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妖界道四十九日過  作者: 早熟最中
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獄戸町2

「なるほど、もう一人の自分と出会ったと思えば獄戸町に来てたと」

「…今何て言ったの、獄戸町?」

「ここ、日本の妖途県災難市苦境区獄都町」

 スマホで漢字まで見せてくれた。

「………地名?」

「珍しい地名だろ?特にここは厄受け地だからな、名前にも厄がたっぷりだ。」

 あまり深く考えない方が良さそうだ。


 食事もそこそこに、昨日の経緯や自分の身の上について話しておくことにした。

「うーん、信用していい物か判断に困る話だなぁ、正直俺お前が記憶喪失になったとか実験のせいで一時的に正気失ってるとか思ってたんだよ」

「そもそも、こっちの清太郎って何の実験してたんだ?」

「俺も知らん、詳しくは後で話すから立会人になれって言われただけだったし」

「何の実験かすら知らせてなかったのか…」

 結局刑児も何かを知っているわけではなく、俺が元の世界に帰る方法は分からないままだ。昨夜の心細さが再び戻ってきた。

「ねぇ…刑児さん?貴方その話本当に信用するの?」

 横から凪子が話しかける。ずっと黙っていたが話はちゃんと聞いていたらしい。

「それがよ、俺の知ってる清太郎はよく突拍子もないことをしでかすヤツでな…よく俺やマンションの皆巻き込んで大事件起こすんだが…あんまり嘘は言わねぇんだ。」

 頭を抱え込んで刑児が言う。彼なりに悩んでいるようだ。

「まあ、ここまで聴いた話が全部だとしたら、災難だったな。まあ何かの縁だしばらくこっちで長谷川清太郎として生活してくれ。色々教えてやる」

 こちらとしても非常にありがたい話だ。

「それで、凪子って言ったっけ?そっちの話もしっかり聞いておきたいんだが。」

 刑児が凪子に向き直る。

「なんでったって獄戸町1の危険地帯のセイタの部屋にカチコミしにきたんだ?」

 そんなに危険なのかあの部屋。

「そいつ、清太郎…彼がこの町で起きてる失踪事件の犯人だっていう知らせを受け取ったの」

「知らせ?どこからだ?」

「わかんない…郵便受けに写真と手紙が入ってただけだったから。それで話だけ聞く予定で来たの」

「話聞くためだけに扉破壊するのかよ…」

 思わず口を出してしまった。しかしこちらの世界基準でも普通の行動ではないはずだ。

「急いでたのよ………その…うちのポストの中に、行方不明になった人の写真もあったんだけど…私の友達の写真があったの」

 刑児がため息をついた。

「なかなかややこしい話になってきたな」

 そのままポケットからスマホのような物を取り出す。

「とりあえず、連絡先交換しておく、これが番号だ。」

 どうやらスマホの形はい世界でも同じらしい、同じく凪子もスマホを取り出し連絡先を控えたようだ。

「コイツには敵が多い、そのうちのどれかだろうが…今は先にやらなきゃならんことがある」

 刑児が席を立つ、ここでの話はここまでということだろう。

「また連絡してくれ、今日以降ならいつでもいい。ドアは気にするな、前にドアどころかマンションの窓全部が吹っ飛んだ時がある」

 そのままか伝票を持ちカウンターの方まで進んでいく。

「あ、飯代は気にすんな、あと気を付けて帰れ、この辺物騒だからな」

 そんな風に会計を済ませる刑児を俺たち2人はぼんやりと眺めるしかなかった。

「………世話焼きなんだなあの人」

 それがこの世界に来てから数時間で得られた片桐刑児という男の印象だった。

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