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無双の旅人  作者: 時雨ルナ
第一章 少年時代
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ep2.王国騎士団副団長との出会い

飛行(フライ)”を行使しながら移動を続けて二日。もちろん、不眠不休で飛び続けていたわけではなく、しっかり野宿をしたりして休息はとっていた。その間、20mくらいの赤いドラゴンが襲って来たりしていたが、ヒイロの敵ではなかった。むしろ、ごちそうとして食べていたくらいだ。鱗などは素材として優秀なので”アイテムボックス”の魔法でしまっておいた。


「やっと森を抜けられた...。たいして魔力を消費したわけじゃないけど、代わり映えのない景色の中をずっと飛ぶのも精神的に来るなぁ」


ヒイロが目指しているのは、ジャンプをして見つけた場所だった。


「改めてみると、大きいなあ。この壁とか何mあるんだろう?それに、中にすごく大きい建物もあったし...。とりあえず、壁の内側に行かないといけないよなぁ。壁沿いに歩いてみるか」


そうして、歩いていると前方に人の並んでいる列を見つけた。おそらくあそこから入るのだろう。そう思い、列に並ぶことにした。


しばらく待っていると、ヒイロの番になった。


「はい!次のお方ぁ...って子ども?君、お母さんかお父さんはどうしたの?」

「えっと、一人です...」


親がいないとだめなのだろうか。


「お、親がいないとだめなんでしょうか...?」


実は、この門番をしているお兄さんが、ヒイロが外に出てから初めて会話する人なのだ。そういう事情もあり、ヒイロは珍しく緊張していた。


「いやいや、親がいなくても大丈夫なんだけど、君みたいな年齢の子が一人で来ることが珍しくてね。それじゃ、身分を証明できるものとかないかな?無かったら銀貨一枚で通ることもできるけど」

「え、あ、ど、どっちもありません...」


そりゃそうだ。お金なんて預かってないし、そもそも家以外の場所に行くのも初めてなのだ。


「ん~、どうしようか。お金も身分証もないとなると...。ちょっと待っててね!」


そういうと、門番のお兄さんが門の横に構えてある建物に駆け込んでいった。2分ほど待っていると、お兄さんがガタイのいい30代の男性を連れてきた。


「お金も身分証もない子どもが来たといわれたが、君で間違いないか?」

「えっと...はい」

「私はエリン王国騎士団の副団長を務めているアルバン・エインスという。君の名前は?」


偉い身分の人だとは思っていたが、まさかの副団長だった。


「ヒイロです」

「ヒイロ君か。いい名前だね。今から君に少し質問するけどいいかな?」

「あ、はい。大丈夫です。」

「ありがとう。では、一つ目。ここには何をしに来たんだ?」

「冒険者養成学校に行こうと思いまして、親から離れてここまで来ました。」

「冒険者か...。2つ目の質問だ。すまないが、年齢を聞いてもいいか?」

「7歳です」


副団長は僕の年齢を聞くと驚いていたようだが、さすが上に立つ人間というべきか、すぐに表情戻した。


「なるほど。冒険者志望で7歳にして一人旅...。となると、ある程度は戦えると思うんだが、ゴブリンやスライムでもいいから、素材を持っていないか?」

「ゴブリンではないですけど素材になりそうなものなら持ってますね」


(レッドドラゴンも素材になるのかな?ゴブリンとスライム...だっけ?その魔物ってこいつより強いのかなぁ)


森の中で過ごしていたヒイロにとって、日常的に戦っていたのはワイバーンやドラゴンなどだった。そんな魔境のような森にゴブリンのような低級の魔物がいるはずもない。


「ここだと狭くて取り出せないので、どこか広いところありませんか?」

「...?あ、あぁ。では、この詰所の裏に行こうか。というわけで、この子は私が見とくからお前は仕事に戻ってくれ」

「はっ!」


そう返事をして門番のお兄さんは仕事に戻っていった。見送った後、アルバンさんの後について詰所の裏に向かった。


「ここならどうだ?」

「はい、大丈夫そうです!では、取り出しますので少し下がっていてください」

「あぁ」


アルバンさんが下がったのを確認して、僕は魔法を発動した。


「アイテムボックス!」

「ほう?その歳でアイテムボックスが使えるのか。魔法の中でも習得が難しい上級魔法だというのに...って、は...?」


アイテムボックスに入っていたレッドドラゴンを出し終えて、アルバンさんに話しかけようと振り返ってみると固まっていた。


「あ、あの、アルバンさん?どうしたんですか?」


アルバンさんは少しの間固まっていたが、急に僕のほうに詰め寄ってきた。


「こいつ!このレッドドラゴン!ヒイロ君がた、倒したのか?!」

「は、はい。道中襲ってきたので。お肉もおいしいですし、ほかに有効活用できるものがないかと思って持ってきたんですよ」

「討伐ランクSS級の魔物だぞ!?本当に一人で倒したのか?」

「一人ですよ。機会があれば見せましょうか?」


アルバンは迷っていた。普通に考えればこのクラスの魔物を一人で倒すのは不可能だ。成人もしていないような子どもが単独で討伐などもってのほか。だが、アルバンは目の前の少年が嘘をついているようにはどうしても見えなかった。


「少しここで待っていてくれ」


それだけ言い残してアルバンさんは詰所に入っていった。しばらくして、拳大の水晶のようなものを持ってきた。


「アルバンさん、それは?」


僕の問いにアルバンさんが答えてくれる。


「これか?まあ、簡単に言えば嘘発見器みたいなものだな。ヒイロ君の言葉を疑ってるわけではないんだが一応、ね。これに触ったまま、さっきと同じ質問に答えてくれればいい」

「わかりました」


僕は水晶に触りながら、先ほどの質問に同じように答えた。


「反応はなしか。これでヒイロ君が嘘をついてないってことが証明された。てことは、このレッドドラゴンは本当に一人で...」

「あの、アルバンさん。これ、お金になりますか?」

「お金になるもなにも、このレッドドラゴンを売ったら国家予算並みの金額がもらえるぞ?!」

「なっ!国家予算?!」


まさか、そんな金額をもらえるとは思わなかった。でも、これでやっと門を通ることができる。


「レッドドラゴンを引き取ってもらって構わないので、中に入れてもらっても大丈夫ですか?」

「あぁ、問題ない。売却額については追って連絡するから自由に王都を観光していてくれ」


そういって、アルバンさんは大通りに向かって走っていてしまった。それより、さっきアルバンさんは何て言った?王都って言ってなかった?


「王都に向かうついでに寄ったところが、まさか目的地だったとは。今更ながら、王国騎士団副団長ともあろうお方が辺境で仕事してるのもおかしな話だもんね」


自分の馬鹿さ加減に苦笑しつつ、ヒイロは王都エイハの門を通るのだった。

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