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妖界道四十九日過  作者: 早熟最中
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同居人たち

 掃除をしている最中、妙なものを見つけた。

 こんな汚い部屋には似つかわしくない2体の人形だ。

 部屋の隅。新聞紙やらビニール袋やらの柔らかいゴミの中に埋もれていた。趣味のものにしては扱いが雑だがそもそもが汚部屋なのだ、何が出てきてもおかしくない。

 引っ張り出してみるとそれなりに大い、90センチはあるだろう。顔にはお面をつけている。片方は蛙のお面、もう片方はウサギのお面だ。………どちらもリアル調の顔で若干不気味である。

 服装のイメージは古き良き大正時代だろうか、ゴミの山に居たにしてはビシッと決まった袴姿に作務衣姿だ。蛙の方は紺色の上着を、ウサギの方は赤色の作務衣を白い帯で締めている。

 何処に置くべきかしばらく悩んだ末、とりあえず先ほどまで自分が寝ていた椅子に座らせておくことにした。素材はシリコンか何かだろうか?若干の弾力があり、意外と重みがあった。

 しかし、こういったものを集める趣味がこちらの自分にはあるのだろうか。他にも探せば宝の山が出てくるかもしれない。掃除中の汚部屋とはいえ自由に使っていいと言われた他人の部屋を物色するのにはちょっとした楽しみがあった。

 部屋の一角、衣服類が積み重なっている場所を少し崩すと、瞬間目の前にバカでかい蜘蛛が飛び出してきた。

「うおっ!でっか!」

 手のひらほどのサイズはゆうにありそうな蜘蛛だ。昨夜をこの蜘蛛と同じ空間で過ごしていたと考えると少しぞっとした気分になる。

 蜘蛛はそのままカサコソと動き回りこちらの背面の壁の方へ駆ていった。

 暫く目で追っていると壁の中央あたりで方向転換し、頭を地面に向けたまま動かなくなった。これほど大きい蜘蛛を相手にしているともう潰すとか部屋から追い出すとかを考えず、ただただどこか見えないところに消えてほしい、そんな気分になる。

「………しばらくこの部屋で世話になるよ、よろしくな」

 恐怖心を取り払うために蜘蛛相手にフレンドリーに言葉でもかけてみる。

 これほどのサイズの蜘蛛となるとタカアシグモという奴だろうか

 少なくともこの部屋でゴキブリに悩まされることはないだろう。………隣人にするには多少見た目がグロテスクだが。


 床周りはかなり綺麗になり、散らばっていた袋紙屑ペットボトルなどのゴミは一通りまとめられた。

「次は服か…」

 あまり洗濯をしていないようでかなり埃っぽい、そもそも洗濯機は部屋内に無くコインロッカー等を使用しているのだろう。幸い下着類はビニール袋に詰められていたがこれを身に着ける気は一切なかった。

「とりあえずクローゼットにぶち込もう」

 そう思い部屋に備え付けられている物置の扉を開けると、そこには予想外の物が入っていた。

 鎧武者だ。それも端午の節句に飾られるような立派な物だ。それが割合広めのクローゼットの中央を占領して鎮座している。もっと他に入れておく物があっただろうに。

 鎧武者の方はよく見ると鎧だけを飾っているわけではない、学校の理科室にあるような骸骨の人体模型が鎧兜を着込んでいる。一見して気付かなかったのは骸骨が紫色で塗られていたからだ。

 少なくとも宗教上の理由や子供の日の為に置いてあるものではないだろう。どちらかといえば作ったプラモデルの出来が良かったからきれいに飾ってみただとか、ちょっとした中二心の発露だとかそういう意図を感じる。

「一体何考えてこんなスペースの使い方してるんだ…」

 これは今後撤去というかもうちょっと別の場所に置いた方が良いだろう。しかし前所有者の熱意的なものは感じられたので一応髑髏武者君に手を合わせてから左右に衣服の入ったビニール袋を置いた。

 さすがに疲れを感じ、窓を見ると夜はすっかり明けていた。

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