なろう系打ち合わせ会議11
瀬能「嗚呼!媚を売って、作品を売りたい!本を売りたい!」
担当「どうしたんですか、急に。」
瀬能「最近、youtubeでR藤本ばかりオススメに出てきて、見た事ないDB芸人の話を、サブリミナル効果みたいに聞かされて覚えてしまいそうですぅぅぅ!」
担当「知りませんがな。”嗚呼”なんて言葉、多小西応援団ぐらいにしか使いませんよ?」
瀬能「それこそ知りませんがなぁ! 担当さん。ご存知ですか、今、出版社、アニメ業界で覇権を取っているのが”薬屋”だってことを!」
担当「”薬屋”ですか。・・・・薄々感じてはいたんですが、知らないフリしてやり過ごしてきましたが、やはり、覇権を取っていたんですね。」
瀬能「ええ。まずいぐらいに覇権を握っています。私はむしろ、この”薬屋”の人気っぷりは一時期の”鬼滅”を超えていると思うんですよね。」
担当「”鬼滅”を超えているなら、もう、本物ですよ。」
瀬能「所詮”鬼滅”はジャンプじゃないですか」
担当「いや、あの、ジャンプの時点で選ばれし者なんですけどね。しかも、打ち切りじゃなく、ちゃんと、終わらせている、っていう快挙。」
瀬能「”鬼滅”に火がついたのは、逆輸入と言いますか、アニメ1期の初期はまるで相手にされていませんでしたが、2クール目から徐々に、達っつんの嫁さんこと、LiSAとかいう歌手が歌っている紅蓮華という歌がカッコイイと広まって、アニメが火がついたんです。アニメに火がつけば、更に逆輸入で、原作コミックスも売れた、という具合で、LiSAの功績が全てだと言っていいでしょう。更に言えば、版権を持っている集英社の、節操のない商品展開は侍のように潔かったと思います。誰とでも寝るキャラクターと揶揄された、キティちゃん並みに、あらゆる商品に”鬼滅”を貸し出し、莫大なロイヤリティを稼ぎました。便乗する、エセ鬼滅業者をしっかりロイヤリティを取っていたら、とんでもない事になっていたでしょうね。」
担当「社会現象ですからね。”鬼滅”は。」
瀬能「私は興味なかったんですけど、テレビで、鬼奴さんが面白いと言っていたので”テセウスの船”と一緒に、読んでみました。その後、最終回までジャンプで追うんですけど。結局、バトルものって、敵が変わるだけでやっている事は同じじゃないですか?そこが弱点だったかなと思います。回想シーンも入れているけど、それほど、箸休めにもならなかったですね。だから、あそこで足早になってしまいましたが、最終回をやってしまって正解だったんじゃないかと思います。そこ言うと”銀魂”の松陽先生やら裏社会の連中と総バトルするのも、ちょっと食傷気味になってしまったんですよね。そこを描かないと終われないっていうのは分かりますが、”銀魂”は”トライガン”じゃないんだから運命と戦う必要はあるのかな?と正直思いましたし、あれって”シティーハンター”じゃないですか、”銀魂”って。総じてアニメのテンションで原作の陰鬱さを消していたに過ぎなかったんじゃないか、と当時を振り返ると思いますね。”銀魂”は。」
担当「”鬼滅”はLiSAでもっていたのは確かですからね。」
瀬能「そうじゃないんです、問題は”薬屋”の方なんですよ。先程も言った通り、私の肌感覚では、”鬼滅”を超えています。ただ、”鬼滅”みたいにばかばか商品展開をしていない分、鳴りを潜めていますが認知度から言って、かなり広い層に受け入れられています。ホントに凄い事ですよ。
まったくアニメを見ないであろう、近所のオバちゃんが、あれは面白いと言って、夫婦で見ていると言っていました。わかります?この感覚。60過ぎたオバちゃんとオジさんが、”薬屋”のアニメ、見ているんですよ。あの手の人種は、アニメの事をマンガと呼ぶし、見るアニメと言ったら、ジブリとディズニーですよ。そんな人種が、”薬屋”面白いとか、私に言ってくるんですよ?いや、この肌感覚からして”鬼滅”を越したなと思いました。老若男女ですよ、文字通り。・・・・ま、高齢者が見てくれているアニメはたいがい国民的アニメですから、覇権を取って当然なんですけどね。」
担当「言いたい事はわかります。普段、アニメを見ない層が見ている時点で、人気があるというのは確定ですから。」
瀬能「”薬屋”の人気の秘密ですよ、問題は。現在、人気とされるなろう系は”薬屋”と”スライム転生”です。”薬屋”は主に大人中心でありますが老若男女に受けています。一方”スライム”はキッズを中心に受けています。どちらも絵師ガチャSSSなんて呼ばれている様に、キャラデザインの作家で売れているのは間違いありません。これも一つの要因だ、と言う人もいますが、それを含めて、運を持っていると言ってよいでしょう。いずれコミック化、アニメ化される時に、キャラ人気がついていれば怖い物がありません。反対に言えば、良いキャラデザインが出来なかった場合、いくら原作小説が面白くても、絵が足を引っ張るだけ。何もいい事がありません。”薬屋”に関していえば小説も独壇場だと聞きます。決して、読みやすい文章ではないのに、売れている。人気があるから買って読んでみる、という事なんですよ。」
担当「辛辣ですね、先生。」
瀬能「正直私、”薬屋”は非課税版のコミックしか読んでいません。ああ、非課税版というのは通称で、以前にも話しましたが、コミカライズが2種類あって、課税版と非課税版などと呼ばれています。ガンガン版の方なんですけどね。”薬屋”はコミカライズが成功した本当に良い例だと思っています。分かりにくい、読みにくいと評される原作小説を、ビジュアル化して、明らかに物語を把握しやすくなった、という点は、多大なる功績だと言えます。確実に、売り上げに貢献しているし、ネームと言うんでしょうか、コンテを切っている人が天才なのは言う間でもありません。原作者より私は、その人の方が有能ではないかと考えるくらいです。」
担当「只でさえ、登場人物が多いのに、耽美な人物も出てきますから、それを文字情報だけで伝えるのは今の時代、難しいですからね。平安時代じゃないんだから。」
瀬能「まぁでも、ホンモノは文字だけでハァハァするもんですよ。・・・・真なる文芸者たる中学校、高校の文芸部の人は、文章だけで恍惚するものですから。いやぁ変態ですよね。高度過ぎちゃってついていけないですよ。」
担当「そういう特殊な人も中にはいらっしゃいますけどね」
瀬能「多くの人は、コミカライズで視覚化された方が理解しやすいですから。とくに”薬屋”は登場人物も多いし、人間関係も複雑だし、半分、ミステリーだし、要素が多いので高度な文芸者じゃない限り、全体を把握するのは難しいです。私は漫画でしか読んでいませんけど、漫画だって情報量多くて大変なのに。」
担当「そういう意味では、”絵”ガチャで勝ったのは大きかったでしょうね。ビジュアルだけで入っていけますから。絵で拒絶反応しちゃう人も多いですよ、最近は。」
瀬能「売れている要素として特に強いのが、女、年寄りを取り込めた所が非常に大きいですね。アニメ、漫画で女、年寄りを取り込めればもう、勝ちは確定でしょう。これでパチンコ、スロットを出したら中年のオジサン層も取り込んで、覇王ですね。覇王。海賊王より先に覇王翔吼拳ですよ。」
担当「もう何を言っているのかわからないです。」
瀬能「”薬屋”は売れる要素をあらかじめ持っていたのと、全世代性別関係なく、取り込める要素があったのだから、覇権を取るべくして取ったと言っても過言ではないでしょう。分析するまでもなく。まず、時代劇。男子禁制の女の花園、耽美な男性キャラクター、閉鎖世界で行われる陰湿な戦い、ミステリー、女どうしの戦い、平民からののし上がり。これだけ見ればアニメ、漫画にしておくのが勿体ないシチュエーションばっかりで、売れる要素てんこ盛りです。気づいたと思いますが、女、年寄りが、スッと入っていけるドラマ設定じゃないですか。そりゃアニメ、漫画に抵抗ある人間も自然に見ますよ。ハリー・ポッターみたいに剣だ魔法だ、言っているわけじゃなくて、チャングム、トンイを見ていた人なら自然に入っていけますから。」
担当「チャングムの既視感がある人は、まぁ、それが漫画になっただけって思いますよね。」
瀬能「チャングムのおかげですよ。これ、チャングムの下地がなかったらやっぱり、どこか、異世界ファンタジーですからね。いくら中国とはいえ。」
担当「そうですね。皆が皆、三国志やら水滸伝が好きなわけじゃないですからね。」
瀬能「チャングム、チャングムって言ってますけど、むしろチャングムだろ?って話もありますが、チャングムよりなろう系異世界転生ですから安心して見ていられます。」
担当「それ、褒めているんですか、貶しているんですか、先生」
瀬能「何故か、いくら皇帝の診療を許された医者とはいえ、それに育てられた養女ですよ。それが現代文明の医療知識を使って無双しているのです。そこら辺のガバガバ設定が異世界転生として安心して見ていられます。でも、そこが肝心な所なんですよ。別に、女、年寄りはちゃんとしたチャングムが見たい訳じゃないんです。時代劇だって、リアリティばっか追及しているものより、水戸黄門みたいなガバガバ時代劇が見たいんです。チャンバラが見たいんです。ですから、現代科学で当たり前の事。例えば、小学生の理科の実験程度の知識の方が、昔の人はこんな事も知らないの?って具合に優越感を持って、見ていられるのです。綾瀬はるかの仁・JIN・ジンですよ!あれと一緒です。ならぬことは、ならぬのですぅぅぅぅぅぅ!」
担当「・・・まぁ。そうですね。芝居とドキュメントは違いますからね。」
瀬能「一時期、1チャンの大河ドラマでリアリティを追求した挙句、女優がしっかりおはぐろをつけたり、着ている衣装が薄汚れていたり、しわだらけだったり、あまつさえ、夜は暗かったと言う理由で照明を暗くして、俳優の顔がテレビで映らなかったという奴がありました。名前はあえて言いませんけど。そんな大河。見て面白いと思いますか?私達は面白い時代劇として見たいんです。別に当時の暮らしとか、そんなに興味ないし。最近の大河も、派手な合戦がなくなってしまって悲しいですけどね。1チャンは金があるんだから、もっと爆発とか使って見栄えの良いドラマを取ればいいのに、と思います。ならぬものは、ならぬのですぅぅぅぅぅ!」
担当「先生、綾瀬はるか、好きですね。」
瀬能「そのへん”薬屋”は上手にやっていて、まぁ、アニメだから画面が暗くてキャラクターが見えないって事もありませんし。主人公が、天才なのか察しが良いのか分かりませんが、だいたい事件を解決してしまいますし。」
担当「えぇぇ?そういう物語じゃないですか。」
瀬能「いやいや、待ってください。”薬屋”はコロンボ方式なんですよ。古畑任三郎方式なんですよ。事件が起きて、それで犯人なりを推理して、勝手に”ひとり言”として忠告する、という物語だったはずです。それが、もう、いつのまにかチャングムですよ。事件を未然に防ぐようになってしまいました。はぁ? ”ひとり言”じゃないじゃん。一休さんですよ、一休さん。”あわてなぁ~い、あわてなぁ~い、ひとやすみ、ひとやすみ、ポクポクポク、チーン”ですよ」
担当「明らかに身分の偉い人が無理難題をふっかけてきて、知恵と勇気で解決していきますけどね。」
瀬能「あれ、一休さんなら、最終的に出世しますけど、”薬屋”さんも最終回あたりで、実は、史実に残っている偉い女官だった、とかだったら神ですけどね。もしかしたら終わるに終われなくなって、そういう畳み方をしてくるんじゃないかと予想はしてますけど。それに、昔から、女子は、耽美な男性キャラクターと恋に落ちるのは定番ですから。燃えるって奴です。萌えるでもいいですけど。」
担当「いつの時代も、白馬の王子様の要素を持った話をリリースしていますから。ティーンの女子の必ず通る道ですし、それを出版社としても、マーケットとして押さえているんですよね。あれ、知ってます?先生。セボンの」
瀬能「水洗トイレの洗浄剤が、、、、何か?」
担当「お菓子の、宝石みたいな、やつあるじゃないですか」
瀬能「セボンスターです。カバヤの主力商品じゃないですか。あれ、女児の人気が常にあるって言いますよね。」
担当「それです、それ。セボン。」
瀬能「セボンスター。お子さんに買ってきてって言われて、トイレの洗浄剤買ってきたら、お嬢さんに確実に口、聞いてもらえなくなるし、一生、言われますよ。結婚式のスピーチで言われますよ。パパが便器の薬、買ってきたって。結婚できたらの話ですけど。」
担当「いや、だから、プリキュアもそうですけど。ディズニーのプリンセスしかり、キラキラして煌びやかで、カッコよくて、頭が良くて、優しい、っていうのは女子の鉄板ですからね。」
瀬能「サンタさんと一緒で、何時の間にか、夢を忘れてしまいますよね。現実を見てしまうというか。・・・王子さまは幻想で、生きる世界が違うというか、私は庶民なんだな、って何時の間にか、思い知らされますよね。」
担当「遠い目をしないで下さい。」
瀬能「やっぱりアレですかね。友達の家が裕福だったりすると自分の家と比べたりして、夢がなくなっちゃうのかなぁ。現実って悲しいですよね。現実って。・・・・ピーターパンか、ファルコンが家にも来ないかなぁ。」
担当「・・・先生、半分、ピーターパンみたいなもんでしょ?人の夢、食って生きているんだから。」
瀬能「誰がバクですか! キリンレンジャーですか!」
担当「都合が良い方に解釈しないで下さい。」
瀬能「日本人って、大奥とか好きじゃないですか。吉原とか。あ、現実じゃなくて物語上のですよ。男子禁制、女人禁制っていうのに、憧れはあるんですよ。あこがれぇぇぇぇぇぇぇぇ!突然の宇多丸!すみません、突然、スイッチが入ってしまいまして。憧れって言葉がキラーワードなんです。すみません。
あと、ドロドロした人間関係。憎しみ、嫉妬、憎悪、妬み。これ、みんな女が好きな言葉ばっかりです。」
担当「綺麗な言葉が聞こえてこないんですけど。」
瀬能「プリンセスとか王子様とか、キラキラ輝いているものより、人間の本質的な黒い部分が女は大好きなので、松本清張万歳!横溝正史万歳!グロテスク大好き! なんなんでしょうか女って生き物は、自分で言うのも変ですけど、血が好きで、人が断罪されたりするのが面白いんですよね。ふわっとしていてフリル大好き、レース大好きって言っている男を知らなそうな顔している、プロ女もそういうのだけは好きですよ。」
担当「プロ女ってなんなんですか?プロ女って」
瀬能「ああ。男が騙される女です。あの、ステレオタイプの男が好きな女を演じられる女の事です。プロ中のプロです。処女じゃなくても、男を知らない演技をしますし、なんだったら処女だったように演技しますし、端から見ていてもプロだなぁって思いますよ。私は嫌いじゃないですけど、好きじゃないですね。感心はしますが。特に、関心するのが股を開かないのに、セックスするんですよ?おかしくないですか?股を開いているんですよ、実際は。でも、開いてないように錯覚させるというか。あああ、プロは違うなと思いました。」
担当「・・・・そういう女性がいるんですね。」
瀬能「世間にはゴロゴロいますよ、男を知らないフリしている女が。そうそう。”薬屋”はそういう所を隠さない所も好感が持てますね。むしろ先輩女官の方が、ウブなフリしているというか、そっちの方が、男の人には受けがいいんでしょうけど。アニメなんかは上手くごまかして表現していますけどね。それに、男も女も権力争い。これは興奮します。大奥だって、上様の寵愛を受ける為に、権力争いがあって、そこが見応えがあったわけじゃないですか。ドロドロしている方が面白いです。もう、人間関係とか相関図とか分からなくなってきてしまいますけど、単純に、偉そうにしている奴が屈服するのが見ていて愉快なんです。それだけです。」
担当「単純にそうですよね。」
瀬能「さっき言ってた近所のオバちゃんに、”薬屋”見た?って聞かれて、任氏様が~とか言っちゃったら、平気でひかれてしまって、振ったはそっちだろ?と思いましたけど、やっぱりオタクと一般人では見ている内容が違うんだろうなぁとは思いました。いや、そういう事じゃない。根本的な、ドラマの部分でオバちゃん達は見ているんだな、と思いました。どの層にも見てもらえている作品は、けっきょく、強いですよ。」
担当「そうなりますよね」
瀬能「だから私も媚を売りまくって、売れる作品を書いていきたいと思います。あのねぇ、岡田が評論するような作品はダメなんですよ。お金にはならない。”薬屋”みたいに万人受けする作遺品を書かないと。」
担当「岡田さんは評論芸ですから。BSマンガ夜話だけならまた見たいなぁ。」
瀬能「女、子供、年寄りに媚を売った小説を書く。やはり、時代劇で、身分を隠した、女の姫が、諸国を漫遊しながら悪をこらしめ、旅の先々で現れる謎の端正の整った若侍。実は敵の首領の息子で、恋に落ち、結ばれない悲恋。愛。憎悪。憎しみ。痛快アクション。これは売れますね。そして、沢口靖子と由美かおるの入浴シーンはマスト。」
担当「・・・・水戸黄門と、ロミオとジュリエット、いわゆるウエストサイド。あと、科捜研? 聞いた話ばっかりですけど。」
瀬能「姫だけじゃ弱いから、未来の科学技術を駆使した武器を持っている。子連れ狼並みの科学力は欲しい所ですね。あと、山下清並みのアットホーム感も。毎回、おにぎりをもらった恩で話が始まるという。どうです?」
担当「めちゃくちゃですけど、売れますね。」
瀬能「媚を売らないと。これからは媚の時代です。」




