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なろう系打ち合わせ会議  作者: お赤飯
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なろう系打ち合わせ会議

担当「先生、あばれはっちゃくみたいな事されてますけど、何かこう、ひらめきましたか?」

瀬能「はっちゃけ、ません!・・・っていうか、ですねぇ。私、思うんですけど、『なろう系』はやりつくした感があると思うんですが、どう思います?」

担当「編集部といたしまして、まだまだこのジャンルは行けると踏んでおりまして、絞りとれる所まで絞りとろうと、そういう方針でございます、先生。」

瀬能「まだ行ける?・・・いやいや、もう無理でしょ?」

担当「世の中、手を替え品を替え、まだまだまだまだまだ行けると考えている次第です、はい。・・・ま、先生の前で大変恐縮ではございますが、永遠に出て来るネタではないかと編集部では考えておりまして、お宝を発掘した、そういう気分でいるのが事実でございますね、はい。」

瀬能「永遠にネタが出て来る訳ないでしょ?・・・海外じゃ冷ややかな目で見られているって聞いてますよ?」

担当「我々編集部は、日本でコンテンツが売れれば問題ない訳で、それを買い付ける広告会社が儲けようが、損しようが、ぶっちゃけ関係ないっていうか、我々にバックマージンが入る事もないですし。先生の所にも、入らないでしょ?」

瀬能「アニメ化したって、円盤がうれなきゃ原作の方にまで、ろくに回ってこないですよね。・・・なんですか?広告代理店っていうのは、みかじめ料とって儲けているのと変わりないじゃないですか。」

担当「あんなのは売名ですから。アニメが売れれば、原作も売れる、っていう売名料と割り切るしかないと思いますよ?」

瀬能「広告代理店の為に、今、私がこうやって、頭をひねって、ネタを考えているんですよ!ふざけた話です。」

担当「先生、様々です。どうにか、我々だけに、その天才的なネタを施していただけたらと思います。」

瀬能「うーん。『転生したらハエだった』とか言うのはどうですか?」

担当「ハエですか?仏教の教え、的な話で、そういうのありますし。それは、そのまんま仏教だか密教の教えになってしまうんじゃないでしょうか?」

瀬能「生まれ変わったらスライムだったっていうのもあるんだから、ハエでも十分、いけると思うんですが?スライムだってハエだって、前世の行いを悔いる為の苦行でしょ?」

担当「先生、それ、仏教の教えです。タクラマカン砂漠とかで授かる奴です。」

瀬能「『チート能力者、無敵だけど女の子だけは苦手だよ』っていうのは斬新な気がします。無敵なんでけど、何故か、女の子にだけはからっきし弱くて、無敵の強さを誇るのに、女の子関係のトラブルに常に巻き込まれてしまうっていう。」

担当「あります!先生、既にそういうのあります!」

瀬能「えっ本当ですか?」

担当「だいたいそういう奴ばっかりです。」

瀬能「この宇宙で一番つよいのに、クラスの女子とか、幼馴染とか、隣の家のお姉さんとか、唐突に現れる美少女外国人にだけ、弱いっていう。」

担当「あります!先生、それは、使い古されている可能性があります。一歩間違えれば、なろう系ではなく、エロマンガになってしまいます。」

瀬能「童貞臭くてウケると思ったんですけど。」

担当「先生、なろう系は主に中高生が読むので、チューまでです。」

瀬能「チューまで?」

担当「チューも、ほっぺはOKで、くちびるは、ハプニングならOKで、直接的な好意でのチューはNGと、なっております。」

瀬能「なんかそういうルールがあるんですか?」

担当「暗黙のルールというか、このルールを守らないと売れないので。ファンに総スカンを喰らうっていう意味で売れないので。」

瀬能「いやぁ、読者も童貞ですか?処女ですか?」

担当「おまけにですね、パンチラはOKなんですけど、パンモロはNGです。」

瀬能「それは作画がついた後の話でしょ?」

担当「原作の文章の中でも、そういうシーンの描写を入れていただけると売れます。はっきり言って売れます。」

瀬能「・・・文章でヌくんですか?相当、レベルが高いですね。変態の域ですね。」

担当「挿絵がつきますから。挿絵で、自主トレしていただく、そういう感じでしょうか。」

瀬能「エロ本じゃないですか?」

担当「ちがいます。先生、違います。たまたま文章に即した挿絵が、エロいカットだったってだけで、エロい絵を目当てに買うのではありません。読者の皆さんは、挿絵も当然ながら期待しておりますが、文章が下手だと、最初から買ってくれません。」

瀬能「どういう事ですか?絵でヌくくせに、文章が下手だと買わない?何様ですか?」

担当「先生、ヌくかどうかは買われた読者次第ですから。」

瀬能「みんなヌくんでしょ?」

担当「ですから、挿絵、次第です。挿絵がエロい作画の方に当たれば、売れます。」

瀬能「じゃあ、エロい作画の人をつけてくださいよ?」

担当「それは、先生、こちらの編集部で、会議して決めることなので、私の一存では決められません。申し訳ありませんが。」

瀬能「・・・売りたいんでしょ?」

担当「売りたいですけど、我々も出版社ですから、作画の先生の選出は、こちらからの一方的な意見では通りませんで。」

瀬能「ああ。作画っていうか漫画の編集部の力関係も関わってくると。」

担当「ええ。まあ。おっしゃる通りで。先生が、売れる本を書いていただければ、我々、原作の編集部も強気に出られるのですが。」

瀬能「ブーメラン?まさかのブーメラン?」

担当「売れちゃえば問題ないんですよ。先生、どうにか、我々にご尽力を。」

瀬能「最近はほら、演歌歌手だったり通販会社の社長と愛人も異世界転生したり、2ちゃんねるの管理人も異世界転生しましたよね?まさかルパンまで異世界転生するとは思いませんでした。ルパンなんて元から異世界でしょ?」

担当「生きている人間がネタにされる時代ですからね。」

瀬能「『異世界吉岡秀隆』『異世界緒形直人』っていうのはどうでしょう?いつも悔しくて泣いているっていう。」

担当「感動の押し売りみたいのは売れないので。その二人が出てたら、みんな同じになっちゃうでしょ?泣いて全部、それまでのエピソード飛んでしまいますから。泣きオチですよ、泣きオチ。」

瀬能「うーん。最強の能力とかチート能力ばっかりじゃ面白くないから、最弱の能力で、戦うっていうのはどうですか?」

担当「先生、残念ながら、既にあります。」

瀬能「最弱もダメ?最弱も。」

担当「最弱、最強って振り切っているじゃないですか?振り切っている奴はだいたい出尽くしています。」

瀬能「じゃあ、真ん中。平均値。これなら、ないでしょ?」

担当「あります!平均値、中央値で無双するやつ。」

瀬能「私をバカにしているんですか!最強もダメ、最弱もダメ、真ん中もダメ!どうにもならないじゃないですか!」

担当「ちなみに先生、左に寄ったり、右に寄ったり、そういうのは政治、思想に影響が出てしまう為、売れません。一部のマニアしか買ってくれません。ダメです。」

瀬能「じゃあ、生まれ変わったら、男が女に。女が男に、性別が逆転しているっていうのは、これは流石にないでしょう?」

担当「ああああ。それ、いちばんマズイ奴です、先生。前前前前前世的な奴で、性別が入れ替わっちゃう有名な映画があるんで、なかなか手を出しづらいジャンルです。世界的に売れちゃった映画なんで。しかも、性別が入れ替わるなんて、古典ですよ、月曜ドラマランドとかでやり倒してますからね。」

瀬能「わかりました。それじゃ、生まれ変わっても何もしない!何も成さない!それなら大丈夫でしょう?」

担当「先生、残念ながら、生まれ変わっても何もしないっていうジャンルも存在します。」

瀬能「何が面白いんですか!何もしない小説を読んで何が面白いんですか?起承転結で、何かが始まるからドラマが開始されるんでしょう?え?私、意味がわかりません。」

担当「いや、私もです。何が面白いのか理解できませんが売れています。」

瀬能「頭に何か湧いているのかもしれませんね?」

担当「私も正直、先生と同じ感想です。しかし、売れているので、我々は何も言えません。売れた者が強い社会ですから。」

瀬能「フェミニズムに応えて、『転生したら生理痛が無くなりした』ってイケそうじゃないですか?生理痛が無いっていうのは、体も心も楽で、あの体のだるさ、頭の痛さ、憂鬱さから解放されるだけで、どれだけ人生を謳歌できるか!たぶん、女主人公が無双しますね。生理痛がないだけで。むしろ生理がなくてもいいような気もします。異世界なら男が子供を産んでも問題ないですよね?」

「問題ないですけれども。先生、けっこうこの課題はセンシティブでございまして、保守派から色々、注文がきそうな気がします。保守派が噛みつけば、リベラルも喰いついてきますから。ジブラルタル海峡より細い橋かも知れません。私、怖くて、この橋、渡れません!」

瀬能「そうだ、生きているものに転生するから悩むのであって、非生命体に生まれ変わるって言うのはどうです?・・・武器とか、道具とか、ねぇ?」

担当「先生、それもあります。」

瀬能「はあああああ!どういう事ですか!武器に生まれ変わっちゃったら、武器じゃないですか!武器とか道具がどうやって物語を進めていくんですか?ジェイデッカーで武器になっちゃうロボットが1週、それで悩むんですよ?俺は武器か、それともロボットかと。ガオガイガーは、俺を使え!とか言っちゃいますけど。悩まないで、最初から武器?道具?ええ?それって転生っていうんですか?」

担当「先生のおっしゃりたい事は重々わかりますが、武器でも道具でも、それなりに話が進んで、本も売れていますので。」

瀬能「出オチじゃないんですか?私、出オチで考えていたんですけど。天才ですか?その人は?川端康成先生も驚きですよ?」

担当「私は先生の類まれなる才能を信じております。きっと日本中の本屋で暴動が起きる本を書いてくれると信じております。」

瀬能「おきないですよ、おきるのはアマゾンのセンターの中だけですよ?悲鳴をあげるアルバイトの声が聞こえますよ。」

担当「いや、先生、実物を売っている本屋さんにも景気がよくなるように、先生のお力で、なんとかしましょうよ。」

瀬能「あのねぇ、そういう事を言っていますが、だいたいのなろう系は、芥川先生や太宰先生が、既に書きつぶしているんですよ。凡人の作家に出て来る訳ないじゃないですか?」

担当「南総里見八犬伝を超えるヒロイックファンタジーもなかなか出てきませんもんね。」

瀬能「だいたいSFファンタジーの元祖、作者不明の竹取物語を超えられる作品がない現状ですよ?原点にして頂点!しかも短くて面白いって何ですか、アレは。世に出ているSFとファンタジーはすべて竹取物語のオマージュですよ?わりと、まじで。」

担当「先生、十返舎一九、滝沢馬琴を超えて下さい!」

瀬能「とりあえず、グインサーガを読めって話ですよ。指輪物語よりグインサーガですよ。」

担当「先生、あれ、字が小さくて読みにくいんですが。」

瀬能「・・・私も、巻数が多過ぎて追えていません。グインサーガの惜しむらくは未完な所ですよね。」

担当「世界だと、あらかたディズニーに持っていかれてしまって、弱小出版社は版権だけ持ち逃げされて、草も生えませんよ。」

瀬能「ううん。こうなったら転生しないっていうのはどうですか?『転生しませんでした』!」

担当「転生しない?」

瀬能「死んだまま。」

担当「面白いんですか?」

瀬能「面白い訳がないでしょう。」


※本作品は全編会話劇です。ご了承下さい。

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