獄戸町1
朝食に行くと言われ鍋猫飯店という店に案内された。
蜘蛛糸から解かれ不服そうな凪子も一緒だ。
「どうして、朝から中華なんです?」
「お前とはよく来てたんだぞ、あと敬語じゃなくていい」
「ねえ、私も一緒じゃなきゃダメなの?そいつから話聞くだけでいいんだけど」
「人ん家のドア壊すようなプッツン女をセイタと一緒にさせておけるかよ、それにこっちにも事情があるんだ大人しく着いてこい」
正直こちらとしてもありがたい話である。何せこの世界に来てからまだ24時間も経っていない程なのだ。
「いらっしゃいませー、あら刑児さんいらっしゃい、それに清太郎君じゃない!久しぶりね!元気してた?」
店に入ると虎の面を被った店員がやってきた。当たり前だが見覚えがない、というか面を被っていては顔がわからない。
「どなたですか?」
「何よーもう忘れちゃったのー?それともお面外さなきゃダメ?」
店員が面を取る。しかしそこに顔は無く、のっぺりとした皮膚の表面がこちらを向いているだけだった。
「のっぺらぼう…!」
「あー、すまんな能登さん。ちょっとこいつ記憶喪失になってんだ、元に戻ったらまた話してやってくれ。」
「記憶喪失?今度は何をしでかしたのよー?」
こっちの清太郎は何かをしでかすような男らしい。
「ほら座れよ2人とも」
勝手知ったる様子で刑児がボックス席に着く。
「ご注文はお決まりですかー?」
「モーニングセット、2人は?」
「同じのを」
「………杏仁豆腐」
「かしこまりましたー」
注文を受け、能登と呼ばれた店員が去る。客は俺たち3人しか居ない。
「とりあえず………何処から話す?」
最初に口を開いたのは刑児だった。