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犯罪奴隷をジョブチェンジ。

目の前で行われた殺人。

けれどもおかしい。

ルシフェルは、あまり動揺していない自分に気付いた。


ここに来てようやくルシフェルは、己の精神面が既に変容していることを理解する。

ルシフェルの価値観は日本で育んだものだ。

しかし現在のルシフェルは、最早『白羽(しらは)明星(るしふぇる)』などではなく、心も身体も『熾天使長ルシフェル』なのである。


つまり人間ではなく天使だ。

日本の価値観に基づき殺人を(いと)いこそすれ、激しく忌避(きひ)するほどではない。



ルシフェルは残る二人の犯罪奴隷に歩み寄った。


「……ひ、ひぃ! お、俺が悪かった! 調子に乗って悪かった!」

「許してくれ! いや、許して下さい!」


奴隷たちは尻餅をついたまま後ずさる。

しかし直ぐに壁に背がついた。

これ以上は逃げられない。


ルシフェルは二人を眺めて思う。

この男たち、読み解いた記憶の中で人道に(もと)る行為を繰り返していた。

つまり極悪人だ。

奴隷落ちする前は盗賊で、殺人や攫った婦女子の強姦など日常茶飯事だった。

情状酌量の余地はない。

なら別に、好きに壊してしまって構わないだろう。


ルシフェルはまず二人の人格を破壊することにした。

具体的には彼らが積み重ねてきた『記憶』及び『知識』の全消去である。

タブレット端末を操作して実行する。


「――あが⁉︎」


奴隷たちがビクッとした。

そして騒ぐのをやめる。


これにて奴隷たちは精神的に死んだ。

極悪人はこの世から消え去ったのだ。


「……あー、あ、あぅ、……あーぉ……」


人格を破壊された犯罪奴隷たちは、呆けた顔で涎を垂らしながら赤子のように呻いている。

無垢に生まれ変わったのである。


次いでルシフェルは、奴隷たちに『洗脳』を施した。

洗脳内容は『信仰』。

対象はもちろんルシフェル自身で、効果時間は永続だ。


洗脳を実行すると、すっかり知性の抜け落ちた奴隷たちは、幸福そうに頬を緩めて「あー」だとか「うー」だとか言いながらひれ伏した。


これにて『信仰奴隷』の完成である。

極悪人だった二人は、犯罪奴隷から見事ジョブチェンジを果たしたのであった。



出来上がった信仰奴隷たちは、ずっとルシフェルを崇めている。

そのふわっとした信仰心に、ルシフェルはほんの僅か霊子力が回復するのを感じた。


しかしどうにも効率が悪い。

というのも信仰奴隷を作る過程で、いくつか神の権能から奇跡を起こした。

その為に少なからず霊子力を消費した。

その消費量と回復していく霊子力の釣り合いが取れないのである。


ただ短期的に釣り合いは取れていないが、先々まで考えるとそうとも言えない。

信仰奴隷たちは食事さえ与えておけばこの先ずっと死ぬまでルシフェルを信仰し続けることであろうし、ならいつかは消費量を回復量が上回る日もこよう。

つまりは信仰奴隷は長期運用案件なのである。


対して幼い奴隷兄妹はどうだ。

ルシフェルに救われた兄妹は、自発的にルシフェルを信仰し始めた。

崇め、敬い、また時に畏れる。

それは地に足のついた信仰だ。

ルシフェルは兄妹から得られた信仰心により、霊子力がぐんぐん回復していくのを感じる。


ルシフェルが必要としている霊子力があまりにも膨大過ぎるため、兄妹からの回復量は微々たるものではあるが、それでも信仰奴隷の何倍も効率が良い。


洗脳から得られる信仰心は、自発的な信仰心に質で劣るのだ。

ルシフェルはそのことをシェバトに伝えた。


「左様にございますか。では具申いたします。判明した事情を鑑みますと、人間をたくさんあつめて洗脳して一挙に信仰心を集めようという当初の計画は、見直さざるを得ないものと思われます」

「……だよねぇ。俺もそう思う」


ルシフェルはため息を付いた。

なるべく早くアイラリンドを起こす為にも、信仰心集めの効率は重視していきたい。

こうしてルシフェルたちの計画は、振り出しに戻った。

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