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【コミカライズ】俺、勇者じゃないですから。~VR世界の頂点に君臨せし男。転生し、レベル1の無職からリスタートする~  作者: 心音ゆるり
アフターストーリー

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Aー127 洞窟にて




 ダンジョンという名の新たな世界で発見した洞窟という名のダンジョンっぽい場所。

 うん、自分で言っていてもよくわからないな。ともかく、イデア様が新たに作ったダンジョンにて、俺たちは洞窟を発見したわけだ。


 薄暗く、声が反響しており、静かにするとわずかに奥の暗がりから足音らしきものも聞こえてくる。人がいるということは考えづらいから、十中八九魔物が生息しているのだろう。


 現在翡翠が明かり役を担ってくれているけれど、次からはオイルランプのようなものを持ってきたほうが良いかもしれない。ランプなら地面に置いて戦闘ができるけれども、魔法の待機状態で視界を確保するとなると、どうしても行動が制限されてしまうし。


 まぁでも、それぐらいで引き返そうとは思わないんですけどね。


「明かりがない以外は、どこかにありそうなダンジョンだよな」


「そうっスね~。お、あれが第一魔物じゃないですか? こういうとき気配察知は楽っすね~」


「そんな第一村人みたいに……ゴブリンかな?」


「ゴブリンだな……かっこいい武器もってんな」


 洞窟をテクテクと進んでいると、前方に子供らしき人影が三つ見えたのだが、それはどうやらゴブリンだったらしい。気配察知で魔物がいることはわかっていたが、思ったよりも拍子抜けする魔物だった。背丈は百ニ十センチほどか――他の低ランクのダンジョンでも出現する魔物だが、三匹とも大きな西洋剣と、丸い金属製の盾を装備している。


 いったいどこからそんな武器を調達してきたんだろうと考えるのは野暮なことなんだろう。


「ゴブリンならゴブリンらしくこん棒とか持っていてほしいっスね」


 やれやれと言った様子で肩を竦めながらクレセントが言う。ゴブリンたちは俺たちが人影を認識するよりも先にこちらに気付いていたらしく、しっかりと構えを取った状態で現れた。


「バレバレっスね」


「こっちは明かりをつけてるからね。向こうが気付きやすいのは仕方がないよ。スキルがある分、こっちが有利なのはそうなんだけどね」


 翡翠は左手に明かりを灯しながらも、右手には白蓮を握っている。俺も彼女と同様にインベントリから白蓮を取り出した。


「三匹だし、一人一体にするか? 通常のゴブリンじゃなさそうだし、少しは歯ごたえあるだろ」


「えー、私が三匹やりたかったっスー」


「わがまま言わないよ。私もSRさんも我慢してるんだから」


 みんな戦いたがり過ぎだろう。俺が言えたことじゃないけど。

 俺は翡翠と同じように左手に明かりを灯して、二メートルぐらいの小川を飛び越えて反対側へ移動。ゴブリンのうちの一匹が、俺の行動に合わせるようにこちら側へ飛んできた。


 その軽々とした身のこなしで、やはり通常のゴブリンと違うことがわかる。


「じゃあそっちはよろしくな~。ピンチになったら助けてやるから呼ぶんだぞ~」


 からかうようにそう言うと、二人は揃って『SRさんも危なくなったら叫んでくださいね(っス)』と言い返してきた。魔物を前にしながら随分と余裕である。


 だが、その余裕はすぐに消え去った。

 魔物との距離は十五メートルほど――その距離を、ゴブリンは一瞬にして詰めてきた。


「――はっや!? 速いぞこいつ!」


 上段からの振り下ろしを白蓮で受け止め、力で押し返して距離を取る。


 もしかしたら、いままで見た魔物で一番動きが早いかもしれない。そりゃベノムの目からビームみたいな技と比べたら遅いけれど、肉体的な動きではトップクラスであることはたしかだ。力もなかなかのものだし、ステータスボーナスをしっかり獲得していない状態だと、セラたちには荷が重そうな敵だ。


 ゴブリンキングでもゴブリンロードでもないただのゴブリンが、ここまで強いとは思わなかったからかなりびっくりだ。


「お、お、お? もしかしたら三体相手にして片手は危なかったかも? 負けることはないけど、不意打ちとかされたら怖いね」


「それにしっかり剣術っぽいもの使ってるっスね~。騎士っぽい感じ?」


 目の前のゴブリンを視界に入れて警戒しつつ、翡翠たちがいる方向へ目を向けると、二人とも戦闘を開始していた。俺と同じく多少驚いたようではあるが、表情はリラックスしている。


 俺も何度かゴブリンと攻防を繰り返したあとは、こいつがどれだけやれるのか確かめるような段階に入った。重い一撃を放ったかと思えば、数で勝負してくることもあるし、盾に身を隠して次の行動を予測させないような仕草をとることもあった。


 まぁそれでも、所詮は魔物である。テンペストランカーを相手にしている時と比べると、お遊戯といって差し支えないレベルだ。


 十体一気に押し寄せてきたら、一撃ぐらいかすってしまうかもしれないぐらいのものである。

 ゴブリンとの戦闘を楽しんでから、俺は首を跳ねた。そして、いまだ戦闘中のクレセントたちの方へ目を向ける。


「あっ、やば!」


 クレセントがゴブリンの攻撃を受けてしまっていた。

 どうやら盾を投げつけられたらしく、その予期せぬ行動に判断を誤り、隙を突かれて腕を切られていた。とはいえ、さすがはトップに君臨していたチームのリーダー、そしてプロのゲーマーと言うべきか。


「うわ! ミカだっさい! ボクと違って両手が使えるのにゴブリンから攻撃食らってる!」


「違いますー! 服をかすっただけですー! 身体にダメージ貰ってませーん!」


「子供っぽい言い方だなぁ」


 それはお互い様だと思うぞ? 翡翠も十分子供っぽい言い方だったし。


「もういいっス! とっとと倒すっス!」


 拗ねたような言い方でそう言ったクレセントは、ゴブリンの体を切り刻む。翡翠もほぼ同じタイミングでゴブリンの討伐を完了していた。驚きはしたけれど、終わってみればみんなノーダメージクリアである。クレセントの服が軽く切られた程度だった。


 なかなか面白い敵だったし、もしかしたらこの洞窟に出てくる魔物は期待していいのかもしれないな。

 なにしろ、一番手前で出てきたゴブリンでさえこれなのだ。ここからさらに強い敵が現れてくれることは、必然と言ってもいいだろう。







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