うーちゃんにあーんしてもらう
うーちゃんが突然、足を止めた。
「どうしたの?」
「ここ…秘密にしてね」
うーちゃんが指をさした方向を見ると、地面を這うように何かの葉っぱが生い茂っていた。
そういえば、他の雑草みたいな草とは違って、茎も太く、葉っぱが大きくてハート型に似ている。うーちゃんはそこにしゃがみ込むと、手で直接地面を少し掘ると、その茎を握った。
「よいしょ」
力を入れて引っ張ると、ぼこぼこ…っと土が隆起し、何かが現れた。
「え…?これ、さつまいも!?」
「…好き?」
原始時代にもサツマイモがあったのか…と少し驚いたが、昨日から何も食べてないし、歩いてお腹もすいていたので、毎朝やる気がない時に食べていたような、もっとこう…菓子パンみたいなスーパーハイカロリーのものをブラックコーヒーと一緒に胃にぶっこみたいと思っていたところだったので、そんなものないと分かっていたのだが、少し拍子抜けしてしまった。
「食べる…?」
「う…うん。ありがとう」
とりあえず手渡されたさつまいもを受け取る。
うーちゃんがこちらをじっと見てきている。なんだ?何を求められているんだ俺は?えっ、食べろって事?掘り出しばかりの泥付きのサツマイモ、しかもサツマイモって普通ふかして食べるよね?生でも食べれるんだっけ…?しかし、うーちゃんはさらに俺の方をじっと見つめてくる。
「い…いただきます!」
ボリッ!ジャリジャリ!パサパサ~!
うぐぅ…っ!!サツマイモって生で食べるとこんな味なのか…っ!!!
まずいっ!!!甘いどころか苦い!!原始時代ってこんなものしか食べないのかっ!
うーちゃん!食べたぞ!と、うーちゃんの方を見ると
「そのまま食べるの?洗って焼くともっとおいしいよ?」
そうか…
そうだよな…
近くに川があるらしいので、そこまで連れて行ってもらう事にした。
口の中がまだジャリジャリとしている。うーちゃんは何か期待するような顔でまだ俺の顔を見ていた。お…俺はどうすれば…
するとうーちゃんはまた足を止めた。そしておもむろに上を向いたので、俺もつられて上を見ると「あ…」
木陰から光が差し込んで、木々の中に見えたのは黒くてまるまるした光沢の玉が、まとまって垂れ下がっているのが見えた。ぶどうだ。スーパーに並んでいるものよりはスカスカで小さく見えたが、どう見てもぶどうに近いものだ。
だがかなり高い位置に実っている。
するとにわかにうーちゃんはさくざくと草をかき分けて、その木の幹によじ登り始めた。あまりにするすると登るので、絶対に届かないと思っていた位置にあったぶどうが、すぐそこに感じるほどだった。木登りの得意なやつが登るみたいに、木の幹に手を掛けて「よいしょ」っと登る感じではなく、まるで猫がただ高いところに移動するみたいにスムーズだった。しかし、その動きに見とれていると、あまりにはしたなく大きく脚を開くので、てきぱきと動く脚の間の、そのまたおくの…
「うわっ!」
思わず下を向いて、漫画みたいに目をふさいでしまった。
うぐ…せっかく美少女が目の前で肌を露出させながら、さらにサービスしてくれているのだから素直に見ればいいものを…ドキドキと心臓が高鳴るをを感じているが、これは恋愛感情というよりはもっと低俗な…
「食べていいよ」
はっと目をあげると、すでに木から降りてきたうーちゃんがぶどうを手に、こちらに差し出してきていた。また、俺の方を見ている。しかし、俺はどうもさっきのサツマイモの事が思い浮かんでしまって「いただきます!ガブガブ!」という気持ちになれなかった。
フリーズしてしまっている俺に、うーちゃんは不思議そうな顔をしていたが、何かに気づいたように大きく口を開けてピンク色の舌をべぇっと出して、中を見せるようにしてきた。
別に何もしていないのだが、少しドキっとした。そういわれてみれば、こんなにまじまじと女の子の口の中を見る事なんてないし、ぬらぬらしてて、ひくひくと動いているのが分かった。するとうーちゃんは、ぶどうを一粒ちぎると舌の上に乗せてころころと転がした。ぶどうの表面に唾液がしたたって、日の光を反射してきらきらと輝いていた。そしてそのまま、うーちゃんは口を閉じるとむぐむぐとした後、それを飲み込んでまた口の中を見せてきた。
えっ?何?なにこれ?
少女の妙に色っぽい姿に見とれていたのに気づいたが、うーちゃんはまだぶどうを差し出したまま何かを求める顔をしている。
「きらい?」
「いや、ぶどうは好きだけど…」
と俺がしどろもどろしていると
「あー」
指で一粒のぶどうをちぎって、うーちゃんが口の前に差し出してきた。
「あーん?」
さらに顔を指を近づけてくる。
えっなにこれ?あーん!?あっ!口開けろってこと!?
と気づいた俺はうーちゃんの言う通りに口を開けると、ぶどうが放り込まれた。
口の中で咀嚼すると、少しすっぱいが、甘くて、俺の知っているぶどうの味がして、疲れた身体に果汁の酸味が染み渡った。
「お…おいしい!」
思わずそう口に出すと、さきほどまで不思議そうな顔をしていたうーちゃんの顔がぱぁっと晴れて「よかったぁ」と心底嬉しそうな顔になっていた。ぶどうはそのまま食べても大丈夫だ!というあまり前の事を思い出すと、また食べたくなってきた。
すると、もう一度うーちゃんが「あーん」とぶどうを差し出してきて、俺は冷静になって先ほどの行為を思い出すとすごい事をしてしまっていたのでは…!?と急に恥ずかしくなって「い…いいよ、自分で食べるから!」とぶどうを受け取って食べ始めた。「んぅー…ん…」
うーちゃんは嬉しいような、よくわからない声で返事した。
いやはや…こんないきなりしかも無料であーんしてもらってしまうとは…オプションだったら2000円くらいしそうだ…、とそんな事を思いながら空腹と恥ずかしさに任せてぶどうを食べたのだった。