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Aー131 ホウレンソウはしっかりしましょう




 家を購入し、一通り家の中を見て回ったのだけど、特にこれといって面白みのある物はなかった。どれも家具や設置された魔道具も、どれもリンデールで手に入りそうなものばかりだったし、特別豪華ということもない。


 現状誰も住んでいないために生活感はないが、ごく普通の一軒家だった。とはいっても、個室は五つあったし、リビングは広いし、食材はなかったけれど紅茶用の茶葉らしきものは置いてあった。この場所を充実させたければ荷物をしっかり持ち込む必要があるだろう。


 まぁ、住むというよりも休憩所として使うのに適しているって感じなんだろうな。

 まぁ、問題はそんなことより、


「これは大事件だよなぁ……」


「コインを集めたい気持ちはあるっスけど、こっちが先っスかね」


「どうやって確認するのかにもよるけどね」


 女子二人と一緒に腕組みをしながら、家の外に立って玄関扉の横に書いてある文字を見る。入る時は内部が気になり過ぎて目を向けていなかったが、ちょうど目線の高さに銀色の横に長いプレートのようなものが張り付けてあったのだ。


 そこには『4―D』というこの家の場所を示す表記に加えて、その上にもう一つ重要な文言が書かれていたのである。


『リンデール地区』


「ダンジョン内で国の行き来ができるとしたら、それはまた面白そうだなぁ」


「国境もクソも無いっスけどね」


 たしかに、ちょっとお偉いさんにとっては面倒な仕事かもしれない。まぁ、俺はこういう仕事は全部レグルスさんにぶん投げるんですけどね! だって俺にできることって何もないもん!



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 というわけで、俺たちは家の中で少しだけくつろいだのち、レグルスさんに報告に行った。

 あのダンジョンの中が他のダンジョンと繋がっているかどうかは定かではないけれど、こういう時は『報告・連絡・相談』が大事だって俺は知ってるんだ。


 まぁ、すぐにでも結果がわかりそうだったら突っ走っていたけども。


 だって一番近いパルムール王国ですら、前回行ったときは五日かかった記憶があるんだぞ? 街に立ち寄ったりしながらだったし、馬車での移動だったからのんびりだったが、少なくとも一泊はする必要があると思う。往復することを考えると、あとからグチグチ言われないために、そしてうっかり他国の出入り口から出てしまった時に『俺、ちゃんとレグルスさんに報告しましたからね』と大義名分を叩きつけたいのだ。


「……パルムールでもネスカがダンジョンに入れることを確認したらしいが、こちらからもまだ『死んでも生き返る』という情報は流していなかったからな。万が一があっては困る」


「まぁそりゃそうですよね」


 凶悪なダンジョンであるという情報は与えたとしても、死んでも生き返るという情報の取り扱いは難しいだろう。もし死ぬことを前提に探索して生き返らなかったら、完全にこちらの責任になってしまうし。


 しかしネスカさんか……懐かしいな。


 シンたち迅雷の軌跡が国際武闘大会に出場した際、俺を褒めてくれていたという『紅の剣』というパーティのリーダーを務めている女性探索者。


 彼女と、それからパルムール王国の王子であるニーズ君を連れてパルムールのSランクダンジョンをクリアしたから、たぶんあの国ではあの二人以外にはダンジョンに入ることのできる人はいないだろう。


「ネスカって誰っスか?」


「パルムール王国の代表パーティのリーダーだよ」


 そう言えばクレセントたちに会う前だったな、俺たちがパルムールに足を運んだのは。


「SRさんのことだから、ボコボコにしたんスよね?」


「なんで俺ってそんなに戦闘狂みたいなイメージなの?」


「したんですか?」


「……いやまぁ、模擬戦みたいなことはしたけど」


 なんとなく二人の予想通りなのが気恥ずかしくてモゴモゴしながら答えると、レグルスさんが鼻で笑ってから口を開く。


「向こうのギルマスから聞いた話によると、五対一で模擬戦をして完封したらしいぞ。幸い、相手の心は折れなかったようだがな」


 余計な情報を漏らさないでください。

 あと言い訳させてもらえるのなら、俺は対人戦だと一対一より多対一のほうが慣れてるんですよ。それも、五対一という形式は俺がテンペストでよく戦っていた形だから、本領を発揮しやすいし。


「私もネスカさんのパーティと戦ってみるっスかね~」


「あのな……彼女たちは俺が行ったときにAランクダンジョンすらまだ未クリアだったんだぞ? やめとけやめとけ」


「でもSRさんはネスカさんたちとヤッたんですよね?」


「……ちょっと別の言い方にしてくれない?」


 クレセントはともかく、翡翠は純情そうだからやめてほしい。

 俺の言葉を聞いて、翡翠は恥ずかしそうに顔を赤くしながら「すみません」と謝ってきた。


「姫ちゃん、謝ることはないっスよ。今のは完全にSRさんがそっち系を意識しすぎって感じっスから。まったく男子はこれだから……すーぐエッチな方向に持って行こうとするんっスよね~」


「翡翠に指摘されるなら甘んじて受け入れるが、クレセントにそう言われるのは癪だな」


「なんでっスか!? どう見ても私だってピュアッピュアな美少女っスよね!?」


「どう思う翡翠?」


「んー、ミカの意見に合わせるのは不本意ですけど、意外とピュアなんですよ彼女。処女らしいですし」


「姫ちゃぁあああああん!? な、なにを!?」


「お前ら、もうダンジョン行っていいから俺の執務室でそんな話をしないでくれ……」


 ごめんねレグルスさん。でも今回、俺って悪くないよね?





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クレセントかわよ
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