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1.「モブ」の記憶

「おいお前!邪魔だ!」

リヒトは太った商人に突き飛ばされ、頭を強打し…その瞬間、前世の記憶を思い出した。

(俺は…)


流れる血、悲鳴、銃の引き金を引く感触。

前世の様子がフラッシュバックし、悲鳴をあげたくなるのをなんとか堪える。


「おい!邪魔だっつってんだろクソガキ!」

商人の言葉で意識が現実に戻る。

「…すみません!いやぁ、前見てなくて、はは」

近くにいた中年女性が慌てて近寄ってくる。「おいあんた、だいぶ強く頭打ったけど、大丈夫かい!?」

「ええと…」

俺は「リヒト」の記憶を探り、この女性を探す。

「…えぇ、パン屋のおばさん。全然大丈夫ですよぉ」

ヘラヘラと微笑むと、おばさんは心配そうな顔をした。

「こう見えてもあんた女の子なんだから気をつけなさいよ」

俺は女だったのか。


「リヒト」現在12才。薄汚れ、とても女には見えないが、今回俺は女として生まれたようだ。貧しいスラム街に捨てられ、街の優しい大人達に育てられた。現在拾った宝石を売って生計を立てている。


なぜ前世の記憶が戻るという急な事態にこうも冷静でいられるのか。答えは簡単、慣れているからだ。


モブの仕事は、物語を円滑に進めること。俺は過去いくつもの世界に転生しては、こうやってモブとして生きてきた。


俺は前世では、人口の9割が死ぬ終末世界の子供…モブとして生きていた。簡単にいうと、◯イオハザード的な。あまり覚えていないが、確かその前の人生でもモブだった。

そう、つまり俺は根っからのモブ。その世界の主人公にはなれやしない。


しかし俺はそれを不満に思ったことはない。モブ上等じゃねぇか。前世では主人公の仲間だろうがヒロインだろうが、どれだけ強かろうが人目を引こうが、主要人物は感動の台詞と共に容赦なく死んでいった。


まるで筋書きで運命が決まっているかのように。


その点、モブは違う。街に隕石が落ちようが、汚染されてない場所が僅かになろうが、「その日…人類の9割が突如としてゾンビになった」なんてふざけたナレーションが流れようが、運と、自分の力で生き延びることができる。


俺はあのふざけた物語が、ハッピーエンドを迎えるまで生きた。主人公が、汚染された街を治す薬を発明し、世界が復興を始めるその時まで生き延びたんだ。

まあ、その後20才くらいで死んだので、長生きしたとは言えないが。


「モブで一番強い奴は、どんなものでも貫く矛を持ってるやつでも、どんな攻撃も防ぐ盾を持っているやつでもない。長く生き延びる奴だ。」


先輩のモブの言っていた言葉だ。そりゃそうだ。モブが「ふふ、これが最強のスキル…」なんて呟いても、噛ませ犬になる未来しか見えない。


俺はこの世界でも、モブとして生きぬいてみせる。


モブが死なないコツは…好感度を上げることだ。


悪口を言ったり、好感度が低い奴はすぐに主人公の噛ませになって死ぬ。愛想のいい顔を浮かべ、「よう、にいちゃん、頑張れよ!」なんて話しかけると良い。「いるとちょっと嬉しい」感じのモブになると死に辛くなる。まあ、それでも死ぬ時は死ぬが。


それに、主人公と同じ街にいると、大災害に巻き込まれてナレーションで死ぬ、なんてこともない。(ただし米花町は別だ。)


つまり、俺のやるべきことは、全力で主人公に媚びること。


何、あの世界で生き延びたんだ。今世はモブとして平和に生きられる!…はずだ。多分。


せっかく女に生まれたんだし、誰かと結婚してパン屋か花屋でも経営すれば、「主人公が行く店の店員」とかいう死ににくそうなモブになれるだろう。


ーーーちなみにこの後、俺はこの甘い考えを捨てることになる。


「手始めに【主人公】を探すか…」

リヒトは立ち上がった。

2024/09/26連載開始しました!

処女作なのでぜひ評価お願いします!



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3話まで一気に投稿します。

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[一言] 主人公を曇らせるために殺されることもある
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