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妖界道四十九日過  作者: 早熟最中
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妖界1

 鬼だ

 目の前の大男を見た瞬間、自然とその感想が沸いた。身長は2メートルはあるだろうか、頭の角は額の左右から生えている。

「聞こえてるか?どうしたんだお前、何かおかしいぞ?」

 服装は…シャツにジャケット、ジーパン、スニーカーと至って普通な現代の若者の服装であるが、普通でないのはその鈍色の輝く2本の角だ。

「セイタさん?聞こえますか?」

 そもそもどうやって生えているんだその角は、頭蓋骨からか?筋組織か?表面はどうなってるんだ?

「おいコラ返事をしろ、実験とやらで魂でも抜かれたのか?」

「うわっ!」

 気付けばすぐ目の前に鬼が迫っていた。身長の高さもあってか威圧感と若干の恐怖を感じる。

 ようやく声が出てきた。

「あ…アンタ誰?」

「どういうことだ?記憶喪失にでもなったのか?」

「…そもそも…ここは何処なんですか?」

 目の前の鬼はこちらを見つめて絶句している。

 校庭の庭の木々からはセミの喧しい鳴き声が聞こえていた。



「それじゃつまり、記憶喪失じゃなくて、君も清太郎で、どっか別の場所からここに飛んできて、鬼を見たことがなくて、時間が朝かと思ったら昼になってて、極めつけにここに来る前に自分にそっくりな男を見た、それで全部、オーケー?」

「おおむね全部…です」

 しばらくお互いに思考停止していたが、どうにか落ち着き今は学校の校舎側の日陰で鬼と会話をしている。どうやらここは廃校らしく校舎で授業中の教師に不審者として通報される心配も無いようだ。

 真横では例の男が頭の角を弄りながら落ち着かなさそうに頭を左右に振っている。考え込む時の癖だろうか?

 そもそも鬼というのはおとぎ話の存在だろう、この目の前に居る自称『鬼という民族』は民俗学的には非常に興味深い存在だがまだ脳はこの非現実性を受け入れる準備ができていない。


「…とりあえず、帰るぞセイタ。」

 帰る…?ここに自分の帰る場所はあるのだろうか。

「どこへ…?」

「俺たちのアパート…氷室荘ってとこだ、俺はまだお前がいつものようにからかってるのか記憶喪失なのか、別の人間がとりついたのか、判断がつかん。こういう時はいったん家に帰って落ち着くもんだ」

 それもそうだ周りにだれもおらず、自分がどこにいるかすらわからない今はこの男に付いていくしかなさそうだ。

 そういえば、彼の名前を聞いていなかった。

「あ…あの?」

「なんだ?」

「貴方の名前は?」

 彼は再び驚いたような顔をした後、言った。

「片桐刑児……本当に、記憶喪失じゃないんだよな?」

 その質問には、ただ首を縦に振るしか出来なかった。


「それじゃあ、俺は行くぞ」

片桐が腰を上げ、歩き始めた。

ここで、ほんの少し躊躇いがあった。

この廃校舎の近くに居れば元の世界に戻れるかもと言う淡い希望もあった。

待ってさえいれば、この場所は空想か何かである時に目が覚め、元の生活に戻れると言う希望が。

夕日が顔を照りつけてくる。話しているうちに時は夕暮れになっていた。

(このままここで待ってても仕方ないか)

少し考えたが、俺は片桐刑児に…この世界の事をよく知っているであろう鬼について行くことにした。



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