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プロローグ

いつも通りの時間に起きて、いつも通り卵かけご飯を食べて、いつも通りの時間に家を出て会社に向かう。


しかし、いつもと違うのは社会人4年目最初の出勤日ということだ。

仕事にも馴れ、役職も主任になり、大人として少しばかり自信がついてきた。


いつもと同じ電車の同じ車両の同じ扉から電車に乗る。

話したことはないが、何回も見たことで覚えてしまったサラリーマンたちと同じ駅へ向かう。


電車を降りていつもと同じ道を歩いて会社に向かう。


主任になったことで今後は部下ができるんだな。次の昇進は何年後くらいだろう。彼女はいないけど結婚はしたいし何歳で結婚できるだろう。子供は何人欲しいかな。部長くらいにはなれるだろうか。年金はもらえるかな。まぁ普通に幸せに暮らせたら幸せだよな。


そんな現代日本の平和ボケ的思考をしていたから気付くのが遅れてしまったのだろう。


周囲の悲鳴や怒号が急にパソコンのボリュームを上げるように聞こえてきた。


助けて!逃げて!刺されてる!やめろ!誰か!そんな声が聞こえてきた。


一体何があったというんだ?


いつも通りではないシチュエーションに俺は困惑した。


とりあえず、後ろ方が騒がしいので振り返り状況を確認することにした。


そこには、刺した人の返り血で赤く染まり、目が血走り、包丁を片手に俺に向かって走ってきている60歳くらいの男がいた。


絶望を感じつつも頭に浮かんだ言葉は、「エンカウント」。


ここはゲームではない、現実の世界だ。

非現実的なことなど起きないと思っていた。

実際に国内で極悪な殺人事件や犯罪が数多く起こっているのに自分には関係ないと心のどこかで思っていた。


しかし、現実ではこのような怪物にエンカウントすることがある。


この殺人鬼との距離はおよそ1メートル。


本能的に胸を守るように左腕を胸の前に地面に水平になるように構え、右手を顔の正面に地面と垂直になるように構えた。


あっ刺された。と思うと次の瞬間感じたのは、首の左側から脳に向かって包丁が向かう感覚。


そして世界が止まったように感じた。


普通であれば、1秒もしないうちに包丁は脳に達し俺は死ぬのであろう。


しかし、死にたくないという気持ちがこのコンマ秒を極限にまで伸ばしたのか思考が加速する。


これが走馬灯というやつか。


記憶がないはずの赤ん坊の時の記憶から今日までの記憶が一瞬で再生された。

そして最後に記憶にないはずのこの世界に似た世界の映像が流れて走馬灯は終了した。


脳に包丁が達した感覚と同時に俺の視界はぐにゃりとなり、意識を失った。


どれほどの時間が経っただろうか。


目が覚めた。


思考がよく定まらないが、生きているらしい。

天井が見えている。

確か俺は包丁で刺されて死んだんだよな?

遠い昔のことなように感じるが。


なんだか身体が凝っているようだ。

伸びをしてみる。


「あーうーあーうー」


ん?変な声が出た。

こんな声だったか?


「起きたんでしゅか啓ちゃん」


急に女の声が聞こえた。


「あー!うーあーうー!」(わー!びっくりした!)


なんだこの巨人女は!デカすぎるだろ!

俺は自分の身体のサイズなら把握できる。


俺の身体はこの女の顔より少し大きいくらいだ。


なんてデカい女なんだ。

色々と。


「ごめんね!起こしちゃったのね!よしよし。いい子いい子。」


デカ女はそう言いながら俺を抱きかかえるとあやすように小刻みに上下に揺れる。


その居心地の良さに俺はまた意識を失った。

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