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Aー116 いざ新世界




「やっぱりすごいねイデア様は――たぶん、疑似的にもう一つ世界を創ったようなものだと思うよ」


 あたりを見渡して、ノアが言う。本当にその通りなんだろうな。


 いったいこの世界はどれほどの広さがあるのか、世界の端はどのようになっているのか、魔物はどんな種類がいるのか……気になることが多すぎる。


 なんだかステータスやシステムを、別のゲームにそのまま移植したような感じがする。なんだそれ最高かよ。


「SRさん、私はもううずうずが抑えられねぇッス。もう行っていいっスか?」


「ダメに決まってるでしょ。外でみんなが待ってるんだから――それにボクだって早くこの世界を見て回りたいのも一緒だし……SRさんだって死ぬほど我慢してるんだから」


 前のめりになっているクレセントに対し、ヒスイが呆れたように言う。そして俺をちらっと見てから苦笑していた。


 俺もクレセント同じく、少しずつ少しずつ石畳の外側へと足を進めていってしまっていたからだ。本当に無意識の行動だった。だって早く新しい魔物が見たいんだもの。


「そうだぞクレセント――ひとりだけ抜け駆けは許さん」


「ふ、二人で抜け駆けはどうっスか?」


 なんて甘い言葉をかけて来るんだこいつは……! 悪魔か!

 なんとか歯を食いしばって誘惑に打ち勝ってから、少し冷静になる。


 オープンワールドってことはつまり、ダンジョン特有の五人制限がなくなってみんな一緒に入れるようになるのではないか? とりあえず、この石畳周辺に魔物は出現していないようだし、ダンジョンの外で待っている彼女たちを呼んでもいいだろう。


「ノア、試しに一人で緊急帰還できるか試してみてくれるか?」


 もしかしたら一人だけ離脱できるかもしれない。ダンジョンでは、一人が緊急帰還を選択すると、その影響はパーティ全体に及んでいた。しかしこの世界の仕様的に、もしかしたら単独での帰還が可能になっている可能性がある。


「一秒でもこの景色を眺めていたいって顔だねぇ。お兄ちゃんらしくて良いと思うよ」


 ノアは笑ってから、ウィンドウを操作。すると俺の想定通り、彼女だけがこの場からいなくなった。


「おぉ……マジでノアだけいけたぞ」


 これでかなり自由度は上がった。しかし戦闘中に、他のメンバーがウィンドウを操作して助けるということはできなくなったけれど、そもそも死がないこの世界ではあまり必要のないことなのかもしれない。せいぜい、デスペナルティを食らうぐらいだからな。


「可能性が広がりますね。本当に、どんな魔物が出て来るのか楽しみです」


「張り合いのある敵がいるといいっスねぇ」


 俺も人のことは言えないが、この二人も大概戦闘狂だよなぁ。


「あのね、俺も二人と同じ気持ちだけど、俺たちが『張り合いあるレベル』ってなると、それこそベノムレベルだぞ? そんな魔物がわんさかいたらセラたちじゃまだ難しいだろ」


「あー……それはたしかに」


「でも、魔物の種類も結構いたりするかもしれませんし、セラさんやフェノンさん、シリーさんたちでも相手ができる魔物もいるんじゃないですかね?」


 なるほどなぁ。


 この広々とした世界ならではということで、エリアによってある程度強さが決められている可能性もあるな。ボス的な魔物も、その辺をうろちょろしていたりするのだろうか。


 徘徊型ってやつだな。テンペストには無かった仕様だ。


 と、そんな風に地球出身者たちで盛り上がっていると、俺以外のASRのメンバーもやってきた。ノアが全員を連れてきてくれたらしい。


 三人は俺たちを見るよりも先に、外の景色に目を向けている。


「ここは……本当にダンジョンの中なんでしょうか?」


「ねぇセラ、なんだか別の土地に来たような感覚ね」


「うむ。はたして私たちの力がどこまで通用するか……」


 三人とも、会話はしているのだけど、きょろきょろとせわしなくあたりを見渡している。まぁ、別にここじゃなくても、初めてのダンジョンではだいたいこうなるよな。


「いらっしゃいみんな――さっき遠くで二種類の魔物は確認できたから、おそらくいろいろな魔物がいるダンジョンなんだと思う。あと、『〇〇を倒せばダンジョンクリア』っていう形じゃないと思うんだ。本当に、戦闘技術の向上とレベル上げを目的としたダンジョンって感じかな」


 あくまで予想だけど――という言葉を付け加えると、クレセントとヒスイも俺の言葉に同意した。二人もそう思うよねぇ。だってアイテム系は落ちないって言ってたし。


「上限はもちろん気になるけど、セラさんたちのこともあるし、下限も気になるっスね。あ、魔物の強さの話っス」


「たしかに」


 できれば手ごろな魔物が近くにいてくれたらいいのだけど――この石畳の周囲には魔物が寄り付けないようになっているのか、姿は見えない。


「とりあえず、ちょっと歩いてみようか」


 ダメージを受けたときの感覚も知っておきたい。死なない仕様だし血とかは吹き出ないのだろうけど、さすがにゲームと同じような痛みのレベルではないだろう。


 この世界でそんなことやっていたら、実戦での判断が鈍ってしまう。

 まぁさすがに、死なないとはいえその辺りはしっかり設計してくれているだろう。俺みたいな浅い考えでなく、しっかりと。


「じゃあSRさん、誰が一番に戦うかじゃんけんで決めるっスよ!」


「オーケー、望むところだ……!」


「僕が勝ったらSRさんに譲ります。だけど、ミカに先を越されるのは癪なので参加しますね」


 で、勝負した結果――翡翠の一人勝ちである。


 物欲センサーみたいなものが働いてしまったのだろうか……さすがに他人の勝利をほいほい譲ってもらうのは気が引けたので、翡翠が一番やりを務めることに。


 ちなみに、クレセントにも負けた。悲しい。俺のセンサーくん、強すぎたのかもしれない。





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