやれる女優が検討つかないですけど。」
担当「ほら、大奥。男子の奴じゃなくて、本物の大奥の方。あれが出来るんですから、大丈夫じゃないですか?」
瀬能「日本の大奥の場合、春日局とか、偉い人は、それなりに歳がいっている人でも問題なかったですが、子供を産む妃っていう設定ですから、若くないとダメなんです。しかもオッパイが大きい設定ですから、イエローキャブなみに、大きくないと。」
担当「全盛期の浅野ゆう子のイメージですよね。全盛期の。」
瀬能「オッパイが大きくて、背がそこそこあって見栄えがして、しかも、愛嬌がないとダメなんです。この愛嬌の部分が、日本人の女優は下手というか。」
担当「三井のすずちゃん、あたりしかいないでしょうね。」
瀬能「三井のすずちゃん、妃役にぴったりですね。オッパイ大きいし。」
担当「主人公は、貧祖な体で有名な、浜辺の美波ちゃんあたりでしょうか。」
瀬能「それは知りませんが」
担当「先生!なんで突然、ハシゴ、外すんですかぁあああ!」
瀬能「思い起こせば、スマップのリーダーが、味いちもんめ、やってたりしたなぁと思って。美味しんぼも実写化されてたし。思い出した。私、フレンドで好きな漫画が実写化されたんですよ。それ、見なきゃと思っていて、まだ見ていないんですよね。」
担当「・・・なんですか、フレンド?」
瀬能「すえのぶけいこ先生のリミットです。もう好き過ぎて月刊でも読んでいたし、単行本が出ればすぐ買ったし、それでテレ東の深夜枠でドラマ化されるんで、期待していたんですけど、睡眠欲には勝てず、そのままハードディスクの中でいまだに眠っています。見ないといけないんですけどね。ありさ様をどう演じているか、気になります。」
担当「別冊フレンド?ああ。」
瀬能「フレンドは正直、美川べるのの漫画を読むためだけに読み始めたら、すえのぶけいこにたまたまハマってしまって、ずるずる読んでいましたが、校舎の裏には天使が眠っているが連載終了したと同時に、やめちゃいました。校舎裏もそうですけど、美川べるの、実写化されないかなぁ。」
担当「今はもう、優良な、売れそうなコンテンツは、世界中からバイヤーが日本に押しかけていますから、国内の取り合いだけじゃなくて、世界で撮り合い合戦しています。」
瀬能「ドキュメント72時間で見た気がします。」
担当「ヨーロッパのバイヤーが、売れる漫画、売れている漫画をチェックしていましたね。あのレベルまでいったら、ワインの目利きと一緒ですよ。売れている漫画より、これからヒットする漫画を、いち早く見つけて、本国に売り込むって、相当、勉強していないと難しいですからね。」
瀬能「そういうのって、漫画の良し悪しだけでなく、市場の動向、出版社との折衝、そもそも日本のカルチャーに詳しくないと出来ない芸当ですからね。金、石油の先物取引より、漫画の先物取引の方が、私は、高難易度だと思います。売れたらそれだけマージンが凄い事になるのでしょうけども。独占ですからね。」
担当「日本の市場においても、優秀な漫画家なりを、中国や韓国から青田買いしているって話です。日本人の漫画家が連載を競うんじゃないんですよ、国境を越えて競っているんです。まんが道も国際化ですよ。」
瀬能「あれでしょ?そういう海外の漫画家志望の人に、絵の描き方、シナリオの作り方、ネームの切り方、教えているんでしょ?オタクの英才教育ですよ。出ない芽なら育てればいいって、どれだけ金に執着しているかが分かります。金のなる木、金のたまごを産む鳥を育てようとしているんですから。」
担当「傲慢ですよね。傲慢としか言えません。そういう養殖はある程度、伸びると思います。一定の水準の漫画は書けると思いますが、やはり、天然の、天才には敵いませんよ。天才はやはり天才なんです。そういう天才をいかに発掘できるかが、出版社なり、コンテンツ事業を行っている人間の命題なんですよね。
ですから、先生。・・・面白い奴、一発、お願いします。ドカーンと世間が注目する作品。お願いします。」
瀬能「え?私、がんばっていません?」
※本作品は全編会話劇です